幕間の物語~クリスマス~

 魅力的な女の子に魅力的ではない提案をしてから約一か月が経過した。


 あのとき、あの提案を受けた女の子はしばらく考え込む様子を見せた後こんなことを言ってきた。


「クリスマスの日にまたこの公園に来てほしい!」


 そう言って女の子は早足で私のもとを去った。


 今日はその女の子が指定したクリスマス当日。

 場所は女の子と初めて会った公園。


 たぶん女の子はおとこの娘になるだろう。

 確信も確証もないが何故かそう思う。

 私のあの提案のせいで彼女はおとこの娘になってしまう。

 おとこの娘になるのが嫌という可能性もあるが、そうだとしたらあの時はっきりと嫌だと断っていたはずだ。

 それにもし断るとしても今日という日は選ばないだろう。


 まあ、初めてを捧げた彼との関係を今日終わらせた私が言えた義理ではないが。


 彼との関係を終わらせた理由は彼が恋愛対象ではないということのほかにもう一つある。

 責任をとるためだ。

 もし女の子がおとこの娘になってきた場合、私は責任をもってその女の子(おとこの娘)と付き合わなければならない。

 この一か月間、毎日自問自答した。女の子と付き合うべきかどうかを。

 いろいろ考えた結果、考えすぎが原因かどうかわからないが私の頭の中は女の子のことでいっぱいになった。

 これはきっと俗に言う好きという感情だろう。

 女の子のことを考えすぎるあまり私は恋に落ちたのだ。

 好きならば付き合っても問題はない。むしろ付き合う方が正常ではないだろう。愛に性別の壁など存在しない。

 そんな考えをするようになってしまった。

 古い考えを一気にアップデートした感じだ。

 故に私は今日、女の子と付き合う気満々で臨んでいる。

 お気に入りの服を着てメイクをして髪型をセットして。

 過去、お父様のパーティーに出席したときよりも気合を入れている。

 今の私は自分史上最高に輝いている。

 この輝きのせいで彼には無駄な期待をさせてしまったことは申し訳がないと思う。


 そんなことを考えていると公園の入り口から女の子が入ってくるのがみえた。

 女の子は私を見つけると、駆け出して私のもとによってきた。

 そして満面の笑顔でこう言った。


「来年の三月におとこの娘になる」

 

 彼女はそういってまたも早足で帰っていった。

 私の付き合う気満々の返事をきかずに。


 それから数か月後、三月の中旬。

 私は女の子におとこの娘になった証拠を見せてもらった。


 そして、私たちはいびつな恋人関係になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る