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「ログを読めば読むほど、この子に対する愛は深まっていきました。

 焦れったいほど弱気で、大切なところが抜けている。わたしですらしないような失敗も平気でする。ドルヲタ要素の有無がどこまで影響しているのかはわかりませんが、やはり彼女はわたしと近いようでいて、決定的に何かが違っていました。

 すみません。正直言って、あなたとあなたのアバターのことは全く眼中に入りませんでした。よしんば入ったとしても、この子を悲しませたことに対する憤りを感じるばかりでした。

 去年のクリスマスを覚えていますか? そうです。あなたが仕事ですっぽかそうとしたあの夜のことです。わたしはログで読んだだけですが、読んでいて本当に怒りが湧きました。普段どれだけ感情を殺して生きていたかを思い知ったぐらいです。もしわたしがリアルタイムで進行をチェックしていたら、間違いなくそこで交際を打ち切っていました。あの日、この子は十三時九分にあなたから『やっぱり仕事で行かれない』という連絡を受け、あなたが(アバターですが)部屋へやって来た二十三時十二分まで、十時間ものあいだ一人で泣き続けていたのです。しかもあなたは、何度もインターホンを鳴らして、諦めたと見せかけてもう一度鳴らすなんて小細工でこの子に扉を開けさせた。その上、あんなことまで——。反吐が出ます。

 この子に人としておっちょこちょいな部分があるのも認めます。そこが魅力だとわたしは思います。でも、男性という肉食獣の徘徊する野原に放った時、この魅力はそのまま危うさにもなるのです。

 わたしは考えました。この子が最も幸せになる方法は何か、と。クリスマスに十時間も泣かせるような男とは別れるのが一番です。けど、それはわたしが外野から見たうえでの意見であって、彼女自身の希望ではありません。彼女は(残念ながらというべきか)あなたとの交際を望んでいました。あなたのことを愛していたのです。しかし、それを放っておくというのは、大事に育てたウサギを空腹のライオンの前に置くのと同じことです。

 なら、どうすればいいのか。

 わたしは猟銃を手に、ウサギの後ろに立つことにしました」


「どの道、この恋愛を成就させるためには、どこかでわたしの同意が必要となります。わたしが全くの無関係というわけにはいかないのです。

 邪魔するつもりはありません。あなたとの結婚は、この子の望みですから。この子の望みを叶えることが、わたしの望みなわけですし。

 だから、わたしはこの子の代理であなたと結婚します。

 どうかその点を承知いただきたく、今日ここへ来たのです」

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