- 22 -
職員会議が終わって帰る頃には、すっかり暗くなっていた。
いつもなら小野先生が誘ってくるのだけれど、今日の小野先生は私には話しかけてくることはなかった。
「小野先生、よかったらこれからお食事でもどうですか?」
その代り、沢田先生と山口先生が小野先生を誘っていた。
「ありがとうございます。けれど、今日はこれから用事がありまして。ぜひまた誘ってください」
「まあ、それは残念です」
用事があるから私にも声をかけなかったのかな。違うよね。もう終わったことだし。
いつもとは違う軽い足取りで、私は職員室を出た。
改札から出ると、遅い時間のせいか人はまばらだった。淡い期待を抱いてあたりをみまわすけれど、相良さんの姿はない。
時間も言ってないし、当然だよね。それでも、ちょっと寂しいなんて思っている。
私は、スマホを取り出す。
ラインは送ったけど、やっぱり直接話したい。今とても、あの笑顔が見たかった。
迷ったけれど、連絡をするのはやめた。
今日はもう遅いもの。また、早い時間の時に、連絡してみよう。
それでも、未練がましくいつものスーパーに寄ってみる。店内をうろうろしてみたけれど、相良さんは見つけられなかった。
今日はお仕事早いって言っていたから、もう帰っちゃったかな。
そんな風に考えている自分に気づいて、つい笑んでしまう。
私、思っているよりずっと、相良さんの事好きなのかも。
結局何も買わずにスーパーを出て、部屋に帰ることにした。
アパートの階段をあがって、部屋の鍵をあけた、その瞬間だった。
どんっ。
いきなり突き飛ばされて、私は部屋の中に倒れ込む。
「きゃっ!」
「静かにしろ」
後ろ手にドアを閉めたのは、小野先生だった。全身の血の気が引く。
「お……の、せんせい?」
「誰もいないな」
小野先生は、暗い部屋に目を向けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます