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「役にたててよかった。あの男、いつもああなの?」
「何度か誘われてはいたんですけど、いつも断っていました。同じ職場なので、あまり露骨に断ることも悪いと思ってなんとなくうやむやにしていたんですけど……」
ぎゅ、と自分の手を握りしめる。
こんなことになるなら、もっときちんと拒絶しておくべきだった。
「ごめんね」
「え?」
急に相良さんが申し訳なさそうに謝った。
「名前、呼び捨てにしちゃったし勝手に触っちゃったし」
「ああ……いえ、全然かまわないです。こちらこそ、急に変な事お願いしてすみませんでした」
それよりも、とっさのことだったのに本当の彼氏みたいに守ってくれたのが嬉しかった。すがりついた手を、振りほどかれなくてよかった。やっぱり相良さん、いい人だなあ。
「俺は全然。小学校の先生だったの?」
「私ですか?」
「さっき、小学校がどうの言ってたから」
「小学校で図書館司書をしているんです。さっきの方は小野先生といって、同じ小学校の2年生の担任です」
「そっか。あんまりしつこいようなら、校長なり誰なりに相談した方がいいんじゃない?」
「これで諦めてくれるといいんですけど……」
幸いというか、私に恋人がいると思ってくれたならそれでいい。もう、私に構わないでほしい。
結局また、相良さんは家まで送ってくれた。
「大丈夫?」
アパートの前で心配そうに聞いてくれた相良さんに、なんとか笑いを作ってみる。
「はい。小野先生だって、人目のある学校ではちゃんとしてくれますので、きっと大丈夫です」
そう言いながら、私の視線は今来た道を確認していた。
ここまでは、こないよね。ついてきていたり……しないよね。
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