スワローガール
もりくぼの小隊
スワローガール――小学生の出会い
あーし「
時は流れてニ年、あーしは小学四年生。ニ年もサッカーをやれば自然とチームプレイの協調性やルールの大切さは身体に叩き込まれていくものだ。それと同時に、負けん気という物も覚えてしまったようで、あーしはかなり我の強い女になっていた。サッカーを始めた年齢が他の子よりも遅く、負けるかという気持ちが前に前にへと出過ぎた結果だと思うが、他のチームメイトもあーしと差して変わらず我が強いやつらが多かったので気にも止めなかった。ママとお婆ちゃんは好きな子ができた時の事を心配していた様だが、当時のあーしとしてはそれは余計なお世話だった。理由としては先に始めた女子よりも同じクラブチームの男子達に勝ちたいという気持ちの方が強かったからだ。この気持ちは他の女子も同じだったようで、妙な一体感というものが生まれていた。たぶん、この時のあーしは男子の事が嫌いだったのかも知れない。
そんなあーしが初めて「あいつ」と出会ったのが、この小四の時だった。
「あれ、ツバちゃんまだ帰んないの?」
「ん、うちの親がまだ遅くなるみたいだから待たなきゃいけないんだわ」
「ふーんそっか、んじゃお先、おつかれな」
その日のサッカークラブが終わって、チームメイトで特に仲の良い「
「うわぁ、上手だねぇ」
突然声を掛けられてあーしは、ボールを膝に当てるリズムをミスり軌道修正しようと悪足掻いたつま先を掠めて、ボールは転々と声のする方向へと地面を跳ねていった。
「ぁ、ごめんなさい。邪魔しちゃった」
声を掛けた主はすぐにもうわけなさそうな声を漏らした。あーしが顔を向けると眉をハの字にした肩くらいまで髪を伸ばした子が頭を下げていた。女子のあーしでも、凄く可愛いと思ってしまうほどの美少女てやつがそこにいた。
「いーよ、こんくらいで集中力を乱したこっちが悪い」
さすがにこんなか弱そうな
「ホントにスゴイなぁ」
明らかに大きさのあってないブカブカのボーダー
「別に、普通だよこんなん」
あーしはちょっと真っ直ぐに向けられる尊敬の眼差してやつに照れくさくなってそっぽを向いた。まあでも、正直悪い気はしないかな。あーしはちょっと上機嫌になってキラッキラとした目にサッカーボールを差し出した。
「よかったら、おし――」
――教えてもいいよ、サッカー。と、言おうとした瞬間。
「ユウちゃ〜んッ」
という声が聞こえて、女の人が手を振っていた。目の前の
「なに、あんたのお母さん?」
「うん、ごめんね。もう帰んなきゃ」
「いいよ、また会える機会もあんでしょ?」
あーしはサッカーボールを彼女の頭へと置くとすぐによろよろとボールが落ちていった。
「次にあったらヘッドストール教えてあげる」
「ヘッドストール?」
「頭にボールずっと乗っけるやつ」
「で、できるかなぁ」
「簡単だって、あ、あーしは
「ツバメちゃん?」
「そうそう、あんたはユウでしょ? いま呼ばれてた名前あんたのだよな?」
「うん、そうだよ」
「じゃ、またな」
「うんうんッ、またねツバメちゃんッ」
そう言ってユウはブカブカな袖を振りながら後ろに下がると、お母さんの元へと走っていた。そっからしばらくもしないうちに、あーしもママの車が迎えに来た。なんとなく、またすぐに会えるだろうと、そん時のあーしは思っていた。
その日以降の小学校の二年間、あーしとユウが会うことは無かった。
ユウと再会できたのは、中学生になってすぐの事だったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます