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「なんで……」

 声が震えた。立とうとしたけれど、足に力が入らない。そんな私の横に、小野先生はしゃがみ込む。外からの淡い光に、小野先生のめがねがざらりと光った。


「言ったでしょう? 私は、あきらめないと」

「だからって、こんな……帰ってください! 人を呼びますよ!」

「やれるもんならやってみろよ」

 言うなり小野先生は、私の口を手でふさぎながら、私をその場に押し倒した。


「!」

「俺を馬鹿にした報いだ」

 静に笑うその顔が怖かった。


「せっかく俺が誘ってやってるのに、なんで断る? まあいい。おとなしくさえしていれば、痛い思いはしないですむ。いや、逆に気持ちよくしてやるよ」

「……いやっ!」

 私が暴れると小野先生は手を離したけれど、その分、体を押さえつけられてしまう。

「や、やだっ!」

「うるさい、静かに」

「浅木さん!」

 その時、ドアが開いた。

 は、として振り返った小野先生が、誰かに突き飛ばされて私の上からいなくなった。

 何が起こったのかわからずぽかんとしていると、私の上を飛び越して誰かが部屋の中に飛び込んでいった。


「こい、つ……!」

「おらあっ!」

「相良さん?!」

 狭い廊下でもつれているのは、相良さんだった。小野先生が、相良さんの腕をつかむのを見て、は、とする。

 そうだ、小野先生、武道のできる人だった。


 手助けしようにも、狭い廊下では私が近寄ることもできない。その場で体をおこして座り込んだまま、私は二人の様子を見守るしかなかった。

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