虹色の雲と色んな雲
仲仁へび(旧:離久)
第1話
とある空に浮かぶ雲。
その雲は、虹色の雲です。
白くはありません。
だから周りの雲とは違っていました。
でもずっと見ていると、なんだか賑やかな気分になれたので、他の雲はその雲を受け入れる事にしました。
「一緒にいると楽しい気分になってくるわ」
白い雲の仲間に入れてもらえた虹色の雲は嬉しい気持ちでいました。
その虹色の雲は、白い雲の群れと共に、各地を漂って旅をします。
旅は虹色の雲に、とても楽しい時間をプレゼントしてくれました。
様々な国で生活する人々の営みや、色々な環境で生きる動物の事などを知れたからです。
しかし、雲には寿命があります。
白い雲たちは、雨に変化し消えてしまいました。
虹色の雲だけが残されてしまいます。
「さみしいよう。誰か一緒にいてくれないかな」
一人でさすらうことになった虹色の雲は孤独に涙しました。
それから数日間一人ぼっちだった虹色の雲は、白い雲の群れを発見しました。
「仲間にいれてくださいな」
けれどその雲の群れは、虹色の雲を拒絶しました。
「変な雲だな。お前なんか仲間じゃない」
虹色の雲を置いて、白い雲の群れは離れていきます。
白い雲はショックをうけて、しばらくその場から動けませんでした。
前の群れは自分を受けいれてくれたのに、どうしてさっきの群れは自分を受け入れてくれなかったのだろう。
虹色の雲は分かりませんでした。
しばらくその場にとどまっていた虹色の雲。
しかし、その場にいても誰もやってきません。
孤独がいやだった虹色の雲は、また他の群れを探してさすらう事にしました。
すると、すぐに他の雲を見つけました。
その雲は、見たこともないほど大きな雲でした。
その雲は、優しい声で「どうしたんだい。一人ぼっちなのかい」と話しかけてくれます。
一人だけでしたが、自分を受け入れてくれる雲を見つけて、虹色の雲はほっとしました。
虹色の雲は、その大きな雲と一緒にさすらう事になりました。
大きな雲は物知りで、色々な話をしてくれたので楽しい気持ちになれました。
だから虹色の雲は、最初の群れと次の群れの事を大きな雲に話をしてみました。
すると、大きな雲は「卒業した雲の学校が違ったからだろうね」と言います。
雲の学校は、雲が育つための学校です。
小さな赤ん坊雲が旅ができるようになるまで、成長の手助けしてくれます。
色々な事を教えてくれる所ですが、学校ごとにその内容は違います。
だから、正反対の事を教えられて学校を卒業した雲たちが出会い、喧嘩が起きる事がありました。
「きっとどんな雲でも雲だよと教えられた学校と、自分達と違う色をしていたら雲じゃないと教えられた生徒達だったかもしれないね」
親のいない虹色の雲は、学校に入る事ができなかったので、そんな事があるとは知りませんでした。
虹色の雲は、全ての雲と仲良くできるわけではないと知ってがっかりしてしまいました。
それなら、群れを見分ける力が欲しいと思います。
自分を受け入れてくれる雲が分かれば、そうでない雲に近づいて悲しい思いをする事はなくなるからです。
けれど大きな雲は言います。
「全ての雲と仲良くなることはできないけれど、時間をかけて話をすれば考えを変えてくれる雲もいるだろうね。その時間があったら、すぐに仲良くできる雲を探したほうがいいかもしれないけれど」
虹色の雲は、少しだけ元気になりました。
一人ぼっちはさみしい。
だから虹色の雲は、他の雲がいたらできるだけ一緒にいたいと思っています。
仲間になれるなら、それに越したことはありません。
大きな雲が雨になるのを見届けた虹色の雲。
別れの時間を終えた後は、他の雲を探してまたさすらいの旅に出る事にしました。
虹色の雲と色んな雲 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます