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そういえば、体を使う仕事だって言ってたっけ。大工さんとか建築の人とか、確かに朝早そうなイメージだなあ。
「ただのバイトだけどね。それより、昨日は不安にさせたらいけないと思って言わなかったけど、あの男本当に危ないかも」
私もご飯を食べる手を止めた。相良さんの目はとても真剣だった。
「絶対職場でも二人きりになることは避けて。なるべく人といること。帰りは同じ時間にならないように、なんならしばらくは、駅からタクシーでもいい。職場でも、自分の荷物の管理はしっかりすること。特に、家の鍵とかは絶対体から離さないで」
「はい」
「それから……」
少し迷って、続けた。
「浅木さんさえよければだけど、時間が合えば、駅からここまで俺が送ろうか?」
「いえ、そんな! 相良さんに、そこまでご迷惑をおかけするわけにはいきません」
「どうせ俺も帰るんだから、ついでだよ。もちろん、毎日ってわけにはいかないけど」
「そうですね……それでしたら、時間の会う時だけお願いできれば、嬉しいです。私の帰る時間はいつも同じですから」
実際、駅からスーパーまでは結構人通りがあるけれど、アパートの近くは住宅街になってしまって寂しい道が続く。暗くなってからひとりで帰るのは、少し怖い道だった。
「よかった」
ほ、とした相良さんの様子に私も安堵する。それからラインを交換すると、相良さんは食事のお礼を言って帰っていった。
そういえば、一体なんのお仕事しているんだろう。今度聞いてみよう。
☆
月曜の朝、私はなるべくぎりぎりに学校に着くように出勤した。あまり時間があって小野先生と話すのも気まずかったし。
「おはようございます、浅木先生」
なのに、いきなり声をかけられて身構える。
どんな顔して話したらいいんだろう。
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