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 そこにいるのは、今まさに心に浮かんだ人だった。


 なんで、相良さんが? 

不安は消えたけど、次に浮かんだのは疑問だ。そして、思いつく。


 もしかして……一晩中、そこにいたの? 昨日の小野先生と私の様子を見て、心配してくれたの?


 壁と電柱の間にもたれるように立っている姿は、ぴくりとも動かない。相良さんのアパートから駅まではこの道を通らないし、こっちの反対側には家ばかりで目的地になりそうなものはない。通りすがりにちょっと足を止めた、とは考えにくい。


 私の……ために?

 私は、カーテンを握りしめた。


  ☆


「おはようございます」

 私が声をかけると、弾かれたように相良さんが振り返った。その目が私みたいにしぱしぱしてたのは、きっと高く上がり始めた朝日のせいだけじゃない。


「おはよう、早いね」

 にこりと笑う姿は、いつもとまったく変わりなかった。

「相良さんこそ」

「ああ、今日は早い仕事があってね。ちょうど通りすがっただけだけど、浅木さんに会えてラッキーだな」

「嘘」

「……?」

「一晩中、ここで見張っていてくれたんですか」

 少なくとも、私が相良さんを見つけてから一時間、彼はここを動いていない。だから、もしかしたら夕べから、ずっと。


 私が言うと、相良さんは短い沈黙のあと苦笑した。

「ばれるつもりはなかったんだけど」

「ありがとうございます」

 相良さんは、思い切り伸びをした。

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