海外出張編

その4 ~ハワイの謎 その1~

山中 慎太郎やまなか しんたろうは理不尽な結末を迎え、山田 花子やまだ はなこと言う少女に転生&転性した。今世では人類共通の敵エネミーが居て、微力ながら対抗組織が存在する…元の世界ではないが近しい世界であり、エネミーという異物から人類を守る組織がある世界だった。花子は人類の敵を倒す為に対抗組織「対エネミー自衛隊」に入隊の後、自らの高い肉体性能と魔法少女に変身することにより発揮する人外となったと自覚した今…半ばやけっぱちとなってはいるが自らの生活と母親を守る為に頑張ることとなる。そして…ダブルTS少女から魔法少女にクラスチェンジした山中慎太郎…否、山田花子は…本人の意思を他所に何処の誰かもわからない意図に依り、本人が気付かない内に身体を張った実験をさせられるのであった…

━━━━━━━━━━━━━━━


- 今日は何故か海外出張… -


「~♪」


「ご機嫌ね、花子?」


「うん!…だって初めてだし、ね?」


「海外出張だっけ?…何処の国に行くの?」


「えっと…多分、アメリカ?」


「そう…アメリカの何処って?」


「えっと…まぁ、余り知られてない島だっていってたけど…何処だっけ?」


「…」


機密情報なのだろうと、花子の母はそれ以上突っ込むのは不味いだろうと判断して訊こうとはしなかった。その後は終始微笑み、忘れ物は無いか?…遅刻はしないようにね?…と、世話を焼くに留めたのだった…



「確か、指定されたのは此処だよね?」


場所は神奈川県の厚木基地前だ。此処は海上自衛隊の航空基地だと記憶していたのだが…


「アメリカ…軍?」


アメリカの国旗がはためいた。花子は


「あれー?…此処で合ってるよ…ねぇ?」


と、支給品のデカホタブホでメールを開いて確認する。勿論、添付された地図も開くが…


「やっぱり間違ってないよな…」


と、再三確認するも、間違いではないと確認するのみだった。その内に集合時間になってしまい、(どうしよう?)とオロオロとしていると厚木基地の通用門が開き、数人の軍人らしい人が出てきた。


(うわっ!?…どうしよう…怪しい動きをしてたからお咎め!?)


パニックに陥った花子が頭を抱えていると、スマイルを見せた軍人がこう問うてきた。


「ナイスミートユー。ミス・ハナコ=ヤマダさんでしょうか?」


※作者は英語5段階評価で1~2なので英語はようわかりません。ので、妙な使い方をしていたら突っ込むか生暖かい目で見守って下さい…orz(また、現実世界とは違うのも仕様なので突っ込まないで頂けると有難いです…)


………

……


結論からいおう。集合場所は此処で間違いではなかった…が、前世?と違う基地にパニクってたのも事実だ。


「ハッハッハッ…愉快なお嬢さんだ!」


「あ、いえ、その…」


まぁ17歳の身体なのでお嬢さんというのは間違いではないが…その心は50代のおっさんなので乖離が半端無い。花子は愛想笑いを浮かべながら困っていた。いや、集まって来てくれといわれて来た場所が基地だったので戸惑っていたと素直に思ったことを述べただけなのだが…


(何処に愉快要素あるんだろうか?)


と思わないでもない。


そして、案内されながら集合した理由を…基地に入り、建物の中の廊下を歩きながら説明を受ける。その内容とは…


「とある島に赴いて貰い、闇の靄を消して回って欲しい」


ということだった。もし、エネミーが発生していたら、それも対応可能ならば消して欲しいとも…


………

……


「このヘリで現地まで?」


「そうだ」


ヘリの発着場には大型の輸送ヘリが既にローターを回して待機していた。


「日本ではこういうのでしょう?…ご武運を…と」


「…はい!」


そして、花子は…山田花子は軍用の輸送ヘリに乗り込む。後で知ったことだが、ヘリはボーイング社の「CH-47 チヌーク」というらしい。人1人運ぶのに大袈裟だなぁ…と思ったが、まさか…


「1箇月も…ですか?」


出張期間は1箇月であり、その際に掛かる食料や水も積んでいるとのこと。無論、軍用の衣服だが着替えなども含み、また拠点として1人用の簡易住居を積んでいたと…え?…何…俺1人だけ置いてけぼりなん?


「では、ご武運を…」


バタバタバタバタ………


アメリカ領の何処ぞの無人島に1人…山田花子は各種備品と共に置き去りに…いや、ヘリの乗務員である軍人さんたち(パイロットを除く2名)が、テキパキと簡易住居(プレハブに似てるけどどちらかというと簡単に設営できる硬いテント?)を組み立てて台風でも吹き飛ばないようにと地面に固定して、その中に食料やら水タンクやらを運び込んで…


「えっと…」


それまでの2時間を反芻…いや、思い返しながら考える。余りにも突然の事態を飲み込み切れてない灰色の頭脳が…やっぱ追いついてないよね?…ハァ。


「つまり…」


無人島で1箇月暮らすこと…それはいい。


無人島は結構広いらしいけど…人が居ないらしい。大事なのはその前にされた説明だ。


「エネミーのせいで無人島になったってこと」


つまり、この島は…前は人が住んでて…エネミーが現れて無人島になったってこと…


「昔は…結構観光客が来ていて…アメリカにとっても観光客の落とすお金で潤ってたって…」


ちなみに、此処は海岸から10km程奥で、元々あった人の住む場所からも10km程離れている、何も無い場所…らしい。何も無い場所ってのは…エネミーの元である闇の靄も発生し難いそうだ。生物が全く居なければそもそも闇の靄が発生しないってこと。


「デカホデカホ…電波入ってない!?」


つまり、基地局も破壊されてるか通電してないからそもそも電波が飛んでないんだろう。


「緊急時の衛星電話モード…こっちは大丈夫か」


地図アプリを起動して現在位置を表示させる。そして確認する…此処は…この無人島の名は…



ぽてぽてと歩いていたら、闇の靄が薄く漂っていたので吸収する。暫く歩いていたら変身可能な程度には吸収できた。でも、飛べるには足りない。


「…エネミー」


小型エネミースモールがわらわらと集まっていた。集団の真ん中にダッシュして数匹を纏めて蹴り飛ばし、聖剣を抜いて軽く回ると…それだけでスモールの一団を斃す。


「吸収…」


スモールたちが倒れ伏して漂い始めた靄を吸収し、変身してないままに第2段階に突入したことに気付く(エネルギーレベルが第2段階に突入したということ)


「飛翔…」


ふわ…と宙に浮く花子。貸与された軍服のままに宙に浮く様はワイヤーアクションを連想させるが…空には何もない。レベルが100を突破した時点で、花子は吸収以外に…エネルギーレベルが0より上に達した時点で「身体強化」が。レベル1以上に達した時点で「飛翔」の魔法を扱えるようになっていたのだ。尤も、飛翔は宙に浮いた状態で常時エネルギー消費をする為、余裕を持たせてないとすぐに効果が切れるので安全を考えると仕方ないのだ…


(魔法少女の落下死とか洒落にならないし…)


一応、エネルギーレベル2から1までの間、戦闘しながらでも1時間は余裕なので速度を出さなければ数時間は漂っていられる…というのは確認済みだ。


「やっぱり…此処はハワイの…」


オアフ島だと、呟く。あちこちに破壊された残骸があるが…一番近い廃墟は空港だった。爆発炎上したらしい飛行機の残骸があちこちに散らばっている。空港のターミナルビルなども半ば崩れているが…何やらもぞもぞと動く影が見えた。


「エネミー?」


建物と比べるとかなり小さい影は…恐らくスモールに分類されるものだろう。軍隊…いや、群体と思える程の数が蠢いている。少なくとも数百…いや千を超えるかも知れない。


「これ…軍隊で一掃しようと思っても…無理じゃ?」


基本的に高火力で群れを一掃しようとしても、どうしても何割かは斃し切れずに残ってしまう。そして取り逃がしてしまうと次の機会に同じ火力で殲滅しようとしても…薬で治そうとしても抵抗力を得たウイルスに効かなくなるみたいに…更に強い火力でないと斃せなくなる。


確実に殲滅しようと思うなら、1体1体を近接武装で斃して行くに限る。若しくは…


(周囲の被害を考えず、いっそ核ミサイルなどで…って!?)


花子は気付いてしまう。それは…


「俺は核弾頭ってことかっ!?」


しかも、放射能を撒き散らさずに済む…とまぁ、そういうことだろう。


日本の山田花子は…米軍の要請を請け…対エネミー自衛隊・高円寺支部より高額の出張費で遠征をしたということに…「ハワイ6島奪還作戦」の主要駒として出陣したのだった…


「んな出張要請だったら、誰が来るかーっ!?」


怒鳴っても泣き叫んでも最早作戦は始まっているのだ…放たれた矢は、目標に向かって突き進むだけであった…!


………

……



- 作戦目標 -


「…はぁ~~~~………」


重く長い溜息の後、


ざぴっ


と通信機から着信を示すシグナルが鳴る。


「はぁ~い…」


投げやりにスイッチを切り替えてマイクを取る。一応、使い方は教えて貰っている。


「もしもし?」


電話ではなく、トランシーバの大型機だが応答としては特段問題は無い。


「ミス・ヤマダ?」


「はぁ~い…あ~、イエス…かな?」


やる気マイナスモードの花子はかったるそうに返すと、


「WiFiでタブレットフォンに通信が可能になる。それでメールを受信したまえ。メールで指令が届く。以上だ」


ざぴっ


一方的に指示されていいたいことをいったら通信が切れた。エネミーが傍受するとは思わないけど、短く通信するのは軍隊の性なのかも知れない…


「んーっと…あぁ、これかな?」


大型通信機に「WiFi」と刻印されたボタンがあったので押し込んでみる。押し込むと引っ込んだままになり、もう1度押し込むと元の位置に戻るので、押し込んだ状態にして固定する。


「…お、来た来た」


デカホにWiFiのアイコンが有効になり、傍に居ると100%の電波強度になったのでWiFiモードをオンにして待機する。するとメールが受信されて…2通が未読となっていた。



【対エ高円寺支部】

From:段田 弾(ダンダ ダン)

To  :山田 花子(ヤマダ ハナコ)

---------------

拝啓


初めての海外出張で疲れていると思うが…

半ば騙した形になって申し訳なく思っている。

山田なら大丈夫だとは思うが…無理はせず、疲れたなと思ったらすぐ引き返すのも勇気だ。

期間は1箇月だと聞いているが…「これ以上は無理だ」と感じたらすぐ上申するのも、また勇気だ。

無理して死んだら元も子も無いからな?


じゃあ…無事に帰って来い。お前の帰る場所は…こちら(日本)だからなっ!!


ダン

---------------



(…)


この分じゃ部隊長ダンさんは殆ど何も聞かされてないんじゃないか?…と思えてならない。部下に本当のことを報せず、上層部だけで勝手に決定して…って奴?


取り敢えず、次のメールを開いてみる。



【アゲインストエネミー・カルフォルニアチャプター】

From:ジョセフ・グレーツ

To  :山田 花子(ヤマダ ハナコ)

---------------

(※和訳済みです)


命令である


ハナコ・ヤマダに明朝06:00よりオアフ島奪還の命令を下す。


まずは「ダーク・ミスト」を全てを「吸収」に依り一掃すること。

次に「エネミー」を殲滅すること。

最後に「元凶」を消すこと。


1個月と期間を示されていると思うが、それまでに命令を遂行・完遂すること。


失敗した場合は…遺族には彼女は立派だったと伝えることを約束しよう!


では、健闘を祈る!


ジョセフ・グレーツ

---------------



「…」


ギシギシ…


何度デカホを握り潰しそうになったか…ギシギシと音を立てた所で鋼の意思を以て止めた自分を褒めたよ…もう褒め千切り捲りだよ!!


「ゼハーゼハーゼハー…はぁ」


取り敢えず、ダンさんにメールを打つ…何て書いたって?


「俺は高いよ?」


とだけ書いて送ったった。それだけじゃ意味わかんないだろうけどね…取り敢えず。


………

……



- オアフ島奪還 -


「はぁ…俺みたいな特殊能力者とか居ねーのかね?…アメリカとか外国とか…」


世界は広いんだから1人や2人くらいは居そうなもんだと思っていたけど居ないのかもしれない。若しくは…居るけど出し惜しみをしているか…


とりま、日の出と共に出陣。闇の靄のエネルギーレベルは殆ど未使用の為、改めて吸収しなくとも問題は無い。昨夜は周辺探索のついでに雑魚のスモールを斃して吸収しか行っておらず、エネルギー放出攻撃などは行ってないからだ(流石に少し飛びはしたけども…)


「じゃあ…行くか」


目指すは雑魚がやたら多い空港跡。どーせ廃墟然としてるのだから…残しておいても建て直すのに邪魔だろうし、綺麗さっぱりと吹き飛ばしても問題無いだろうし…


「…という訳で走って来たけど…」


空港の滑走路はあちこちボッコボコで穴だらけ。VTOLじゃないと使えないだろう。STOLは場所を選べば或いは?…といった感じだ。


同様に管制塔もガラス全損で中はここからじゃ見えないが機械類は破壊されてるんじゃないかな?…と思う。現にそこらに転がってる車両類はボコボコでとてもじゃないが走れる状態ではないのしかないし、酷いのになるとペチャンコに潰されて煎餅自動車になっている…


「うわぁ…これ、どう見ても超大型エネミーヒュージの足跡だよな?」


その足跡を見ると、空港のターミナルビルから伸びて海へと続いている…


「…他の島に渡ったってことか?」


空恐ろしいことだ。ウルト●マンサイズの怪獣が現実に海を渡って襲って来るとか…空想の中のお話しなのだが、この世界では現実なのだ…


「…はぁ、取り敢えず片付けるか…」


いつの間にか闇の靄が濃くなっており、まだ朝だってのに薄く墨汁を流し込んだかのような空に…多数の小型エネミースモールとやや少なめに中型エネミーミドルが十重二十重と囲んでいた…いや、囲まれていた。


「…」


遠くから通信機越しみたいな声が聞こえた気がしたが、構っていられない花子は…


(変身したいが…ひらひらを維持するのにもエネルギー喰うんだよな…攻撃力は上がるんだけど…)


要は、魔法少女コスを維持するのにコスパが悪い…ということだ。仕方なく、花子はコスパを重視し…軍服の儘…戦闘開始することにした!


「身体強化!」


「聖剣召喚!」


ぽわっと身体を魔法の光が覆い、身体能力を上昇。そして聖剣を召喚してその手に持ち…構え、


「行くぜ!おらぁ~~~っ!!!」


と、何処ぞのヤンキーの如く…独り斬り込み隊長するのだった!



特攻を仕掛けてから凡そ5時間が経過。


花子がぜーぜーと息も荒く…だが、2本の足で立ち、聖剣を杖のように身体を預けてはいるが…生存。


敵であるエネミーは…残存ゼロ。


闇の靄は全て吸い尽くし、エネルギーだけでいえば満タンである。否…途中から、吸った闇の靄を吸い過ぎた花子は思わず吐きそうになった為、仕方なく「変身」していた…少しづつではあるが消費しないと身体がもたないと判断したからであるが…唯、変身してから以降…何処からかは不明だが、背筋がぞぞぞ!…とするような悪寒を感じていたのは確かだ。


「さて…後は…ボスか…」


やや体力が戻って来たので、地面に突き刺した聖剣を抜き…歩き出す花子。



ザピッ…


【ボス…コードネーム「プリティーガール」が動き始めました!】


【オケィ…引き続き、監視せよ】


【ラジャー!…余すことなく、プリティガールの御姿を上下左右360度撮り続けるネ!】


【アホか…だが、それがお前の使命だ。使命を全うせよ】


ザピピッ…


交信は短時間ではあったが、花子が勘付くには十分であった。



「何か妙な視線を感じたなぁ~…しゃーねぇ…」


日本を出発する時に特別にと支給されたとある装備をオンにする。全ての電波・光波を遮断するステルス装備だ。但し、花子のボディだけに限定するので視界を遮断するには至らない。それに攻撃性のある光線はやや減衰するだけでバリア的には使えないが…使用目的は主に花子のエロ可愛い姿をカメコする目的からの保護であって戦闘には余り役立たない。


「ま、これで安心ってことで…」


傍目には真っ黒なテクスチャが貼ってるようになった花子は、ボスであろうエネミーの位置まで急ぐのであった…


【ノォッ!ガッデームッ!!オーマイガッ!!!】


…と、泣き叫んで血涙を流すアメリカ国籍の兄ちゃんを置き去りにして…w



- オアフ島・中心地 -


丁度そこには何故か存在しない火山が鎮座していた。実際には噴火してないので火山とはいえないのかも知れないが…飛翔し、上から覗き込むと…まるで溶岩のように色付けされたっぽい水のような液体?が噴火口にあったのだ。


「・・・」


花子は聖剣を向けて、おもむろに光弾を発射してみた。すると…


ざばーんっ!


かっ!…どがーんっ!!


ごぉーっ


まるで底が破壊され、そこから水が抜けるように溶岩色した液体が吸い込まれて行く…


「水じゃん…赤黄色く明るめの着色された…」


着地しても全然熱くなく、底が抜けたプールの底みたいな火口には…見回すと出入口があった。元々水面だった周囲には水蒸気発生器みたいな機械があり(今は破壊されて水蒸気は発生させてないようだが…)、緩い階段の向こうに両開き式のドアがあった。エネミーの本拠地にしては…


「人でも出入りしてたのかね?」


と思えそうな感じではある。


取り敢えず花子は階段を降りてドアに手を掛ける。


ぎいいぃぃ…


特に鍵は掛かっておらず、押してもダメなら引いてみな…と思ったが、押したらすぐに開いた。


「…暗いな」


取り敢えず聖剣を僅かに光らせてみたら電灯のスイッチみたいなものがあったので動かすと、


ぱぱぱ・・・


と蛍光灯らしい灯りがついた。奥までは光ってないのでその境目にまたスイッチがあるのだろう…花子は聖剣の光を消し、歩いてはスイッチを押し、蛍光灯?を付けては進みを繰り返す。


「…何で、ここだけ電気が通っているんだろう?」


外は何処までも破壊され尽くしていて、電気なんぞ通っているとは思えない状況だった。人っ子1人すらも生き残ってないのだ。だが…此処には何故か電気が通っている。エネミーのボスが居るらしい場所なのに…


「何かおかしい…」


花子は何が起きても問題が無いようにと…神経を集中させる。


階段を降りて…降りて…そして最下層と思われる場所にと到着した。


「此処は…?」


最下層と思われる場所は…ガラス張りの逆ピラミッド状の部屋だった。端に寄り、下から上を見上げると…岩盤から張り出していることがわかる。そして下を見ると…かなり広い空間ということがわかる。


「…うーん。端っこが霞んで見えるけど…」


この逆ピラミッド状の部屋は、上から5m辺りで同じ材質のガラス?と思われる床があり、階段は螺旋階段状の階段が上から伸びている。まだ下が見えるが此処が最下層階ということで、階段もこの階層までとなっている。


「…横も下もかなり広いけど…あれが…ボスなのか?」


火山の火口の下の空間ならば、此処には溶岩が広がっていると思ったが…どう見ても闇の靄が広がっていているようにしか見えない。つまり…


「こんなに広範囲の闇の靄…吸い尽くせるように思えないんだが…」


と呟いた瞬間、


「HAHAHA!…ミス・ハナコ!…流石に吸い尽くされては困ってしまうぞ?」


と、何処かで聞いた調子の声が…設置されている穴から響いてくる。


「スピーカー…エネミーの技術で造られたモノ…じゃないよな」


腰を屈め、いつでも反応できるように戦闘態勢に入る花子。右腕には聖剣を持ち、いつでも動かせるように…


「そんな物騒な物で斬られては困る…だからね?」


びゅっ!


…と、床から何かが飛び出し…


びしゅっ!


「ぐあああああっ!?」


花子の右手が…手首より手前から…雑に斬り飛ばされていた!


がららぁ~んっ!


べしゃっ…


まず聖剣が落ちて派手な音を立て、聖剣から離れた右手首が落ちて濡れた音を立てて床に転がる…


「がっ!…う゛っ!…あ゛あ゛あ゛あ゛………!!」


七転八倒の勢いで転がる花子。傍目には余りの痛みに転げ回ってると目に映るだろう。


「ふっ…魔法少女とはいえ、大したことはないな?」


「痛みも抑制できない、唯の小娘か…」


と悪態を突く謎の声。


(…今だ)


花子は己の手首を取ると素早く右腕に付け…治癒する。瞬時に完全回復は無理だが、取り敢えずグッパと動く程度には神経を繋げて動かせるようになった。


「…なっ!?」


驚く声を他所に聖剣を取り寄せして…花子はガラスの壁を斬り飛ばして…大空ではなく、闇の靄の漂う空間へと…ガラス状の壁を蹴って跳んだ!


「吸収!…そして、来い!」


━━━━━━━━━━━━━━━

何を呼び寄せたのか…それは次話で知ることになります!!

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