その8 ~ハワイの謎 その5~
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- 代々木ダンジョン・カナデサイド -
〔くっ…替え玉を用意してやがったとは…だが、人質として利用はできるな〕
〔あぁ…ジャパンの自衛隊の事務という身分だそうだが…これだけの上玉だ。見殺しにはせんだろ〕
(…矢張り、アソ連邦の雇った傭兵というのは嘘ではなさそうね…)
見張りとして2名を残して公園の管理事務所跡を根城にした傭兵たちが私から奪った身分証を見て弄んでいる。訛りが酷いというか…英語に慣れてない所を見ると…
(元ソ連の兵かも知れないわね…)
取り敢えず、自らの脳みそにメモを追加しつつ、カナデは見張りの人間の一挙手一投足に注意を払い、気付いたことがあれば記憶することに注力していた…質問をされても
「ワタクシ、エイゴはワッカリマセーン」
という振りをしつつ…
・
・
そして捕らえられてから2時間程が経過した頃…
〔ホワッ!?…外が想像しいぞ…おい!〕
〔ああ…此処は俺が見ておく。外を見てくれ!〕
と、元ソ連兵(仮)の片割れが外の様子を見に出て行った…
(風が強く?…それに何か大きなモノが歩くような地響きが…まさかっ!?)
此処は…元代々木公園だ。今は多くのエネミーが闊歩する代々木ダンジョンと呼ばれる地…。昼間でも尚暗く、エネミーが時折闊歩する曰く付きの土地だ。ハンター資格者で且つ実力がある者ではないと足を踏み入れないのだが…
(この重さ…ひょっとして…
既に時刻は夕闇を通り過ぎて夜といっていい時間帯だ。建物の外にはエネミーが闊歩していてもおかしくない。月の明かりも今は遠く…ましてや木々が深い森の中のような代々木公園ではエネミーといつ遭遇してもおかしくない。
〔マイガッ!?〕
ガァン!ガァン!ガァン!………
銃声が響く。音の響きからしてマグナム弾装備のハンドガンのようだが…
(
〔ガアアアアアアアアッッッ!!!…〕
絶叫が響き、その後は濡れた肉が引き千切られた音が聞こえ…地面を踏みぬく音と濡れた肉が飛び散る音が響く…そして。
〔まさか…あいつが…殺られた、だと!?〕
(…)
錯乱気味の見張り。こちらに気を引かぬように黙っていると、
〔お前だ…お前が奴を殺ったんだっ!!〕
どういう責任転嫁か…恐らくは私が居なければこんな任務を任されることはない…という考えに至ったのかも知れない。かといって責任を取れといわれても相手は人智の及ばないエネミーだ。あいつらはこの世界に顕現した状態でこちら側の生き物全てに敵意を剥く。犬畜生だろうが、爬虫類だろうが、人間だろうが…かといって、学の無さそうなこの若い兵には理解が及ばないだろう…ましてや今は錯乱気味の様子…
(はぁ…花子ちゃんの母親の代わりを買って出た時点で、私の命運は尽きてたのかもね…)
ガァン!
1発目。腕が震えているのか、頭上の遥か先に弾丸は逸れていった…跳弾しなかったので弾丸は壁に埋まってるみたいだ。
ガァン!
2発目。構え直して射線を修正。今度は頭部の眉間と同じ高さを通過…右に逸れてったけど…縦のブレは抑えたけど左右のブレはまだ抑えきれてないみたいだ。
ガァンガァンガァン!!………
全弾外れ…とはいかなかった。2発は外れたけど、1発の弾丸が右肺を貫通…背後の壁に叩き付けられ、壁がその勢いでひび割れた。肺から血流が流れ出て…壁と床が赤に染まる…
「かっ…はっ…」
ずるずるずる…
どしゃりと、床にずれ落ち、動けなくなる。
(マグナム弾かと思ったけど…口径が大きいだけの弱装弾か…)
マグナム弾なら、当たるだけで大怪我。肺なんかに撃たれたら片肺が全部持ってかれて即死するかも知れない。恐らくは…口径が大きいけど装填火薬が通常弾並みの大怪我をさせるけど動けなくする為の特殊弾なんだろう。尤も…
(当たり所が悪いと…死ぬわよね…これ…)
右肺に大穴が空いて血がどんどん流れているのがわかる。放っておけば数分で意識を失って10分もすれば死に至るだろう…多分。何でこんなに冷静なのかわからないけど…
〔ガッデームッ!〕
ガチッ!ガチッ!ガチッ!
装弾数は5発か…見た感じ、リボルバーで6発装填式のシリンダーなのだろう。暴発予防の為に1発は抜いている…と。でも、こんな豆鉄砲じゃ人間やスモールなら兎も角、ミドル以上には辛いモノがあるよね…
〔ダムッ!〕
床に銃を投げつけて…あ~…トドメをサソウと音を鳴らして近付いてくる男…
(そんなに音を鳴らして歩いてたら…)
バキャアッ!!
一瞬で天井と壁の上部分が大きな何かに、横から強引に引き千切られたかのように…
ぐらり………バタッ…
怒り心頭で歩み寄っていた男は…上半身を…腹から上を周囲の壁と同じ高さで喪い…倒れる。
ぶしーーーっ…
腹から臓物がぶちまけられ、壊れた水道管のように血が噴き出し…いずれ止まる。問題なのは、私も同じように殺されるまで秒読みかも知れないか、出血死で数分後には矢張り死んでしまうかだが…
(はぁ…同じ死ぬならこの男と同時に死んだ方が…恐怖を感じなかったということでしょうか…)
ずん…ずん…ずん…
ちゃっちゃっちゃ…
〈KiEEEEEE!!!〉
〈GuRURURURU…〉
重低音の響く喉声っぽいラージ種と、犬っぽい足音と共に近付いてくるこれまた犬っぽいスモール種のエネミーがこの建物を囲っている事実だけが…死に掛けの私にもわかる、死神たち…ということなのでしょう…
「はぁ…」
こんなことなら、もうちょっと遊びたかったな…と思うのは罪でしょうか?…いえいえ、勿論、火遊びみたいな内容ではなく…
「年頃の娘さんみたく、色々とお友達と遊び歩いてみたかったな…」
もう、目の前は徐々に色褪せていて…血が少ないのかも知れません。思考も回らなくなっているようで…走馬灯が見えて来たような…
〈〈〈GuAO!!〉〉〉
犬型エネミーの掛け声に、一斉に死に体のカナデに飛び掛かる!…一部は下半身だけになったアソ連邦の傭兵の男に跳び付いて肉を噛み千切って食していた…
エネミーには食欲は無い。生きているモノをいたぶり、殺してまわる本能があるのみだ。
研究者の誰かがそう定義付けていたが…実はそうではない個体の存在も確認されていた。所謂、こちら側の生き物に取り憑いたエネミーは、取り憑く動物の生前の行動パターンを踏襲する場合もある。
食欲
性欲
睡眠欲
これら3大欲求の本能に従う個体も少なからず存在する。
今、男の死体にむしゃぶりつく個体がそうなんだろう…なんて、死ぬ直前だというのに、何を検証しているんだか…
「あぁ…」
涎が口から溢れんばかりに、飛び掛かってくるエネミーも、本能に従っているのかしらね…
私は目蓋をそっと閉じ、これから襲い来る死の痛みに耐えるべく…体に…力は入らないけれど、力を入れようと息んだ…
・
・
おかしい。
さっきから痛みに備えているのだけれども…
(…?)
数秒なんてあっという間の筈。
だけど、痛みは襲って来ない。
(おかしいわね?)
ひょっとして…痛みを感じるまでもなく、一瞬で死んじゃった?
私は2度と開くことのない筈の目蓋をそっと開けた。
(…え?)
目の前には聖剣。
え?…セイケン?…は?…え?
確か、高円寺支部の使えない遺物ナンバーワンの…あの聖剣!?
と考えてたら、目前の聖剣からやや不安定に光が明滅する。まるで、
失礼な…あんたを助けたのは俺なのに?
…と、不機嫌さを隠さないで言外に不満を叩き付けるように。
…え?助ける?
私は先程から痛みを感じない体に違和感を感じ…恐る恐る右胸を見…触れる。
痛クナーイ!
そんな某CMのキャッチコピー(なのか?)が脳裏を過ぎるが…穴が空いていた筈の右胸は、サラリというかツルリというか…怪我が最初から無かったかのように。だが、服に空いた穴はそのままだし、滲んだ血も残っていた…
床にも壁にも大量の血がこびりついており、立とうとすると貧血のようにクラっとして立てそうもない。
「怪我は…本当にしてたようね…」
ヒィン…
だからいっただろう?…俺が治してやったんだと!
そんな台詞が聞こえたような気がしたが、目の前には聖剣が明滅してるだけだ。聖剣はその光でエネミーから私を護っているようで…スモールもラージも近寄ってはいない。
「痛っ…」
節々が痛むけど、聖剣の治癒の力は右胸貫通した銃創と肺の治療だけに留まり、イカレた鼓膜までは治療してくれていない…恐らくは
僅かに聞こえてくる音と、地響きで近くで戦闘してる…というのはわかるし、聖剣の守護の場所を動くのは感心しない…というのもわかる。だけど、報告義務というのがある私は…周囲の状況を見ておく必要がある。だが…
「カナデさぁ~ん!!!」
どぼぉっ!
…と、頭を壁の上に出した途端に跳んで来た花子ちゃんの、ダイレクトボディプレスは回避できず…意識が闇の中へと墜ちて行ったのは…私のせいじゃないと声を大にして絶叫したい。本当、マジで…orz
- 代々木ダンジョン・花子サイド -
〈マスター。エネミーです〉
「ええっ!?…こんな時にぃっ!!…数と種類は?」
囚われの母親を奪取しようと静かに飛行していた
〈ラージ3にスモール10です。細かい種類も報告しますか?〉
「えっと…人型とか動物型とかそういう奴?」
〈はい〉
取り敢えず頷くと、ラージは恐竜型で体高3mのラプトルという恐竜種。この時代には存在しなかった恐竜なのには驚いたが、別の次元にはまだ存在していて、その資質を吸収したエネミーだと説明を受けて納得する花子(というか納得しないと話しが進まないと判断)
〈スモール種はこの地にも存在していた大型犬です。犬種はドーベルマンと呼ばれるモノに酷似しています〉
「あぁ…金持ちの番犬とかにもよく飼われてる
花子の生前というか…前世ではよく道路を歩いているだけなのに吠えられて肝を潰してお世話になった…と、心の中でボヤクが…ブラックは敢えて黙っていた。それが彼…否、彼女のトラウマを刺激しない優しさというものだろうと理解して…
取り敢えず降下を始めるブラックだが、異次元からこちらへと現れたエネミーたちが迷うことなく行動を開始する。普通ならば暫くその場でうろうろしてから、目標を設定し…ゆっくりと移動を開始するのがパターンなのだが…
「やばい…母さんが拉致されている建物に…急いでくれ!」
〈了解しました〉
大型故に体重が重いラージが鳴らす地響きに、目標の建物から1人の男が姿を現し…銃を乱射。だが、
「ぎゃあっ………!」
3発の銃弾を撃てはしたが、スモールである
〈…こちらではあのような食べられ方がスタンダードなのですか?〉
まるで肉体を喰われるのが普通ではないみたいないい方なのだが…
「いや…食べられること自体が普通じゃないな。殺されはするが…」
スクリーン越しなので現実感がまるで無いのもあってか、普通に受け答えしてしまったが…見ている間に男は骨も残さずに平らげられてしまった。
「あ…やべっ…このままじゃ母さんがっ!」
〈おっと、そうでした〉
ブラックが忘れてた!…と視線を建物の方へ向けると、ラージであるラプトルみたいな見た目の大型恐竜が尻尾を振って建物の壁を吹き飛ばした所だ。まるで、でっかい刀剣を振るったように綺麗…って程ではないが、建物は半ばから吹き飛ばされ…奇跡的に壁の下側は綺麗に残っていた。そして…
〈GYAU~!!!〉
〈GURURURU!!〉
と、スクリーンに映っていた男の下半身だろう死体へと群がる
「母さんは!?」
〈丁度死角に…あ〉
「あ…って何だよ!」
〈不味い状態です。胸に穴が空いて…出血が酷いようです〉
「えぇ~っ!?…今はあんな見た目だけど元老婆に胸に穴ぁ~っ!?…死んじまうじゃないかっ!!」
〈あ、ちょっと!マスター!!〉
ブラックの静止も聞かず、花子は外に飛び出て聖剣を取り出し、ありったけの魔力を…無論、
「いいか?…あそこで倒れてる女性を救え。胸に穴が空いていて出血してるからそれの治療と失った血の回復と、エネミーの接近を許すな。いいな?」
花子は聖剣が頷いた…了承した気がしたので、そのまま当たりを付けて投げ飛ばす!
ぶぅ~ん…ざくっ!!
そのまま飛翔先を補正しつつ、聖剣は女性の元へ…花子の母親ではなく、その正体はカナデだが…飛び、床へと突き刺さり結界を張る。そして治癒を開始…カナデと聖剣の邂逅は…無言だったが、先に書いた通りだ。つまり、聖剣は花子の命令を忠実に実行し、カナデの命を守り切ったという訳だ!
・
・
「さて…あっちはこれでいっか。じゃあ…いっちょおっ始めますか…変・身・!」
ざあああああああっっっ!!!
ダークマターが半径10kmという範囲全てを漂う闇の靄が一点に集中する。代々木ダンジョンに存在する全てのダークマター…それは、そこに存在する木々、建物、地面、空間、お構いなしに染み込んだそれを無理やりに、強引にはく奪する…そして!
「魔法少女花子…見参!」
…と、吸い込んだダークマターの量が多過ぎたのか、ひらひらが過剰演出されて、夜なのにいっきに黒を持ってかれた代々木ダンジョンに生まれた空白地帯が目に眩しく…光り輝く衣装の光も相まって、花子がライトアップされていた!(いや、別に光源もそういう施設もないけどね?w)
〈〈〈GURU…!〉〉〉
〈〈〈KiE…!?〉〉〉
〈エネミーが怯んでいます。一気にトドメを!〉
エネミーたちが怯んでいるとの忠告の元、母親が大怪我をしたと思っている花子は時間を掛けたら不味いと思い込み、大技を出す判断を下す…それはっ!
「わかった!…行くぞ…ホーリー・ビッグ・バン!!」
ジャンプ一発、凡そ20m程上空へと跳躍した。そして、体が白色を纏い…更に青白く光りだし…見た目には青白い爆発と化していた。人間であれば直視しても眩しくはない光。網膜では捉えられない波長の光だが、別に紫外線や電波といった類ではない。赤外線でもない光はエネミーにだけ影響を与えるモノだったのだ。
〈〈〈GUAAAAAA!?〉〉〉
〈〈〈KiSYAAAAA!?〉〉〉
2種のエネミーたちはその光をモロに受け、その体を崩していって…最後には欠片も残さずにこの世から消失した。エネミーは物理で倒せば少なからず、その存在証拠として何かしら残すのだが、この聖なる光を浴びると…何一つとして残さず逝くのだ。それは…エネミーの存在を消す攻撃であり、再出現はしなくなるのだが…未だ消した数は全体の数と比べては分母が大き過ぎる為に実感は湧かない。
(100億の内の10を消しても実感が湧く筈も無いよな…)
…そういうことである。実際には100億では効かない数だろうが…
・
・
〈聖剣から連絡があった〉
「何て?」
〈助けた女性は息を吹き返したそうだ〉
「かっ…母さん!!」
〈ちょっ…落ち着け、花子!〉
とまぁ、ブラックの静止も聴かずに花子は20mの高さからダイブアタックを敢行し…後は先の話の通り。気絶に至らせたのだった…ヤレヤレ。
- 事後報告 -
「…以上が、山田花子の母親、
「そうか…ご苦労だった。カナデくん」
「いえ、事後報告で申し訳ありませんが、これが区民の安全を守る本官の使命ですので」
物凄く…他人行儀のカナデさん…
「山田くんの話しでは…その…致命傷を受け、治療したと聞いたのだが…」
「確かに右肺を貫通する銃弾を受けました。一時は死を受け入れ掛けましたが…」
ちらと花子を見るカナデ。
「彼女の聖剣に依って、命を繋ぎ留めました…感謝しても仕切れないくらいです」
「なっ…聖剣に、だと?…それはっ」
「詳しくは報告書に纏めてあります。後で読んで下さい」
思わず…といった具合でカナデの両肩に手を置いたダンだが、連れなくスッ…と後ろに引いて躱すカナデ。そしてもういうことは無いと花子の腕を引いてダンの執務室を去るカナデ。
「…」
ダンは追撃しようとしたが空しく躱され、仕方なく報告書を読み始めるのだが…
「な…何だってぇ~~~っ!?」
と絶叫を上げて部下たちから「うるさいっす!」と総スカンを喰らうのだが…その報告書には上に報告を上げて指示を伺うべき内容が書かれており、花子が益々世界から狙われる原因となるのだが…今はまだ誰もそれに気付くことはなかったのだった…
- 花枝さんのその後と、アソ連邦の顛末 -
「母さん、その…何というか」
「いいのよ。別に暮らしに不自由を感じないし…」
と、高円寺支部の広大な敷地の中…寮があることを初めて知った花子。母親である花枝は寮の一室を借りて過ごしていた。無論、女性寮であるが…隊員に頼み、家にある私物でどうしても必要な物を持ってきて貰い、消耗品は買い足して揃えていた。無論、家は封鎖して誰も入れないようにしてあり、時々隊員が見回りをしているそうだ…
「しかしいいのかな?…他にも保護すべき人なんて幾らでも居ると思うんだけど…」
花子はうちの母親だけ優遇されていると思ったが、
「いいのよ…花子ちゃんが他国に取られたら何されるかわからないのよ?」
と、花枝と一緒に家事を無言でやっていたカナデが口を挟む。先日花枝の代わりに拉致された後、死にそうになったと聞いて泣いて謝ったのが関係しているが不明だが…心理的に家族みたいな心の距離が近くなったような…要は親しくなっていた。うむ、わからん!(見た目は兎も角、心は野郎の花子なので女性の心理なんてわかろう筈もないのだ)
「そうね…花子が力を持っているってのはよくわからないけれど…それが悪用されるというのはね…」
少し考えこみ、
「これが必要というのなら…受け入れるわ。まぁ…働かなくても生活できるというのは…楽だし?」
と、花枝は結構あっけらかんというか…お気楽な性格のようだ…
(あれ~?…母ちゃん、こんな性格だったっけ?…いや、普段からよく話す間柄じゃなかったけどさぁ~…)
と、静かに混乱している花子。
(まぁ…これでひとまずは安心…かな?)
後は…日本政府からアソ連邦に対してしっかりと苦言を呈して何らかの対処を施して貰わないと…と思っていたのだが。
・
・
「え?…もう1回いいですか?」
「何も要求はしないし、処分もしない」
「何いってんですか?…もう少しで世界が…というより地球がどうにかなってたんですよ!?」
「証拠がない」
「そりゃそうですが…」
爆発して全て吹き飛んでしまっているんだ。証拠の品が残る程度の爆発なら問題にすらできないだろう…だが。
「ハワイ諸島を中心にして1000km圏内が全て吹き飛ぶような爆発ですよ?…その原因を作ったアソ連邦を無罪放免にすると!?」
「証拠が無いからな」
「そんな…」
・
・
「というやり取りがあってだな。はぁ…」
ダンが花子に愚痴を零していた。
「はぁ…普通、あんなのの証拠を見せろって…普通のカメラ設置したって爆発で吹き飛びますもんね…どう足掻いたって残りませんよ」
「だよなぁ…」
と、2人して溜息を吐いていると…
〈証拠というのは映像ですか?〉
と、いきなえいブラックから質問が飛ぶ。
「だ…誰だっ!?」
「あ~、ダン部隊長は初めてでしたっけ?…ブラック…黒壱号の念話ですよ」
自分の傍で信じられる人にだったら念話が聞こえると説明し、ブラックとは先日披露した黒い巨人のことだとも説明する。
「あ、あぁ…あのロボットのことか…」
「正確には違うんですが…まぁそれで大体合ってるのでいいです」
自分もよくわかってないことが多いので説明を諦める花子。
「それで…証拠となる写真があるということか?」
「そうですね…だよね?」
〈はい。何でしたら音声付きの映像もありますが…〉
「それって…動画?」
「マジかっ!?…ヤラセ動画とかじゃないよな?」
〈ご覧になりますか?〉
激しく頷くダンに、ドウドウと落ち着かせる花子の不思議な図に、ブラックは花子の手元にあったデカホにデータを転送した。
・
・
「…マジか」
デカホの動画再生アプリを起動して2人で閲覧している所は、怪しさ爆発ものだったが…ダンはこれこそ究極の証拠だと思ったようだが…
「山田くん、この動画データを…」
「あ、はい。メモリカードはありますか?」
「おう…これでいいか?」
と、受け取ったメモリーカードをデカホに差し、データをコピーした。
「はい、これ」
「おう、すまん…」
渡したデータは3つ。ブラック視点で写した動画かと思われたが…実は違うらしい。理解はできなかったのだが…その地が記憶している映像をデータ化したと…フォーマットはこのデカホで再生可能な形式といってたので、可能ならば他のフォーマットに落とすことも可能らしい…
「あの…」
「何だ?」
「これ…証拠として認めますかね?」
「さぁな…証拠が無いから訴えないなんていってたからな。証拠があれば動かざるを得ないだろ?」
「まぁ~…そりゃそうですが」
(そういうことをいってるんじゃないんだけどなぁ…)
花子は、この証拠の動画をどうやって撮影したんだ?…と聞かれた場合、どうするんだろう…と思ってたのだが、ダンは証拠が出て来たから出してやるんだ!…としか考えてないらしく、その後の騒動を予想できてないようだった。花子ですら予見できるのにだ…(苦笑)
━━━━━━━━━━━━━━━
あ~…結局話しが延びた(苦笑)…いや、面倒な話し合いとかはスルーするけど(ぉぃ!)
ハワイの謎、その6どころかその10くらいまで延びそう…orz(謎はアソ連邦が原因ってのはわかっちゃってるんだけどね!>読者だけ)
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