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「お騒がせをいたしました。もしよろしければ、何があったかお聞きしてもよろしいでしょうか」

 はい、と受けて、私たちは他の人の邪魔にならないように隅による。そこで私は、中年の男性が研修中の彼女に絡んでいたこと、彼女に非はないことを伝えた。


「そうですか。ご迷惑をおかけいたしました」

「いえ、私は何も。それより、彼女を責めないでください」

 研修中の彼女に視線を向けると、なにやらお客さんに言われてやっぱり頭を下げていた。でも今度は文句を言われてるのではなく、どうやらさっきの騒ぎを見ていたお客さんに励まされているみたいだった。

 なんとなくその様子を見てほっこりとする。


「もちろんです。私たちも、もっと店員の様子に目を配るようにいたします」

 和やかな雰囲気になった店長は、これからもごひいきに、とお茶目に言った。


 スーパーを一歩出て、足を止める。

 さっきの中年の人、もう帰っちゃったよね。逆恨みされて、待ち伏せしていたりしないよね。

 あたりを見回すけど、それらしい人は見えない。でも、すでに空は真っ暗だし、万が一にでもあとをつけられたら……


「ねえ」

「きゃっ!!」

 背後から声をかけられて、思わず悲鳴を上げてしまった。勢いよく振り向くと、そこにいたのは。


「驚かせちゃった? ごめん」

 声をかけてきたのは、しらすさんだった。手には買い物の袋を下げている。


「大変だったね、さっきの」

「あ……こちらこそ、ありがとうございました。助かりました」

「ううん、すごいんだね。はっきり言うところ、かっこよかったよ」

「そんな。結局、私何もできなくて」

 うつむいて唇をかむ。

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