第109話 今更解説「Swing Razor」
みっつの自主企画に参加させ、カクヨムコン短編に応募した作品。毎度の如く全く注目されてはいないのですが、つい最近同じ自主企画に参加されている方から「お前の読んだから俺のも読め」という内容のコメント(が行間に書いてあった)を頂いたので、改めて自分でも読んでみた。コメ主の作品ではなく「Swing Razor」をね。
まずは参加した自主企画みっつをご紹介。
ひとつ目は、まだ今日現在開催中の企画。
【第一回】『一文創作』~書き手の数だけ物語がある!~ 主催者:燕子花様(『様』までがユーザー名)
この企画がまた悪魔のような企画で、最初の一文を完全指定したもの。その一文というのが「吾輩は猫である」という超難題。そのせいもあってか開催から二ヶ月経った現在でも参加作品たったの9作品!
三大参加者数の少ない自主企画「喧嘩稼業」「悪い見本」「私の短歌で」(※私見)に迫る勢いです。
「吾輩は猫である」から書き始めて、ただ猫が主人公の物語にするだけだと意味がないですし、「吾輩は猫である。なんてことを言ってはみるが」と、書き出しを打ち消して全く関係のない物語を展開させてもいけない。もちろん企画のルールでそう書かれてはいないけれども、そんなことする人はそもそもこの企画に目も向けない。
これを読んでいるあなた。ぜひ挑戦して欲しい。本当に。なかなか苦しいよ。
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330668016975954
ふたつ目とみっつ目は短期のお題企画で、クロノヒョウさんの「『お題でカクコン挑戦』企画」
条件は以下の通り。
お題「のれないブランコ」
・お題に沿った書き下ろし完結作品であること
・ジャンル「ホラー」のみ
・タグに「のれないブランコ」と記入
・カクヨムWeb小説短編賞2023に応募すること
・400~1万文字以内
タイトルの「Swing」はこの企画に参加するということを決めた時点で決まりましたね。
みっつ目は柴田恭太朗さんの三題噺。「流れ星」「ポケット」「ブーツ」のみっつの単語を文中で使うという条件。
以上のルールにのっとって書いたのが「Swing Razor」というわけです。
「のれないブランコ」というお題もなかなかありそうなだけに、そこに個性を出すのは難しかったのですが、やはり「吾輩は猫である」という書き出しのインパクトは強敵です。
私は双方のお題を活かすのに、音楽で言うところのオスティナート(執拗反復)を使いました。ブランコの動きもまた一種のオスティナートですからね。
イメージしやすい曲として、ラヴェルのボレロなんか聴きながら読むといいかも。
さて、2話で人間が登場したことで、「吾輩は猫である」の書き出しが紙に書かれたものだと明かされます。ブランコになった猫のブーツ(本当にそんなことが起きるはずもないのですが)にその文章を書くことはできないでしょう。その文章は創作なのか、事実なのか、それは物語中でも明かされていません。
ただ、第4話の書き出しに「吾輩は宿命的に放浪者である。吾輩は古里を持たない」とあります。一人称を「吾輩」としているので、一見するとブーツの言葉のようにも見えますが、実はそうとも限りません。
そして、この書き出しは言わずと知れた林芙美子の「放浪記」のものです。
シュロの木、古典好きなのかも知れないですね。とか書いてみたりして。
とにかく、ここで「放浪記」を持ち出したことで「吾輩は猫である」にも更に別の要素を持たせているのです。気付いたかなあ、気付かないよなあ。気付かれないくらいがちょうどいいんですけどね。ホラーだと。ミステリーなら気付かせないといけないのですが。
どうです? 一度読んだ方も、もう一度読んでみたくなったでしょう?
未読の方も、読みたくなったでしょう?
なんない?
そっか。
でも一応URL置いておきます。
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