◆クラス替えはみんなほどテンションが上がらない
「おふたりさん。おはよう」
「おはよう~ふたりとも」
校門をくぐり掲示板の前で一生の友達になるかもしれない二人組に出会う。
初めにあいさつしたのが
実家が空手道場を営んでいる関係で自身も空手部に所属する武術家である。
身長が高く髪が長いのが特徴。
美波の幼馴染。
あくびをかみしめながら挨拶してきたのが
性格と身体の凹凸がはっきりしたポニーテール少女。女子にしては背が高い。
バレーボール部所属。
ヌエの幼馴染。
「おはよう二人とも。新学期から一緒に登校とは仲がいいねぇ」
「おはよう。手はつながないのか?」
「幼馴染がつなぐわけないだろ」
「二人みたいに付き合ってるわけじゃないしね」
いつも通り二人の関係を邪推するオレと
せっかくの節目なんだからヌエも美波も関係をステップアップして恋人になればいいのにオレたちみたいに!
「さて、新学期の挨拶も済ませたしクラス替えの結果を見に行こうよ」
場を仕切るようにパンッと手をたたいて美波は掲示板を指さした。
このグループのリーダーは美波。中一のころからこの立ち位置も変わらない。
「新学期の挨拶って新年の挨拶みたいだよな」
そしてそれにたいしてツッコミやら疑問を投げるのがヌエ。
「オレたちもやってみるか新学期の挨拶。あけましておめでとうございます!今学期もよろしくお願いします!」
「なにがあけたかはわからないね」
悪ノリするのがオレと李奈。
いつもと変わらないこれがオレたちのグループ。
よくグループ内の男女関係に亀裂が入りクラッシュするなんて話を聞くが、オレたちには無縁のように感じる。
もっともオレと李奈の秘密の関係を隠しているからこそなのかもしれないが。少なくてもこのグループは卒業までは変わらないだろう。
問題なのは李奈の秘密を打ち明けた後、大なり小なり変化はあるはずだ。いくら二人が気のいいやつらだからといって何にも変わらない関係なんてありえない。
「ほらほら、早く見に行くよ~」
美波に催促されてオレたちは改めて掲示板の前へ。
「やった!今年もみんな同じクラスだね!」
「そりゃそうだろ。二年から三年にかけてのクラス替えはないんだから」
「えっ⁉ないの!みんな知ってたの?」
「知ってたよ」
「常識だと思ってた」
オレたちの通う中学校のクラス替えは二年生時にだけ行われる。
それだというのに掲示板にわざわざクラス表を張るのはどういうことなのだろうか。
美波みたいに勘違いした生徒のためなのか。
それとも三年生だけクラス表が無いと不自然だからだろうか?
「……ともかく!また一年間このメンバーで遊べるということだね!」
「お前とは腐れ縁だけどな」
「余計な一言は言わなくていいの。今は喜びを噛みしめるの」
「確定で決まっていたから喜びなんてないんだけどな」
ヌエの言う通りこれは確定ガチャみたいなものだ。
しかも手に入るキャラは全部持っているパターンのガチャ。
「え⁉喜ばないの?」
驚愕といった表情で李奈が小さくつぶやく。
「私は嬉しいんだけどな」
「男は女と比べて淡白だからな」
「
「知っていたから感動は薄いな」
確かに感情はあまり動かされないけど、恋人となった李奈と同じクラスになれたのは心の底からうれしいく感じる。
すり抜けで思わぬキャラが手に入ったみたいなものだ。
だが、あまり喜びすぎるとみんなに李奈と付き合っていることがばれてしまう。
いや、別にばれてもいいのか?李奈に口止めはされていなかったはずだ。
カモフラージュに使うには早々にばらしてもいいと思うのだが。
ヌエと美波には付き合い始めたその日に教えたからな。
あの二人が誰かに話すことも考えられる。
「なあ李奈。オレたちが付き合っていることはいつ打ち明けるんだ?」
「う~ん。そうだなぁ~」
考えていなかったのか唇に人差し指を当ててうなる。
「成り行きでいいんじゃない」
大々的に発表して下手に注目を浴びるよりはいいかもしれないな。
「行き当たりばったりということか」
「表現はちょっと悪いけど同じことだよね」
オレも李奈もあまり物事を深く考えずに行動に移してしまうことがあるのがたまに傷だ。
今回の場合はいい方向に働きそうだけど、今後は注意しないとな。
いつか行き当たりばったりで後悔しそうな気がしてならない。
「何してるの?ふたりとも早く教室にいこうよ」
昇降口前で手を振る美波に促されてオレたちは三年生の教室に向かう。
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