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そう言ったら、相良さんは私を気遣いながら言った。
「あいつ、狙った女性宅に夜中に忍び込んだこともあるんだ。結局同意があったということでそれも不起訴。おそらく脅されていただろう女性の証言を覆すことができなかった。彼女を救ってあげられなかったことが、本当にくやしい」
私のことを心配してくれたと思い込んで、一人で浮かれてた。
ばかみたい。すべて、小野先生を捕まえるために必要なことだったのに。
私は、膝の上にのせた自分の手をみつめる。
「私を守ってくれたのも、家まで送ってくれたのも……みんなみんな、お仕事のためだったんですね」
声が震える。
好き、だったのに。
相良さんは、ただの仕事で私の相手をしてくれていたんだ。なのに、自分が特別のような気になって。
「そうじゃない」
少し焦ったような相良さんの声。
「俺は……」
「もう、いいです!」
ぎゅ、と目をつぶって叫んだ。涙を、こぼさないように。
「こっちは相良さんに会うたびにどきどきしたりわくわくしたり……守ってくれてるのだって、嬉しかったかのに。なのに、そんなの、全部、嘘だったなんて……!」
「全部が、嘘でもないんだな」
突然、相良さんじゃない男の人の声が聞こえて私は顔をあげた。
いつの間にか薄く部屋のドアが開いて、そこにスーツを着た男の人が一人、立っているのが見えた。
「小野は捕まえたけど、どこに変質者がいないとも限らない。ちゃんとドアの鍵は掛けとかないとだめじゃないか」
「庄司さん」
相良さんも驚いているようだった。その男の人はするりと部屋に入ってくるとドアを閉めた。
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