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「ご近所さんだったんですね」

「浅木さんも一人暮らしなの?」

「はい。この春に就職したばかりで」

「そっか。俺、5号の105だから、なにかあったら駆け込んできなよ。それと」

 相良さんが、すい、と顔を近づけてきた。私の胸がどきりと鳴る。


「俺が言うのもなんだけれど、得体の知れない男に自分のことあんまり話しちゃだめだよ。セキュリティは厳しくね」

 私の耳元で、そう囁いた。

「は、はい」

「ホント、お前が言うな、って言われちゃうけどね。じゃあ、気をつけて」

「はい。ありがとうございました!」


 ぺこり、と頭を下げて私は自分の家に向かう。階段をあがって自分の部屋の前から下を見下ろすと、相良さんはまだそこでこちらを見ていた。私が家に入るまで見ていてくれたんだ。

 もう一度ぺこりと頭をさげると、相良さんは笑いながら手を振ってくれた。


 部屋に入って、きちんと鍵をかける。

 大きく息を吐くとようやく落ち着いた。

 今日はいろんなことがあったな。


 相良さん、か。こんなに近所に住んでいたのね。うちとか知られちゃったけど、悪い人じゃないと思う。これ以上、深くかかわらなければ大丈夫だよね。

 そう思う反面、名前とか知ることができたことを、嬉しくも思う。


 既婚者ではないみたいだし、もうちょっとだけなら関わってもいいかな。せっかく知り合いになれたんだし、もう少し、あの人の事知りたい、な。


  ☆


「せんせー、結婚するの?」

「え?」

 返却された本の整理をしていると、子供たちが声をかけてきた。


「結婚? どうしたの、急に」

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