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「君の事、時々あのスーパーで見かけてたよ」

「私もです。しらすを5パックも買ってた時から、なんとなく」

「ああ、俺、大食いなんだ。体使う仕事してるし」

 そうなんだ。現場とか、建設系のお仕事なのかな。その割には、日焼けしてるようには見えない。


「じゃあ、半分くらいがご家族の分なんですか」

「いや、あれ全部一人分。俺、一人暮らしだから」

「ええっ?!」 

 思わずその顔を見上げてしまう。私より結構背が高いのに、その体はほっそりとして見える。


「だから大食いなんだって」

 相良さんは、照れたように笑った。

 あ。やっぱり、いい笑顔するなあ。


「浅木さん?」

「え、あ、はい」

「どっち?」

 ついその顔に見とれていた私は、交差点で立ち止まっていた。

「あ、あのアパートだから、ここでいいです」

 私は、左手に見えるアパートを指さした。ここには同じようなアパートがいくつも立っている、そのうちの一つだ。


「え、あそこ?」

 相良さんはきょとんとアパートをみあげる。

「よく会うな、とは思ってたけど……本当に近所だったんだ」

「え?」

「俺んち、ここの5号棟」

「え! 私、2号です」

「ああ、反対方向になるから、ここで会ったことがないんだな」


 立地が東西にVの形に並んでいるこのアパート群は、むこうとこっちじゃ道がまるきり反対方向になる。だから、スーパーから家までは帰り道が違うんだ。

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