第2話 関係の始まり②

まぁ、そんな相手いないんだけど。


そもそも、今までそんな相手いたことがない。


気になる相手はいたことがある。


だけど、とある事情でそこから発展することはなく恋人ができたことはない。


それなら、冬美に話していたことはなんなのかというと。


私のお気に入りの携帯小説の話をしていただけ。


昔の私は地味で友人もいなく、まるで隣の席にいる地味子そのものだった。


って、あいつの話をするのはやめよう。


とにかく高校デビューをした私。


そんな私は冬美と出会い。


地味だったことがバレないように恋人がいる設定で、恋バナをした。


冬美はそんな私の話を楽しそうに聞いてくれて。


そこから親友になるまで仲良くなった。


冬美に嘘をつくのは心苦しいけど、今さら本当のことを伝えられないでいた。


本当のことを話してしまったら嫌われてしまうと思ったから。


だから、今日もお気に入りの携帯小説の内容を自分に置き換えて話した。


だけど、その話もそろそろ限界で。


というのも、最近その小説が更新されていないのだ。


付き合い始めてからの話が。


完結済になっていないから続きはいつか更新されると思うんだけど。


自業自得とはいえ、困っていた。


想像で話すにも、恋人が出来たことがない私には難しく。


ボロが出るに決まっているのだから。


そんなことを考えていると下駄箱まで着く。


「はぁ。恋人同士ですることってどんな気持ちになれるんだろ…。相手がいればなぁ…。」


ふと、漏らしてしまった言葉。


私はハッと気づくと周りを確認する。


幸いだれにも聞かれていなかったようで一安心すると、靴を履き替え帰宅する。


…。


……。


そして、次の日。


私に事件が起こる。


朝、登校すると下駄箱で靴を履き替えようとした時、私はそれに気づく。


一通の手紙が入っていたのである。


私はすぐに靴を履き替えると、人気のないところへ移動して手紙の内容を確認する。


手紙の内容はこう書かれていた。



『春川陽奈さんにお願いがあります。放課後屋上まで来ていただけると嬉しいです。』



名前は書いていなかったけど、私はこれを瞬時にラブレターだと確信する。


お願いというのは、付き合ってほしいということで。


もうこれはラブレター以外のなにものでもないと。


心の中で私は大喜びすると、放課後までずっとこの事ばかり考えていた。


小説を読むこともせず、冬美と話している時も心ここに在らずという状態で。


冬美に心配かけちゃったのは申し訳なかったけど。


とにかく、ラブレターのことで頭がいっぱいだった。


だって、初めてもらったんだもん。


そして、待ちに待った放課後。


私は冬美に挨拶をすると足早に屋上へと向かった。


だけど、まだラブレターの相手は来ていないみたいで、屋上には誰もいなかった。


私はどんな相手なのかと、どきどきしながら待っていた。


すると、屋上のドアが開く。


私のどきどきは最高潮に達していた。


だけど、やってきたのは地味子で。


私はがっかりすると、再びラブレターの相手を待つことにする。


だが、いくら待っても相手は現れず。


イタズラだったのかなと考え、イライラしてくるとさっきまでどきどきしていた気持ちも一気に冷めてしまうのだった。


もう帰ろうと思い、その場を後にしようと屋上のドアに手をかけた時、背後から声をかけられる。


私は驚き振り返ると、地味子が視界に入る。


こいつまだいたんだ。と思いつつも、なんか用?と返すと、少し間が空きつつも話し始める。


「春川さんにお願いがあって。」


無表情で地味子はそう言った。


「お願いって…あんた急に何を言ってんの?」


私は手紙のこともあり、地味子が口にしたその単語にイライラしつつそう返す。


「いえ。事前に下駄箱に入れた手紙にも書いたと思うのですが。」


「は?手紙って…なんで、あんたがそのことを知って…」


そこまで言いかけると気づく。


「え?まさか、この手紙ってあんたが…?」


「はい。わたしです。」


どうやらこの手紙は地味子が私宛に出した手紙で。


ラブレターなんかじゃなく。


恋人が欲しいと思っていた私が勝手に勘違いしていただけで…。


「ラブレターだと思ってた自分が恥ずかしい…。」


私はそう呟くと恥ずかしさから今すぐにでもここから立ち去りたかった。


「ラブレター。」


相変わらず無表情で地味子がそう口にすると私はさらに恥ずかしくなってしまう。


「ある意味ラブレターで間違いはないです。」


すでにこの時点で結構驚いていたが、地味子がさらに続けて言った言葉によって私はそれ以上に驚くことになる。


地味子が私のすぐ目の前まで近づいてくると。



「わたしと恋人関係になってください。」



表情を変えずそう言うのだった。

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