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じゃがいもとたまねぎのお味噌を渡す。ご飯も急いで3合炊いた。たりるかどうかわからないけど、うちの土鍋じゃこれしか炊けなかった。
「十分だよ」
相良さんは、きちんと手を合わせていただきますというと、早速食べ始めた。
もりもりと食べ物が消えていくのを、自分が食べるのも忘れて見つめる。
気持ちよく食べる人だなあ。それに、食べ方も箸の持ち方もきれい。
相良さんは、しらすの小鉢を見てしばらくはしを止めた。
「すみません。それ、少なくて」
ちょっと冗談めかして言った。相良さんも笑ってくれる。
「さすがに5パックは一度に食べないよ。ちゃんと2回にわけて食べた」
「それでも、半分は一度に食べるんですね」
「炊事がめんどくさくなると、なんでも丼にしちゃうんだ。男の手料理なんてそんなもん。こんな風に、ちゃんとおろしまで添えて、なんて手のこんだことしないよ」
いえ、ただ大根おろしただけです。手なんてこんでません。
「あの時、浅木さんと夫婦に見られてたよね」
「おじさん、勘違いしてましたね」
「なんだか、ちょっと嬉しかった」
「え?」
顔をあげると、相良さんはすでに、お豆腐のお皿を手にしていた。
「作りたての豆腐なんて、初めて食べた。すごいね、こんなの作るんだ」
「好きなんです、これ。よく母が作ってくれて」
あの、その前の、嬉しかったは……
するりと流されてしまったけど、今、すごく嬉しいことを聞いた気がする。
「うん、とってもおいしい! ご飯て、土鍋で炊くと美味しいんだね。大変だったでしょう、こんなに作ってくれるの」
「いいえ、一晩中守ってくれていた相良さんに比べたらこれくらい」
相良さんは、ばつが悪そうに私を見た。よほどばれたくなかったんだろう。
困ったような照れたような顔をやっぱりかかわいい、なんて言ったら失礼かな。
「まあ、仕事がら慣れてるから」
「お仕事、ですか?」
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