第5話 初デート②
それからも、二人でいろいろなお店を見て回る。
そんな時、私はあるお店で目を奪われることになる。
それは、ペットショップにいた子猫で。
それが、すっごくかわいくて。
私はその愛くるしい姿に見惚れていた。
「猫。好きなんですか?」
隣で一緒に見ていた、地味子が私にそう質問する。
「うん!大好き!あ、毛づくろいしてる。かわいいー!」
私は子猫に夢中で素直にそう答えてしまう。
「猫飼ってるんですか?」
また、地味子が私に質問する。
「ううん。お母さんが猫アレルギーだから。あ、こっち見てる!ほんとかわいい!」
「なるほど。」
子猫に夢中な私とは対照的に、私を見ながらなにか考えている地味子。
それから、子猫のかわいい姿を堪能した私達は(正確には私が堪能していただけだったけど)また、お店を見て歩く。
そして、しばらくしてから私達はアイス屋を見つけた為、休憩することにした。
私はいちごアイス、地味子はチョコのアイスを選ぶとベンチに座る。
「んー!甘くておいし〜!」
アイスを一口食べると、私は感想を言った。
「はい。おいしいです。」
地味子も一口食べると感想を無表情で言う。
確かにチョコの方も美味しそうで、私もそっちを注文すればよかったかなと思っていた時、地味子が「食べますか?」と言った。
私は「食べる!」と即答すると、自分のスプーンで一口貰うことにする。
…はずだったのだけど。
地味子が自分のスプーンで一口分取ると私に差し出す。
地味子のその行動に戸惑ってしまう私だったが。
「溶けちゃいますよ?」
地味子のその一言で私は意を決すると、スプーンに乗ったアイスを口にする。
「どうですか?」
「う、うん。チョコもおいしい。」
正直、内心ドキドキしていた私は美味しいかなんてわからなかったけど、そう答えた。
そして、私だけこんな思いするのは悔しいので、やり返すことにする。
「はい。あんたにもあげる。」
私はスプーンで一口分取ると地味子に差し出す。
それを口にすると地味子は「ありがとうございます。いちごもおいしいですね。」と、一切動揺している素振りを見せず無表情でそう言うと、私の仕返しは失敗に終わる。
しかも、実はこれ。
やる方もかなり恥ずかしい行為で、見事に自滅した私はせっかくの美味しいアイスの味もわからず、しばらくドキドキすることになるのであった。
それから、時間も遅かった為、駅で別れると帰宅することにした。
その日の夜。
私は今日のことを思い出し、考えていた。
手を繋いだこと。
見つめられてかわいいと言われたこと。
アイスの食べさせ合いをしたこと。
地味子が相手にも関わらず不覚にもドキドキしてばっかだったんだなぁ。
地味子相手でこれだったのだから、恋人相手だったらもっとドキドキするんだろうなと。
そんなことを考えていると、ふと思う。
私は正直言うと、楽しかった。
ドキドキもたくさんしたし。
けど、地味子はどうだったんだろう。
ちゃんと楽しめたのかな。
デート中ずっと無表情だったからわからないけど。
楽しめてたらいいな。
って、私はなんで地味子のこと考えてるんだろ!
別のこと考えよ!
そう思った時だった。
スマホに通知が入る。
それは、ずっと更新されていなかった小説の更新を知らせるもので。
私はすぐに確認をする。
以下地味子の小説内容を読んだところまで簡単に。
タイトル『初デート』
場面①:待ち合わせ
今日は大好きな彼女と付き合ってから初めてのデート。
ちゃんとデート出来るか不安になってしまう。
だけど、待ち合わせ場所に先に着いていた彼女の姿を見ると、不思議と不安は消え、わたしの心はワクワクに変わっていた。
場面②:恋人繋ぎ
わたしは彼女と手を繋ぎたい気持ちでいっぱいになり提案する。
少し戸惑っていた恥ずかしがり屋な彼女だけどわたしに右手を差し出してくれる。
そんな彼女の優しさがすごく嬉しくて、わたしは思わず指を絡ませると、恋人繋ぎをしてしまう。
嫌がられて手を離されたらどうしようかと思ったけど、そのまま繋いでいてくれる彼女。
そんな彼女に私は内心ドキドキしながらも改めて思う。
大好きだなと。
場面③:洋服屋にて
彼女が気になった服があったみたいで試着をする。
一着目を試着するとわたしに見せてくれる。
あまりにも可愛すぎて言葉が出ない。
なんとか、かわいいよと伝える。
二着目以降もやっぱり可愛すぎて言葉が出ないわたしは、かわいいよとしか伝えられない。
そんなわたしの返事が適当だと少し怒った彼女。
わたしは理由を伝える。
それに、かわいいと思ったのは本当だからと。
全部聞き終わると、まだ怒っているのか、なにも言わず試着室のカーテンを閉めてしまう。
でも、少し顔が赤かったのは気のせいかな?
そんなことを考えていると、試着室から出てくる。
そして、商品を戻すとお店を出て行く彼女にわたしはやっぱりまだ怒ってるのかなと不安になる。
そこから、なにも聞けず彼女の後ろを、また手を繋ぎたいなぁ。と思いながら歩く。
すると、そんな思いが通じたのか立ち止まると右手を差し出してくれる彼女。
わたしは急いで手を繋ぎ直すとすごく安心する。
場面④:ペットショップにて
わたしは怒っていた。
理由はペットショップにいた子猫に夢中になっている彼女に。
わたしの質問に答えてはくれるけど、常に視線は子猫に釘付けだ。
実はうちにも猫が二匹いるけど、教えるのはやめておこう。
あぁ、だけど。
それを理由に自宅デートもしたいなと悩む。
それに、子猫に見惚れている彼女も可愛かったから。
場面⑤:アイスクリーム
歩き疲れた為、アイスを買ってベンチで休憩する。
疲れた身体に甘いものが染み渡る。
なんだか、彼女がわたしのアイスを見ている気がする。
もしかして、食べたいのかなと思い聞いてみると、どうやら正解だったみたい。
食べていいよと言うと嬉しそうにする彼女。
わたしはここでチャンスを見逃さなかった。
自分のスプーンで取ろうとする彼女より先に取ると、すかさず彼女にあーんする。
内心ドキドキのわたしだったけど、動揺する彼女が可愛くて頑張る。
ずっとこの可愛い彼女を眺めていたかったけど、溶けてきそうなので食べてもらうことに。
そして、わたしは彼女の思わぬ仕返しに合う。
今度は彼女からあーんされたのだ。
自分の時は気づかなかったけど、これ間接キスだよね。
わたし達はまだキスをしたことがなかった為、動揺しそうになる。
だけど、それをグッと堪えるとすぐに口にする。
だって、もしそれが彼女に気づかれたらやめちゃいそうだし。
正直、味はわからないけど幸せな気持ちになれたので良しとしよう。
とりあえず読んだ小説の大体の内容は以上だった。
っていうか、待って。
これ、今日のデートの内容じゃん!
そう思い、地味子に文句を言おうかと考えたけど、やめることにした。
よく考えたら、私も冬美に話す内容で、地味子の小説を利用させてもらっていたのでお互い様だったから。
それにしても…。
小説用に改変されているとはいえ、この小説が書けているってことは少しでも地味子が感じていたことも入っているのだろう。
私は無表情のせいで地味子が楽しめているかよくわからなかったけど、少しは楽しんでくれてたんだなと思った。
ま、まぁどうでもいいんだけどね!
その後、小説を全て読むと最後に書かれていた事に私は微笑んでしまう。
ー 今日はありがとう!またデートしようね! ー
と、書かれていたのだから。
それは、地味子自身が思っていることではなかったのかもしれないけど。
私は「ばーか。」と言いながら更新された小説にいいねをすると休むことにするのだった。
私と彼女の内緒の関係 たるたるたーる @tarutaru_ta-ru
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