第3話 その技術は何のために
小説に限らず、日本語の文章を書くには、いろいろなテクニックがありますよね。
倒置法、体言止め、擬人法、反復法、直喩、暗喩などなど。
私の「おやつ探偵犬雪丸」では、割と多くの技法が使われています。
https://kakuyomu.jp/works/16816927863048145702
しかし、どんな技法、テクニックも、情景や心情をより良く伝えるためにあるものであって、テクニックを習得するのが目的ではありません。
ひたらく言えば、使えばいいという物じゃない。
物語全体の雰囲気やリズムを壊しては本末転倒。
読者にとって、技法など関係ないのです。国語の読み取りテストではないのだから。
作者が特にミス(誤字などと違いはっきりと見えないミスですが)を起こしやすいのが比喩系のテクニックです。
「まるで〜のよう」と直喩するのであれば、対象の言葉を分かりやすく喩えなければならない。そうしなければ比喩を使う意味がない。
……と思うでしょう? 普通であれば。でも、それが成り立つのはノンフィクションや各記事の文章での話。
日本で一番有名な比喩は、硫化水素の匂いを表す「腐った卵のような匂い」だと思います。※意見には個人差があります。
しかし皆さん、「腐った卵の匂い」って嗅いだことあります?
私はありません。一方、硫化水素の匂いは嗅いだことがあります。
私にとって「腐った卵の匂い」は「硫化水素のような匂い」なのです。
とまあ、これは現実世界での話なのであまり関係ないですけど。
一方で小説でのお話。分かりやすくファンタジーで。
その異世界に咲く花の美しさを比喩で喩えるとします。
「その花はまるで、極小のサファイヤやエメラルドを散りばめたような」などと、この現実世界のもので例えてはいけないのです。
「その花はまるで、三つの月の光を乱反射するユウ海の波打ち際のような」なんて感じで例えなければいけません。
ファンタジーだとこんな風に極端になりますが、大事なのは比喩で伝えるにも、物語全体の枠からはみ出してはいけない、ということ。比喩で雰囲気を伝えたいはずが、その雰囲気をぶち壊しちゃうので。
では、なぜそんなミスを犯してしまうのか。それは物語を伝えるという目的より、テクニックを使いたいという一面が強く顔を覗かしてしまうからです。テクニックなんて手段にしか過ぎないのに。
手段が目的を飛び越えてしまう。そうした時にミスが出ますよ。気をつけろっ。
読者は細かい理由はわからなかったとしても、
「なんか読みにくい」
「読んでいて疲れる」
「文章が鼻につく」
って感じで察知しちゃうのだ。そして、作者も読み返せば同じように感じるはずなのだ。
作者はその原因を解明して、より良い手法で読者に伝えなくてはならない。
たとえ無料で公開しているとはいえ、限られた時間を読書に費やしていただいているのだから。
(普段ろくに読み返していないお前が言うな、という声が聞こえる)
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