スワローガール――中学生の再会
あーしは中学生になった。進学先は家からも近い「西実館中学校」だ。決めては家が近いという事じゃなく、小六の時に見た西実館中女子サッカーの練習試合だった。その中で前に攻め込む姿勢が誰よりも強い
「あれぇ、ツバちゃんどこ行くの?」
中学のクラスにも慣れてきた昼休み、教室を出ていこうとするあーしを同じクラスになった真冬が呼び止めた。
「ん〜、入部届も出したしちょっと噂のやつを顔拝んでおこうかなって」
「あ、例の監督の秘蔵っ子さんです?」
あーしの説明に付き合いの長い真冬はすぐに気づいたようだ。
「そ、なんなら一緒に行く?」
「い、いやぁ、部活始まればすぐに会えるだろうからいいですッ」
アッサリとフラレてしまった。真冬は若干の人見知りがあるからまぁしょうが無い、あーしも仲よくなるまでは一年近く時間が掛かった。真冬の人見知りの壁を瞬時にぶち壊すような人間が現れたら見てみたいもんではある。まぁ、いないだろう。
「んじゃ、ちょっとだけ覗きに行ってくるわ」
あーしは真冬に軽く手を振って、噂の秘蔵っ子のクラスに向かった。
噂の秘蔵っ子の名前はまだ覚えちゃいない、恩師である女子サッカー部監督を追い掛けて小学卒業してすぐに地方からこっちに移って来たやつらしい。スポーツの世界じゃ信頼するコーチや監督の後を追い掛けて学校を決めるてのも珍しい事でも無いけどな。
(ん、このクラスでいいはずだけど?)
教室の外から覗いて見る。なんか青い目のハーフっぽい子だって穂香は言ってたけど、そんな目立ちそうな容姿の子いないな。
「ちょい、うちのクラスになにか用?」
「ぇ、あー、その……」
急に女子が話しかけてきた。どうもしなくてもこのグラスの子だ。どうも他のクラスのあーしが教室をジロジロ見てるのが気になって話しかけてきたみたいだ。結構怪しい行動を取っちゃったか。でも待てよ、このクラスの子なら知ってるか。見た目がハーフっぽい女子がいたら噂にもなるだろう、ちょい聞いてみる。
「あの、なんか見た目がこう――」
「――見た目、あ、あなたも噂を聞きつけて来た口? 多いのよねぇ」
「ぇ、あぁそうなの?」
おぉ、なんか当たりっぽい、けどそんな人がよく来るほど噂のやつなのか? 確かにハーフはここらじゃ目立つかもだけど。
「ふぅ、あなたみたいな子でもそうなのねぇ。ま、いいやちょうどそこにいるから呼んであげる」
「あ、じゃあよろしく」
なんか随分と刺々しい感じだけど、呼んでくれるてんならありがたく呼んで貰おうかな。
「おーい、白井くーん。なんか可愛い子が呼んでるよう」
ん、シライ……誰?
「ぇ、なに?」
困惑してるあーしをよそに、無造作ヘアの栗目男子が連れてこられた。てか、なんだこのポップアイドルみたいな男は。あ、そういやアイドル系のイケメンがいるってクラスのやつらが言ってたような気がする。それがたぶん目の前のイケメンだな。秘蔵っ子と同じクラスだったか。言っとくが、あーしは可愛い小物と服は好きだがイケメンにテンション上がるミーハーじゃない。誤解されたらたまったもんじゃない、ここは勘違いだと素直に謝るが吉だな。
「あ、ごめ――」
「――あれ、もしかしてツバメちゃん?」
「ぇ、なんであーしの名前?」
不意打ちにイケメンがあーしの名前を言うのでつい聞き返してしまった。なんだ、こんなイケメンに知り合いはいない、なんかの聞き違いに――
「えと、覚えてるかわからないけど、ボク「
――ユウ? イケメンの言う名前には覚えがある。だけど、あーしの記憶の中にあるユウという名前は、小学ん頃に一度だけ話した美少女だけだ。
「すまんけどあーし、男子でユウて名前のやつに心当たりは」
「あの、運動公園の駐車場で、ヘッドストールて技を教えてくれるって」
「ちょ待てよ、それはユウておん、な……
いや、それ知ってるて事は、このイケメンがユウ本人て事になるんじゃないのか?
「あ、はは、やっぱり女子と勘違いされてたのかぁ、確かに今より身体も小さくて髪も長かったから」
あーしの中でピシリと思い出の中の女の子のユウが目の前のイケメンへと切り替わっていった。
「ぇ、でもあの日いち――」
――あの日、一度きりしか会ってないのによく覚えてるなと言おうとした時、ジロジロとした視線を向けられているのに今更気づいた。
「ぇ、白井くんの彼女?」
「え〜、ちょっとショックだけどなんかなっとく〜お似合いだよねぇ」
マズい、これじゃあらぬ誤解で悪目立ちじゃないか。てかお似合いてなんだあーしは恋愛なんざ興味はねえし、ユウも迷惑だろうッ。
「ごめん人違い」
「ぇ、でもツバメち――」
「――あーしが
あーしは一方的にさよならの片手をあげると、逃げるようにユウの教室から去っていた。
(なんだ、なんなんだッ)
あーしは妙に熱く感じる頬を冷ますように速歩きで前へと進む。
「……」
途中、目の前をハーフっぽい顔立ちの女子が通り過ぎた気がしたが、この時のあーしはそれどころではなかった。
教室に帰って自分の席に座り込んだ時、当初の目的を思い出し、頭を抱えると同時に昼休み終了のチャイムが鳴った。
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