第82話 名前と存在を捨てる前の話
以前の筆名を使っていた頃、ほんの少しだけ短歌のエリアに足を踏み入れたことがあります。
その頃にコーヒーを主題に詠んだ短歌六首連作と、雨をテーマにしたエッセイがクラウドの中にあったので、ここに載せてしまおうと思います。
以下、過去の遺物。
☆ ☆ ☆
六首連作
「いつもので」「水だけでいい?」「かまわんよ」そんな会話のできる店にて
控えめな小さい文字で書いてある「自家焙煎」の火に力あり
午後十時。海を渡った豆たちが煙突抜けて故郷の空へ
変わらない色、味、香り、軋む椅子。いつかなくなるその日が怖い
空は青コーヒーは黒 空は黒コーヒーも黒 私はブルー
マスターのハンドピックに弾かれてスプレモのキミもボクと同じ
エッセイテーマ「雨」
「雨」と聞くと、旧友の影響でジミー・クリフの「I Can See Clearly Now」が頭の中に流れてきます。それはもう、事あるごとに旧友が口ずさんでいたので。
その歌の中で「雨」は障害物の象徴で、「青空」や「虹」を明るい未来や希望としているのです。なんと陳腐で安っぽいことか! よく言えばキャッチ―なのでしょう(確かに私も覚えてしまっていますし)。
雨はいつか止む。障害物は消えてなくなる。きっと何もかもうまくいく。明るい未来が待っている。「いっつごなびーおーらい」
そんなアメリカンに二極化した良し悪しにとらわれず、私は雨に降られても気にしないようにしています。障害があっても気にしない。……ように努力しています。ただ、諦めだけは確実に良い方なのですよね。
できれば雨は室内にいるうちに降ってくれと願いはしますが、雨に降られたとしても気にしません。しょうがないね、と諦めます。読者が付かなかったとしても気にしません。しょうがないね、と諦めます。
蛇足ですが、旧正月を祝う「長崎ランタンフェスティバル」は雨の方が格別に美しいです。
★ ★ ★
以上、過去の遺物でした。
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