公園満月
僕と柊は、小さな頃に何度か来たことのある公園に居た。
二人で黙ってベンチに座っていた。
それはそうだ。あまりにも話題がない。
こんなに長く一緒にいるのは、およそ四年ほどか。
学校イベントも皆無。家は二軒隣だが、朝の登校時間も被ったことはなく、近所付き合いも皆無。だからコミュニケーションなど皆無だった。
それに、中1の冬の嘘告。
僕には耐えられなかった。
それまで柊とは付き合っていた。小学六年生のお正月からだ。今思えば随分とマセていた。
だけど、真剣だった。でも今思えば、オモチャみたいな恋愛だったのかもしれない。
二人で何かのマットに指で名前を書き、告白し合った。君が好きだと伝えた。
あまり心の中の事を上手くまとめて話すことが苦手だったことを、柊は察してくれたのだと思う。
◆
中学一年の冬のある日、同じ部活の日向からある写真を見せられた。
柊とある男の子が楽しそうに腕を組んでいる写真だった。
男の名前は
小学校からずっとサッカー部だった有吉は、文化系の僕とは真逆の住処を持っていた。だけど、クラスが一緒だったことと、班分けで同じになることが多く、自然と仲良くなっていった。
別クラスの柊のことも話していた。柊には偶に出てくる良いのかダメなのかはっきりしない時があった。特別を感じながらも、はっきりと知りたかった僕は、女心はわからない。確かそんなようなマセた悩みを話した覚えはある。
有吉と柊は互いに面識は無く、初めて二人を会わせてから何故かずっと柊は有吉を毛嫌いしていた。誰とでも割と仲良くなれる彼女にしては珍しかった。
当時の僕はなんとか上手く二人が仲良くなれないかと頭を悩ませていたものだった。
そんなある日、同じ部活だった日向にこんなことを言われた。
あの二人は僕の前で仲の悪いフリをしている。
日向向日葵。彼女は別小だった。僕には信じられなかった。だから鵜呑みにせずに、二人を観察することにした。すると、言葉では確かに邪険にはしていたが、確かに最初に比べて、言葉の角が取れていた。文化祭の頃には茶化し合いをするまでになっていた。
少しずつ変化したことで、気付かなかった。でも、単純に仲良くなったのか、そう思って安堵した覚えがある。それを正直に日向に伝えたら、覚悟を決めたような顔で彼女はあの写真を見せたのだ。
その写真は本当に女心をわからなくさせた。
僕に写真を見せた日向はとても申し訳なさそうに、こう言った。神野さん、確かめてみませんか。と。
その当時、日向に言われるがままに一週間ほど動いた。正直なところ頭が疲れていた。身体が疲れていた。
僕には演じる才能などない。へっぽこだとわかった。けど日向に言われるまま頑張ってやった。
それくらい何かに縋っていたかったのかもしれない。
登下校では有吉の悪態をつき、学校では会えば日に日に仲良くなっている。その上、写真はあれだ。
その謎に僕も疲れていたから。
結果的に、日向の言うことは正しかった。
その日。クリスマス近くのある日。お昼休憩時間に僕の初恋は砕かれた。
他ならぬ、柊自身の手によって。
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