第6話
横浜市の中心駅を降りて、外へ出た。
赤い夕焼けがビルを照らす。
あえて最寄りの駅では降りず、夜景を観ることができる場所まで中心駅から歩くことにした。
「今日が最後、なんだよな……」
思わずつぶやいてしまう。
たてものひとつひとつが、横浜の景観を美しくする。
目線の上からながれ込んでくる奥行きのひろい風が、僕の心をさらに情緒豊かへとしてくれる。
もう二度と神奈川県や関東地方には戻ってこられないだろう。
もしみやま姉さんの手下にみつかりでもしたら、即刻拷問行きなわけだし。
「なんか……楽しいね」
「そう、だよな……」
ひうち姉さんが隣でさりげなく僕の手をにぎる。
レンガ造りの建物が、夕日に照らされてさらに赤く萌える。
これだけ美しい街並みが、日本にあるのかな。
この先関東を離れれば、横浜みたいな街に出会えるのかな。
そんなことを考えていると、やっぱり心が肉のようにジュ―っと焼かれる。
僕はみやま姉さんに負けたのだ。
絶対に勝つことができない相手。
「——ねえ丹波、なに考えてる?」
明日からどこへ行こう。
相変わらず虚ろな目をしたひうち姉さんと一緒に、どこへ行けばいいんだろう。
「デート、ってことで……いいのよね?」
「姉さん……」
僕が答えに詰まると、姉さんはさらにギュッと僕の手を握ってきた。
姉さんの両眼から、完全に光が消えた—―
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