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改札を抜けると、今日も外は暗かった。
図書室での会話をはじめ今日はやたらを小野先生にからまれて、相手をするのに疲れてしまった。職場の人間関係でもめるってよく聞く話だけど、まさかこんなことになるなんて思ってもいなかった。ろくに話したこともない私の、何がいいんだろう。
疲れちゃったから、もう今日はお弁当買って帰ろうかな。
こないだのことがあるから、あのスーパーもここ数日は行っていない。またあの中年男性がいたら嫌だし。
そんなことをぼんやりと考えながら何気なく振り返った私は、目を瞠る。
はるか後方になった改札を出ようとしているのは、なんと小野先生だった。あたりをきょろきょろとして誰かを探しているようだった。
なんで?! 私、住んでいるところなんて話したことないのに。まさか、つけてきたの?!
私は気づかなかったことにして、前を見て足を速めた。怖い。怖い!
「浅木先生」
遠くから声をかけられるけれど、足をとめることなんてできない。
必死に走っていると、見覚えのある背中が見えた。私はその腕にしがみつく。
「わっ?! あれ、浅木さん?」
「お願い、相良さん。このまま歩いて」
私のただならぬ様子に相良さんはちらりと背後を振り返って、きつい目つきになった。
「あの眼鏡の男? 知ってる人?」
「職場の人です。お誘いを断っているのにしつこくて……なんで、ここにいるんだろう」
話している最中泣きそうになった。本当に、なんで。
怖い。
「浅木先生」
すぐ後ろで声をかけられて、相良さんにすがりついたまま振り向く。小野先生は、いぶかし気に相良さんを見ている。
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