◆地域限定

 身体測定を行うにあたってオレたちの学校では男女別に出席番号順に廊下に並んで各教室へと移動する。

 オレと李奈りなは出席番号が近く先頭の方にいる。

 風利ふうり類世たぐよでは五十音順では離れているが、うちの中学校では誕生日順に出席番号が決まるので誕生日が近いオレと李奈は出席番号が近いことになる。

 これはどうやら全国的に見てこの地域限定のシステムらしい。

 ちなみにこのシステムは高校では無くなり、出席番号は五十音順になるらしい。

 高校で変わるなら初めから五十音順でいいと思うのだが?上の人間はいったい何を考えてこのシステムを導入したのだろう。

 それでも、この誕生日順は意外と便利でお互いの誕生日をすんなりと把握できたりする。

 気になるあの子の誕生日を調べるのも簡単だ。


 さて、オレの気になるあの子はというと依然としてモデルウォークを貫いている。

 クラスメイトに『なんでそんなことしているの?』とか質問されると思ったがそんなことはなかった。

 意外とみんな他人のことに興味ないのね。

 誰も突っ込まないからなんだかさみしい気持ちなったのは言うまでもない。

 どうせ誰にも興味を示されず突っ込まれないと分かったのでオレはモデルウォークをやめて普通に歩くことにした。

 正直モデルウォークはきつかった。股関節によくわからない負荷がかかった感じだ。

 明日は筋肉痛になるだろう。

 しかし、股に挟むというのは意外に効果があるらしい。

 美波みなみと抱きついたというのに李奈には勃った様子がない。

 オレならあの胸を押し付けられたら確実に勃つ!

 いや、オレだけじゃなく年頃の男子ならだれでも勃つ。断言できる。

 そんなくだらないことを考えているとあっという間に目的の教室に到着してしまった。


「それじゃあ男子はここで待機ねぇ~。女子は私についてきてくださ~い」

 先生の指示に従ってここで女子とは別れることになる。

 最後に李奈に大事なことを伝えておく。

 幸い李奈とオレの並び順は近く周りに人間には聞こえない程度に打ち合わせができる。

「いいか李奈。もしもの時はオレを呼んでくれ」

「呼んだとして悠聖ゆうせいは何をしてくれるの?」

「教室に飛び込んだり、非常ベルのボタンを押したり」

「迷惑だからやめてね」

 優しくなだめられてしまった。

 美波のように頭は撫でてくれなかったけど。

「でも、ありがとう。もしものときは何とかしてもらう」

 李奈の言葉を最後に女子の列は離れて行ってしまう。

 もしもの時は呼べと言ったがどうやって呼ぶのだろう?

 サインでも決めておけばよかったな。

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