◆進級してクラスアップ

 朝、目覚めると昨日とは違う自分になっていた。

 別に外見が変わったとかそんな話じゃない。

 変わったのは身分だ。

 沙倉さくら中学校に通う中学二年生の類世悠聖たぐよゆうせい。彼女無しが昨日までの身分。

 では、今日からは?

 そんなの決まっている。進級して中学三年生になったのだ。

 まあ、進級云々に関しては別にどうでもいい。中学校だし、義務教育だし進級は誰でもできる。

 変わったことは他にある。

 それは、


「オレに人生で初めての彼女が出来たことだ!」


 うれしさいっぱい夢いっぱいといったような気分が表情を形成したのだろうか朝からさわやかな笑顔になってしまう。

 だが、その気分も表情も長続きせず次第に曇っていく。


「…… 正確には彼女じゃなく、彼女(おとこの娘)なんだけどな」


 もう一度言う正確には彼女ではなく。彼女(おとこの娘)である。


「…… 初めての彼女はおとこの娘か」


 カーテンを開け、差し込んできた朝の陽ざしに目を細めながら昨日のことを思い出していく。


 市立沙倉中学に通う中学三年生の類世悠聖。彼女(おとこの娘)持ちが今日からの身分になったことの経緯いきさつを。

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