三話

 それから町郊外の草原へと移動した。

 既に走ることによりあたりが火の海と化し、周囲の環境に大きな影響を与えることは自分でも分かっている。

 それを彼女に言いはしたものの、それとはまた別らしい。

 それと……彼女には一つ、走る際の注意点を告げられた。

「踵を上げて走ること」

 そんなたった一つの注意点だ。

 まあ、その注意点にどんな作用があるのかは知らないが、ともかく走ってみなければわからないだろう。

 俺は踵を上げながら一歩踏み出すと、徐々にスピードを上げて行った。

 周囲が閃光が走ったかのように砕け散り、風が舞い、炎が上がる。

 一瞬、瞼に砂煙が当たり、俺は瞼を擦った。

 またなにかに衝突しないようにと目を再び開くと、そこには見たことのない光景が広がっていて、俺は思わず驚き、足を止めた。




 ……先程いた場所とは……否、世界とはまた違う、荒廃しきった世界。

 見渡す限り、周囲に村などがあるようには思えない。

「驚きましたか?」

 草陰から出づるミンデローナに多少驚きの表情を見せつつ、俺は彼女に問いかける。

「ここは……?」

 俺の問いかけに彼女はニンマリと微笑んだ後、こう答えた。

「ここは、2年後のあの世界です。」

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激速勇者〜足の速さだけ強くしてたら魔王に狙われました〜 柊木緋楽 @motobakaahomaker

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