その9 ~ハワイの謎 その6~

山中 慎太郎やまなか しんたろうは理不尽な結末を迎え、山田 花子やまだ はなこと言う少女に転生&転性した。今世では人類共通の敵エネミーが居て、微力ながら対抗組織が存在する…元の世界ではないが近しい世界であり、エネミーという異物から人類を守る組織がある世界だった。花子は人類の敵を倒す為に対抗組織「対エネミー自衛隊」に入隊の後、自らの高い肉体性能と魔法少女に変身することにより発揮する人外となったと自覚した今…半ばやけっぱちとなってはいるが自らの生活と母親を守る為に頑張ることとなる。そして…ダブルTS少女から魔法少女にクラスチェンジした山中慎太郎…否、山田花子は…本人の意思を他所に何処の誰かもわからない意図に依り、本人が気付かない内に身体を張った実験をさせられるのであった…そして、出張先でとある実験に巻き込まれた花子は、今…日本に帰還しているのだが…さて?

━━━━━━━━━━━━━━━


- 証拠動画を見たアソ連邦 -


「…でっち上げだ!」


「CG動画だろう?そうだ、それに違いない!!」


「何処のスタジオに要請した?…潰すしかないな」


などと、予想通りの反応を示すアソ連邦の高官たち。というよりは、外交官の高官なのだが…。一部、何ら関係無い企業を潰そうなどと物騒なことをのたまう人物が居たので、取り敢えず黙って貰った。


「お静かに…これはCG動画でもでっち上げの動画でもありません…全て、事実です」


ざわざわとざわめきが激しくなる。


「…アナタ方は此処が何処かご存じなのですか?」


そうでなければああいう反応は見られないだろう…つまり、


・露見しては不味い場所を録画された


この一点に尽きる。


「し…知らん!」


「我々は何も知らん!」


「…こ、此処は何処を映したものなのかね?」


物凄くわかり易い態度を示す高官たち。


(花子ちゃん、こいつら嘘を付いてる?…それとも本心かな?)


カナデは…安西 奏アンザイ カナデは隣の席でちんまりと着席し、今の今まで黙っていた少女に話しかける。尤も、隣の者にしか聞こえないような小声でだが…


(はぁ…嘘も何も、こいつら最初からこちらを敵視してましたけど?)


(…つまり?)


(嘘八百ですね…まぁ、本当のことがバレるバレない以前に、本国に戻ったら…いえ、大使館に戻った時点で暗殺されるそうですよ…まぁ、誰が殺ったかとか全部こちらに押し付けるみたいですが…)


(えぇ…!?)


何でそこまで…と思っていると、


ブラック黒壱号が色々手を回して探った情報ですけどね…)


と、遠い目をしている花子ちゃんに同情の念を禁じ得なかったが…


(そ、そう…後は任せて。こういう交渉は得意ですので)


と、カナデはフンスと力こぶを作り…アソ連邦の外交官たちに向かって交渉といえるモノではなかったが…再開するのだった。



- 対エネミー自衛隊・高円寺支部…へ帰還途中 -


「凄かったですね…」


「まぁ、後ろでダン部隊長が睨みを効かせてたしね?」


「お、おう…黙って立ってるだけでいいからって何かと思ったら…」


と、呆れ声だ。護衛として付いてきて貰ったという訳だ。


「まぁいいじゃない…これも業務の一環だし!」


カナデさんは晴れやかな笑顔で後部座席からバンバンとダン部隊長の後頭部を叩くw


「痛い痛いってば!…つか危険運転になるからやめれ!」


と怒られるカナデさん。いや危ないから止めて欲しい…


そんなことをしながら早稲田通りに入った頃。


(…このまま真っ直ぐで戻れるかなぁ…)


と思っていると、何となくだが殺気というか…粘つくような視線を感じる。


「…シートベルト締めろ」


「え…あ、はい…」


ダン部隊長の声に殺気が混じっていたことを感じ、カナデさんは素直に従う。


(シートベルトって…あ、これか)


カナデさんがモタモタしていた俺にシートベルトはこれ!…と引っ張って渡したので手に持ち…これまたモタつきつつ金具を探していると…


どぉんっ!!!


と、後ろから追突される!


「うぐぉっ!」


不意に追突されたので体が浮き…そのままフロントガラスに頭から突っ込んで突き破ってしまった!!


「くっ…って、山田!何やってん…ぐぅっ!?」


続けて追突されて、バンが跳ね飛ばされる!


「きゃあっ!…はっ、花子ちゃんっ!?」


既に花子はフロントガラスを乗り越えて車外へと…バンはまだ走り続けている為、このままでは花子はひかれてしまう…だが、再度バンが後ろから追突されてしまい、とうとうコントロールが効かなくなり…


「痛いなぁ~、もうっ!!」


と、花子の怒声が外…バンの前から聞こえて来る…


「「まさか…!?」」


ダンとカナデがハモる!


「天が呼ぶ…地が呼ぶ…悪を斃せと俺を呼ぶ…魔法少女ハナコ、此処に見参!!」


「「仮面●イダー●トロンガーかっ!?」」


見事なボケと突っ込みが炸裂した瞬間であった!www


※ググったらカブトムシライダーだった。変身後の掛け声だけ覚えてて、誰の決め台詞しか覚えてなかったってオチw



「んぎぎぎぎ…結構重い…」


「そんなに太ってません!!」


「いや…支部のバンとダンさんとカナデさんと後ろの黒い車と3人の外人分と…後、何か武器積んでるよね?あれ…」


都合2トン近くで今尚追突してくる外交官ナンバーの黒いバンの圧力で、花子の堪える足はアスファルトにめり込んで2本の溝を作りつつ…


(これ以上やったら工事費用が嵩むよなぁ…)


と思いながらバンのフロントを抱える花子。既にフロントのカバーは花子の両腕がめり込んで、これ以上めり込むとエンジンが壊れかねない状況になっていた。


(あ…高円寺支部だ)


花子はぐわっ!…と両腕に力を込め、


「どりゃあっ!!」


と、美少女に似つかわしくない掛けダミ声を上げてバンを掴んでジャンプ…そして支部の演習場に


ドォ~ンッ!!


と地響きを伴う着地をしてから…静かにバンを置く。


「はぁ…お2人とも大丈夫ですか?」


「まぁ…何とかな」


「ちょっとこの恰好に思う所はあるけど…大丈夫よ?」


見れば、ダン部隊長がカナデさんを庇うように…どうやってかは知らないが車内でお姫様抱っこをしていた。思わず花子は笑いそうになったが…


ガガガガガガガガ・・・・・!!!


と、演習場に乱入してきた黒いバンが停車し…横のスライドドアを開けたと思ったらマシンガン?を構えていきなり撃ち込んで来たのだ!!


「えっ!?…ちょっ!!…このっ!!!」


花子は「吸収」を行い、そしてダークマターを吸収後に使える幾つかのスキルを実行する!


「シールド!!」


ぼわっ!…と黒い盾が現れる。そして…


ピキュン!ピキュピキュン!ピキュンッ!!!


と、全弾弾いて…


「あ、やべ」


跳弾した弾丸が事務所まで弾かれて窓ガラスを割っていた。


「こらーっ!…誰だぁーっ!!…演習所で無許可で銃を撃ってる奴はぁ~っ!!」


と大騒ぎに…あ


「ダムッ!!」


「ゴートゥーヘルッ!!」


2人のやや年を喰った男が円筒を構えて…


「2人共、伏せてっ!!」


ボシュ~~~ッ!!!………ドガァ~ンッッ!!!


2基同時に発射されたロケラン…ロケットランチャーが噴煙を引いて…シールドに激突して大爆発する!…爆炎が広がり…俺は兎も角、2人が…と思っていたのだが…


「ヘイッ!」


「ナイスガッツ!!」


と、拳を合わせてお互いの健闘を称えている外人の前に、黒い巨人が静かに佇んでいた…


「「「マイガッ!?」」」


バンを運転していた者を含め…3人のいい歳をした外人たちは、震え上がるしかなかったのだった…



- アソ連邦サイド・追い詰められた外交官たちの末路 -


「不味いぞ…」


「あぁ…」


不本意ながら上へと報告した直後だ。そして下された命令は…



◎証拠を持つ対エ自・高円寺支部の者たちを抹殺せよ。無論、証拠を全て消した上でだ

◎遂行できなかった場合…肉親を含む一族郎党を全て抹殺し、存在していた事実も消去する。証拠を消す前に戻って来た場合…わかっているだろうな?



要は、証拠を消せ。でなければ死、有るのみ…という訳だ。親類まとめて巻き添えでだ…


「なんてこった…」


「俺は証拠とやらを持って来たあの日本人を恨むぞ…」


「ああ…」


とんだ逆恨みではあるが…元といえば花子を実験に巻き込んだアソ連邦が悪いといえよう…


そして事なかれ主義は日本のお家芸ではないことがわかる。何処の国も、臭い物には蓋…が常套手段なのだろう…


バレなきゃいいんだよ、バレなきゃなっ!


そんな台詞が脳裏を過ぎったが…ま、それはいいとして。


「まずは…」


「ああ…」


「あの3人を消すか」


…という訳で、年を少し喰った外交官3人は、大使館の地下に隠された数々の武器を黒いバンに運び込み…急ぎ大使館から出発するのだが…思ったより準備に時間が掛かってしまった為、目的の少し薄汚れた白いバンに追いつくのに早稲田通りに入るまで待たなければならなかった…



「あれか…」


「ああ…」


「準備しろ。運転は任せてくれ」


「ラジャー!」


2人はバンの荷台部分で武器の選定を始める。運転を担当した者はいうと…


「ヒャッハーッ!…ブチ跳べっ!!」


どぉーんっ!!


「「ちょっ!」」


「おいおい、安全運転で頼むぜ?」


「バカだなぁ~…武器を使うまででもないだろう?…交通事故で始末すればよぉ~っ!」


再び、どぉーんっ!!


見れば、前のバンに乗っている人間が1人足らないようだ。こちらと違って前のバンはスモ-クではない為に中の様子が辛うじて見えるのだ。


「どうやら、1人始末できたみたいだぜ?」


「後2人だな…次行くぜ!」


「「おおっ!」」


だが、次の瞬間…聞いたことのない台詞が大音量で聞こえてくる…


「天が呼ぶ…地が呼ぶ…悪を斃せと俺を呼ぶ…魔法少女ハナコ、此処に見参!!」


日本語で発せられたその言葉はよくわからないが…何となく格好いい!…と3人は感じていた。が、


「「仮面●イダー●トロンガーかっ!?」」


という突っ込みはわからなかったがw



「ふっ…あれが噂に聞く「魔法少女」という奴か…構わん。もっと押し込めっ!」


「ラジャーッ!!」


どぉ~んっ!!


無情にも黒バンは白バンを押し込んで行く…やや速度が落ちるものの、白バンは潰れる様子は無い…


「ダムッ!…なんて頑丈なバンだ!」


「アクセルを踏み込めっ!!」


「アクセルは既に全開だっ!…だが」


急に、いきなり、目前の白バンが消える!


「「「マイガッ!?」」」


急に負荷が消え去り、急発進した黒バンが一気に加速して…少し前に居た車に激突寸前で急ブレーキを踏んで何とか…いや、カウンターを掛けた勢いで後部をフルスイングして激突。前の車両は高円寺支部の演習場の出入り口にスピンして突っ込み…


「「おお、ナイス!」」


邪魔だったゲートがスピンしながら侵入した車両が吹き飛ばし…その車両は中で停止する。運転手は急激な回転で目を回しており、動く気配はない…


「今の内にだ。侵入して撃破してしまおう!」


「「応!!」」


黒バンはすぐにバックした後に左折して対エ自・高円寺支部の演習場に侵入する。そして…マシンガンを装備し、安全レバーを解除してスライドドアを開けると…


ガガガガガガガガ・・・・・!!!


と乱射を開始。だが…


「「マイガッ!?」」


ほぼ全ての弾丸が弾かれる…目前にできていた、黒い大きな盾シールドに依って!


「ダムッ!!」


俺たちはバンの後部荷台に戻り、一際大きな筒を持ち出す…通称「化け物殺し」…ロケットランチャーを!


「ゴートゥーヘルッ!!」


外野が何やらうるさいが…お構いなしにロケランを構え、安全装置を外してから発射ボタントリガーに指を掛ける!


ボシュ~~~ッ!!!………ドガァ~ンッッ!!!


爆炎ともうもうと沸き立つ土埃に、


「これではどうにもできないだろう!?」


という勝利の感情が高ぶり…


「ヘイッ!」


「ナイスガッツ!!」


と、拳を合わせてお互いの健闘を称えていると不意に圧倒的な圧を感じ…恐る恐る視線をずらし、見上げると…黒い巨人が静かに佇み、こちらを見下ろしていた…


そして、中腰に屈んだ黒い巨人の持つ巨大な盾は…恐らくはあの白いバンを庇っているのだろう…バンは全く見えていない。


黒い巨人は全くといっていい程動かなかったが…こちらを睨む赤い目は異様に光っており…まるで視線だけでこちらを射殺せるような錯覚を覚える。


「「「マイガッ!?」」」


そうして…黒い盾が動かされ…その向こうには3人の日本人が立っていた…


「嘘だろ…」


「もう…お終いだ…」


「ああ…神よ!」


最後の神頼みな言葉に神は…


〈自業自得だろう?〉


…と、唯人には聞こえない声で、呟くのみだった…


(本当にな…)


※そして、偶々聞き取れた花子は同意するのだったw



- 事後処理? -


一応、対エネミー自衛隊にも現行犯逮捕権はある(警察機構ではないが認められているのだ)


「確保ぉ~!」


がちゃがちゃがちゃ!!!


…という訳で、ダン部隊長とカナデさん、その他ブラザーズの1人の所持していた手錠で確保されたのだった!!…だがっ



「3人を解放しろって?」


「あぁ…不当逮捕だとさ」


「ふぅーん…」


既に3人の外交官は別の場所に移送済みであり、持ち込まれた黒バンやら武器なども押収済み。罪状としては…



◎過失運転致傷罪(自動車運転中の過失に依って人を怪我をさせる犯罪名)

◎銃刀法違反(銃や刀などを持ち運ぶ犯罪名)

◎殺人未遂罪(実際には銃を撃っても死ななかった為の犯罪名)



など。他にも細かい犯罪を犯しているのだが、目立つのはこの3つだろう…尤も、最後の奴は、「対象が普通の人間・・・・・」なら殺人罪となる所だったのだが…(マシンガンやロケランなど、絶対殺してやる!…という殺意マシマシな訳だし)


「あんだけのことして解放とかするのかねぇ?」


「圧力掛けられたらどうなることやらね…」


「日本のお偉方ってアソ連邦に滅法弱いそうだから…」


「ま…必要な情報は抜けるだけ抜いたそうだからいいけどな…」


ダン部隊長がそういうと、花子は


「まぁ…そうですね」


と、暗い顔で頷く。まさか外交官が3人共…洗脳されただけのイエスマンな存在で、不必要な記憶は消されているとは思わなかったのだ。だが…記憶は直接脳神経を削らなければ残っており、洗脳で消えたと思った記憶は思い出す引き出しが強引に引き千切られただけで消えた訳ではないのだ。


ダンの命令…否、お願いに依り、花子はブラックの内部で3人を拘留している間に全記憶を抽出することに成功…余りいい気分ではなかったが、3人の記憶は全て…容易に引き出せる状況に整えておいた。ちょっとしたことがトリガーとなり、全ての記憶がフラッシュバックするように…


「で、その情報って?」


カナデがダン部隊長に問う。


「例のブラックとかいったか?…あいつのメモリにバックアップを取って、」


「ここにもあります」


と、花子が手にしたメモリカードを見せる。


「殆ど音声記録ですが…一応映像記録もあります」


「ふーん…」


ぱきーんっ!


いきなり室内に銃弾が飛び込み、メモリカードが砕け散る!


「痛い…」


花子が指を擦ると飛び散ったメモリカードの欠片が全て床に落ちる。


「はぁ…本当、監視体制を強化せんとな…」


ボタンを押して


「監視体制どーなってんだっ!?」


と怒鳴るダン部隊長。


その隣で花子に


「だ、大丈夫っ!?」


と駆け寄るカナデだったが、


「あー、大丈夫です。一応、そういう体でって指示なので」


と、手品のようにもう1枚のメモリカードを手の中からニョキ!と取り出し、


「はい、ダンさん」


と手渡す花子。


「おお、すまんナぁーッ!?」


チュインッ!…パキィッ!!


と、2枚目のメモリカードも砕け散るのだった…そして、


「オーマイガーッ!?」


と、指が傷付いてドクドクと血を流して大騒ぎするダン部隊長と、救急薬箱を手に追いかけるカナデが、暴れるダンを取り押さえる高円寺支部の面々…そして3枚目を取り出す花子と、今日も対エネミー自衛隊・高円寺支部は平和?であった…(どこがっ!?w)


━━━━━━━━━━━━━━━

何となく出演(声だけ)した神様がっ!w

まぁ…唯人にはその声は届かない所を見ると、特に何してくれるという訳でもなさそうですなw

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