第5話

へたしたら、もう二度と神奈川県には戻って来られないかもしれない。


みやま姉さんの顔の広さといえば、神奈川県民の10人に1人が知り合いといったところだろうか。


彼女が大衆に総動員をかければ、働きバチのようにみんなは従う。


つまり彼女がみんなに、僕たちを捕らえるよう指示を出せば――


きっと僕たちはあの監獄ハウスへ逆もどりすることになるだろう。



「腕、かして――」


目的もなくただいたずらにすすむ歩道。あははといいながらヤンチャにもひうち姉さんは僕の右腕にしがみつく。


「……最後に夜景、みていかない?」


かと思うと一転、虚ろな笑顔で僕に問いかけた。


顔がちかい。


たぶんひうち姉さんは、僕よりすこし背が低いぐらいじゃないだろうか。


「この弟、なんでわたしのことを忘れて逃げるんだろうね……」


「や、……夜景っていったら、やっぱ横浜だよね」


僕はあわてて話をもとにもどそうとする。


「そう……一緒に、みない?」


僕はうなずき3秒後、駅の方へと向きをかえる。


徐々に日は、暮れだした――

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