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「いいタイミングです、左文字さん」

「小野敬一郎、強制わいせつ罪の現行犯で逮捕する!」

 私の目の前で、小野さんには手錠がかけられた。そこでようやく、小野さんから力が抜ける。二人の警察官が小野さんを立たせて、部屋から連れ出していった。

 私は、その様子を唖然と見ていることしかできなかった。


「こちらが、被害者女性ですか?」

 玄関の電気をつけながら、私服の男性が相良さんに聞いた。いきなり明るくなって、眩しさに目をおおう。


「はい。調書はのちほど。今はまだ、動揺していると思いますので、落ち着いてからにします」

「お嬢さん、怖い思いをしましたね」

 おそるおそる目をあけると、存外優しい顔で、その男性はいたわるように言ってくれた。

「いえ……」

「彼女のことは、俺の方にまかせてください」

「わかりました。では、よろしくお願いいたします」

 その人は相良さんに挨拶すると、警察官のあとを追って出て行った。


「相良さん……」

「どこかけがはない? 気分は?」

 心配そうに見つめる相良さんを、じ、と見つめる。


「どういう、ことですか?」

「うん。全部、話すよ」

 問いかける私の手をとって立たせようとするけれど、立てない。

 実はずっと、腰が抜けてしまって膝に力が入らないんだ。

 その様子に気づいた相良さんは、すとんと私の隣に座った。


「あいつ、以前いた学校でも同僚や近所の女性に同じようなことをしていたんだ。被害者はわかっているだけで数人いるし、もしかしたらまだいるかもしれない。けど、うまく立ち回って起訴するところまでは持っていけなかった。県警でも、ずっと目をつけていた要注意人物なんだよ」

「相良さん、警察官だったんですか?」

 私の問いに、相良さんは肩をすくめた。

「以前は、ね。SPだった」

 ああ、強いわけだ。

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