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私だって、同じ。囮として利用されたのかもしれないけれど、そのことで相良さんを嫌いになったり、できない。
負い目を言い訳にしないで告白してくれたことが嬉しかった。
「相良さん、私……」
その時、ぐう、と相良さんのお腹の音が鳴った。
「……」
「……」
相良さんがテーブルに突っ伏す。
「うわあ、決まらないなあ……ごめん」
「気にしないでください。私は、そんな相良さんが好きですよ?」
勢いよく起き上った相良さんの顔を見ないようにして立ち上がる。
「何か、作ります。お夕飯、遅くなっちゃいましたね」
冷蔵庫、何があったかな。急いでご飯、炊かなくちゃ。
「俺も、手伝うよ」
相良さんも立ち上がって、キッチンに向かう私についてきた。
「あ、じゃあお米を……」
言って振り向いた私の腕を相良さんがひいた。
初めてのキスは、コーヒーの香りがした。
☆
「信乃ちゃん」
改札を出ると、相良さんが待っていた。
「遅くなってごめんなさい」
「ううん、俺も今来たところだから。今日も仕事お疲れさま」
私たちは並んで歩き出す。
あれから私たちは正式に付き合いだして、こうやって仕事帰りは家まで送ってもらうようになった。
相良さんの時間が合う時、という約束だったんだけど、結局ほとんど毎日ここで相良さんは待っていてくれる。
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