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ただ私のあとをついてきて駅にいたならともかく、学校の書類で住所まで調べていられたら……
震える自分の手を握りしめる。
大丈夫。落ち着かなくちゃ。部屋に入っちゃえば、鍵を掛けちゃえば……
握りしめた私の手をぽんぽんと相良さんが叩いてくれた。顔をあげると、なだめるように笑ってくれる。その穏やかな笑顔に、少しだけ癒された。
「ん。そうだね。でも、戸締りはしっかりね」
「はい。ありがとうございました」
私は言われた通り、部屋に入るとすぐに鍵とチェーンをしっかりとかけた。
☆
眠ろうとすると背後から追ってくる小野先生の姿が頭に浮かんで、そのたびに起きる、という事を繰り返した。ほとんど眠れないままに、外がぼんやりと明るくなってくる。
完全に寝不足。今日が休みでよかった。
どうせ眠れないなら、もう起きちゃおう。
しぱしぱする目をこすりながら遮光のカーテンを開けようとして、手をとめた。
まさか……いないよね。まさかね。
そう思っても不安で、わずかな隙間から外をのぞいてみた。
空はまだ薄い瑠璃色だった。アパートの前の道は、早朝ということもあって誰もいない……あれ?
道の向こうにある電柱の横に、黒い人影をみつける。背格好からして男の人っぽい。
動悸が激しくなってくる。冷や汗がにじんで、頭に優しい笑顔が浮かんだ。
怖い……助けて、相良さん。
とにかくそこにいるのか小野先生じゃないことを確認すればいいんだ。外がまだ薄暗いせいで、顔はよく見えなかった。窓の端に移動して、またカーテンの影からのぞいてみると。
え? 相良さん?
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