4−2
「一つ、隠していたことがあります。アバターには反映されていないわたしの嗜好です。
わたしはアイドルが好きです。〈好き〉なんて生半可な表現をするのは耐えられない程度のオタクなんです。友人に隠せと言われて、アバターを作る時には登録しませんでしたし、元々表アカではネット検索もしていません。『あんたのその姿を見て寄ってくる男はいない』と友人は言いました。まあその通りかなとわたしも思いました。その時点で、どこか本気ではなかったのでしょうね。
対象は女の子のアイドルです。別に今時、珍しくもないと思いますけど。ちなみに性的嗜好が同性へ向いているわけではありません。ただ単純に、可愛い人に対する憧れを持っているだけです。男の子が特撮のヒーローなんかをカッコいいと思う、それと一緒です。
わたしには何年も前から推している子がいました。たぶん、言ってもわからないぐらいマイナーなグループの、しかも端の方で踊っているような女の子です。世の中的には決してスターではないけれど、日陰の中でも一生懸命歌って踊る彼女の姿は、わたしに勇気をくれます。間違いなく、わたしにとってのアイドルなんです。
すみません。話が逸れました。
何が言いたいかというと、その子に似ているんです、このアバターが。もちろん、顔に関してはわたしに似せてできていますから、本物の足下にも及びません。けど、立ち振る舞いだとか言動というのが、どこかそのアイドルの子を彷彿させるのです。
可愛い。その感情は、自分以外の他者に向けられたものでした。わたしは自分を模したアバターに自分を感じることなく、全くの他者として、それを認識したのでした。
この子は、わたしが愛を差し向ける対象なのです」
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