第3話 関係の始まり③

呆然とする私。


「だめ…ですか…?」


そう言いジッと私を見つめる地味子。


まぁ、目元が隠れていてよくわからないんだけど。


それに、無表情だから本気なのかもわからなかった。


だから、私は地味子に質問する。


「あんた、私のこと好きなの?」


地味子は少し考えると答える。


「普通です。」


「いやいや!意味わかんないんだけど!好きでもない相手に恋人になってほしいってどういうことよ!」


正直、地味子にはなんの興味もなかったけど。


だけど、あまりに理解ができないことで、私はそう質問した。


すると、地味子が話し出す。


「恋人ではなく。恋人関係です。」


「いやいや!なにが違うの!そもそも、質問の答えになってないし!」


私は思わず強く言ってしまう。


「すみません。わたし話すの苦手で。わかりにくいですよね。すみません…。」


表情からはわからないけど落ち込んでいる様子の地味子。


そこからは黙ってしまう。


なんか私がいじめてるみたいじゃん…。


そんな罪悪感に囚われてしまった私は。


「強く言ってごめん。少しずつでいいから説明してよ。」


思わず地味子に優しくしてしまった。


すると、元気を取り戻したのか地味子が話してくれる。


「はい。ありがとうございます。」


地味子はそうお礼をすると少しずつ話し出す。


「恋人関係になってほしいっていうのは少し間違ってました。」


「正しくは、恋人みたいなことをする関係です。」


「その時どんな気持ちになるかどうしても体験したいんです。」


「本物の恋人同士みたいにはいかないかもしれないですが。」


「わたしには恋人を作るなんてできないので。」


と。


正直、その話を聞いて地味子に共感していた。


事情は違うかもだけど、私も知りたいから。


だけど、私はある疑問が浮かび質問する。


「それでなんで私なの?私恋人いるんだけど。」


まぁ、ほんとは嘘なんだけど。


だけど、冬美と話していたのを地味子にも聞こえていたはずなので知っているはずなのだから。


「それは、昨日下駄箱で…」


「あーはいはい!わかった!この質問は解決!」


そこまで地味子が言うと私は恥ずかしさから割り込んだ。


つまり、昨日私がつい漏らしてしまった言葉を聞いて知ってたんだ。


私が地味子みたいに恋人同士で行うことでどんな気持ちになれるか知りたがっていることも。


そんな相手がいなくて、困っていたことも。


それを知らずに、私恋人いるんだけど、とか言って恥ずかしすぎるじゃん!


あまりに恥ずかしすぎて顔が熱くなってきた。


一旦気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。


それから、もう一つ質問をする。


だけど、これによって私の秘密を知られていたことと。


地味子がどうして恋人みたいなことをした時の気持ちを知りたいのかの理由を知ることになる。


そして、それは私にとって衝撃なことだった。


「それで?私女なんだけど?女同士なのにいいの?」


私の質問に首を傾げる地味子。


これで、私のこと女だと思っていなかったとか言われたら殴ってやろう。


私は少しだけ小さな。


そう。ほんのちょっとだけ小さな自分の胸を押さえつつそう決めた。


だけど、地味子が考えていたことは違ったようで。


「わたしは問題ないです。それに春川さんも女の子好きですよね?」


「な、なんでそれを知って…あっ…。」


私は地味子の予想外の言葉に動揺して、口を滑らせてしまうのだった。


そう。これがずっと秘密にしていて。


私が恋人を作れないでいた理由。


だけど、なんで地味子がそれを知っているのだろう。


そんなことを考えていると地味子が理由を話す。


それは単純で。


「それは、これが理由です。」


地味子がそう言うと、私にスマホの画面を見せる。


「…え?嘘…でしょ…。」


その画面に映し出されていたのは、私のお気に入りでいつも自分のことのように冬美に話していた携帯小説で。


それだけでも、驚いたのに。


私の見慣れていた画面とは少し違い。


作者だけが見れる画面で。


「わたしの書く小説は百合小説ですから。」


二度衝撃を受けることになった。


「これでわかってもらえましたか?」


そう言う地味子になにも言えず呆然とする私。


「春川さん?」


「わ、わかったから!ちょ、ちょっとだけ待って。」


正直、いっぱいいっぱいだったけど落ち着かないと。


そして、私は深呼吸すると地味子に質問する。


「ほ、ほんとにあんたがその小説の作者なの?」


まぁ、もうあの画面を見れば疑う余地もなかったけどそう質問する。


「はい。そうです。」


無表情でそう返事する地味子はさらに続けて話す。


「この小説の続きを書きたいんです。どうか協力してもらえないでしょうか。」


正直、私には断る理由がなかった。


体験もしてみたいし。


小説の続きだって読んでみたい。


だから。


「わかったわよ。協力する。」


「ほんとですか!」


初めて大きな声を出す地味子。


「ただし!条件がある!」


「条件…ですか…?」


「そう!条件!」


私は初めての体験が地味子っていうのはなんだか癪だったのと冬美にバレない様に条件を出す。


一つ これから体験することはノーカン


好きな相手じゃないのでカウントに入れない。


二つ 知り合いに見られないように注意すること


もし、付き合ってるなんて噂が立ったら、冬美にも嘘ついてたことがバレてしまうから。


三つ 連絡はスマホですること。校内で話しかけないこと。


急に話すようになったら、冬美にバレることを危惧して。


以上を地味子に伝えると了承し。


そして最後に。


これが一番重要で。


「「この関係に愛はありません!」」


と二人で声を合わせて言った。


こうして、お互いの利害が一致(ほんとは私の方が得をしているのだけど。)すると変な関係が始まったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る