第3話 見透かす女性
ーー冷たい。
男は、空を見上げながら雨に打たれていた。
これは、刺された後の現実の続きなのか、夢の後の続きなのかわからず混乱していた。
ーーどうなってるんだ。
「あの、大丈夫ですか?」
「ん?」
声の方へ振り向くと短いスカートを下着が見えないように手で押さえ、傘を差したショートカットの女性がいた。
髪型のせいか少し幼くも見える。
「あ、大丈夫ですよ!!なんか、疲れちゃって」
男は慌てて起き上がった。
それもそのはず、このままでは通報されると思ったからだ。
正義の元で働いてきたこともあり、通報されることに異常に警戒していた。
「むむ……怪しい」
女性は、顎に手を当て探偵のように頭を横に捻りながら考え出した。
目を細め、口を少し前に出している姿は男ならドキッと胸が高鳴るであろう。
そして、彼女は数秒考えると答えを出した。
「わかった……わかったわよ!あれね!死んで生まれ変わったらここにいました!が、よくわからないので通報される前に逃げよう!これでしょ!」
「ぶはっ!?いや、何言ってるの!?」
彼女の推理は的確だったが、本人がいまいち理解していない為、側から見たらどこも怪しいそぶりは見えなかったのだが。
「ちっちっちっ。私にかかれば、どんな難題もキャンディのように溶けるのよ!!それで、名前はなんて言うの?」
「えっと……天野 達也です!」
男は怪しまれないように、どこにでもあるような名前を言い誤魔化した。
が、この女性はまた何かを考え始めた。
「天野……雨の……怪しい……」
女性はまた、顎に手を当て男……いや、達也を凝視していた。
「な、何を言ってるんですか。僕急いでいるので、もう行きますね」
「雨降ってるのに空見上げていた人が急いでいたね……やっぱり怪しい!!こうなったら」
「あ、つう……」
男はあせり、通報だけはしないでくださいと言おうとする前に女性はとんでもないことを言った。
「私の家に来なさい!!!」
「ぶは!?な、何言ってるんですか!?!?」
「いやなら、通報するわよ」
女性は、目を細くし達也を脅すように見ていた。
達也も通報されることは避けたいのと、この女性に何を言っても勝てないと思いついて行く事にした。
「さぁ、入って入って!!」
「お、お邪魔します」
ーーやばいよ、女性の家に入っちゃたよ。は、初めてだからドキドキする。いいのか、復讐の為に生まれ変わったはずだろ。こんなに呑気でもいいのか!?
男の心は、いろんな気持ちが混ざり合っていたが、女性の一言で気持ちを切り替えた。
「はい、服脱いで。風邪ひくよ」
女性は、自分のであろうジャージを渡してきた。
ジャージからは、彼女の匂いを凝縮した濃い匂いがした。
その匂いは、触った後の手にもしっかり残っているほど強かった。
「あ、ありがとうございます。あの、見られていると脱ぎにくいんですが……」
「あ!ご、ごめんね!あ、そうだ、どうせならお風呂にも入っちゃいなよ」
「え、いやそんな」
「いいから、いいから」
女性は、達也の身体を押しながら脱衣所まで案内をした。
「タオルはここだから。それじゃあね!」
女性は戸を閉めると、スキップしているかのような軽快なリズムでどこかへ行った。
ーー女性ってみんなあんな感じなのか?
初めての経験に混乱していたが、鏡を見て納得した。
ーーめさ、めさ、イケメンだ。なにこれ、イケメンすぎるだろ。いや、イケメンとは言っても流石にモデルや俳優程ではない。が、イケメンだ。しかも若い……高校生ぐらいに見える。
そう、達也の顔は謎の声のサービスでイケメンになっていた。
元々は27歳で、見ためにたいした特徴もなく、女性との経験なしの男だったが、謎の声のサービスは人生を楽しめた言わんばかりに手厚いものであった。
ーーそれであの女性は家に入れたのか。いや、見た目じゃないな。彼女が照れている様子とかもなかったから、若かったから心配になったんだろうな……いかん、何を期待しているんだ。ダメだぞ俺!正義のもとで働いてたじゃないか!!
達也は、溢れ出る欲を必死に抑えながらお風呂へ入った。
が、欲は抑えることができず元気な反応していた。
ーーくそ……若いってすばらしいな……
達也は、シャワーを滝行をしているかのように浴び、静かに心と欲望の塊を鎮めた。
「……ふぅ。よし」
落ち着いたのを確認し身体を拭き服に着替えた。
達也はドライアーの音に集中しながら、また欲望の塊を鎮めた。
ーーよし。これで外に出れる。
達也は、ゆっくりと脱衣所から出ると女性はピンクの下着を顕にして着替えの途中だった。
「ちょ!君!タイミングが悪すぎるよ!!ちょっと待ってて!!」
女性は、顔を赤くしながら扉を強く閉めた。
「……」
ーーラッキー。
達也は、警察官だったと言うことを記憶から消し、法に触れない程度で人生を楽しむことにした。
ーーもちろん、復讐は忘れない。ただ、それだけじゃ虚しさしか残らない。人生をやり直したんだ、楽しいこともしないと復讐も適当になってしまう!!
っと、自分の行いを正当化した。
「もう、入ってもいいよ」
「あ、はい!」
強くなり続ける鼓動、震える手先を抑えながら扉を開くと女性はパジャマ姿で待っていた。
だが、そのパジャマにはアダルトゲームと思われる、全裸で足を開き、隠しているはずの部分から何かが流れ出している女性の絵が描かれていた。
それを見た達也の鼓動は鎮まりかえり、見てはいけない者を見てしまったと無心になった。
「あ、ごめんごめん。君にはこのシャツは刺激が強かったかな?ま、ゲームだから気にしないで。今時の子なんて、未成年でもこれぐらい当たり前でしょ?」
「あ、はい。そうなんですね」
ーーコイツを逮捕してやりたい。
っと、思った達也だった。
思えば、推理やらの時に転生って言い始めたところを見るに彼女はそのタイプなんだろうな。っと、思い何かを納得した達也だった。
「それで、それで?君は一体何者なのかな?あ、そうだ!私まだ名乗ってなかったね!真崎 瑠衣 ピチピチの22歳だよ!瑠衣ちゃんって読んでね!」
「あ、はい。瑠衣ちゃんさん、よろしくお願いします」
「あはは。まぁなんでもいいよ。それで!!何度も聞いたけど、君は一体何者なの!?年齢は?家族は?なんであそこにいたの!?」
瑠衣は、達也の顔にどんどん近づき目を合わせた。
達也の鼻を甘くもさっぱりとした匂いが強く刺激する。
ーーっく。なんで言えばいいんだ。ん〜〜もうこれしかない!
「実は僕……記憶が抜け落ちてて。覚えているのは、両親が事故で亡くなってしまって……それが、辛くなって飛び降りた事だけで。もちろん名前も嘘です。本当の名前は思い出せなくて……」
「やっぱりそうだったか!なるほど……身分証もないってことだもんな……」
ーーとりあえず、これで乗り切るしかない。上手くいけば施設には入れるはずだ。
「君も私と一緒で苦労したんだろうね……よし!決めた!君の記憶が戻るまで私が面倒見てあげるよ!!もちろん、警察にも行ったりはするから、ずっとではないけどね?」
ーー何言ってるんだこの人は!こんな、性欲の塊でしかない若い男の面倒を見るなんて、どうかしてるぞ。いやね?もし自分が瑠衣さんの立場だったら、一日二日は手を差し出し助けなる気持ちは分かるけど、異性は無理でしょ。それに、未成年だと捕まっちゃうから。あ、そうか。僕って、未成年かもわからないのか。なら、いいのか。合法か。
「あ、ありがとう……ございます。その、なんでも言ってください。手伝いますし、バイトしてお金も稼ぐので」
「もっちろん!君の力と顔には期待しているよ〜〜」
ーー力と顔……これってもしかして……もしかするのか!!合法だ……合法なんだよ!だってそもそも僕は27歳だ!!そうじゃないか!27歳だ!!なら、いかがわしいことが起きても……
達也は、溢れる欲望をバレないように必死に抑えていた。
しかし心のどこかで、バレちゃってもいいんじゃないのか?と、ハーレムを期待していたが甘かった。
「じゃじゃ〜〜ん。君には明日からここで働いてもらうよ!」
女性が取り出したのは、モデル雑誌だった。
「……はい?」
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