破滅の序章3
「あ~もううっとおしい!」
マサイ族の衣装となっている男爵を幾度となく振り続けた結果着せていた服や取り付けた装飾が外れて守る物が一切無い状態となっていたが、そこに構っている暇は現状無い。
「琴音!」
「はい!」
名前を呼んだだけの事だがたったそれだけでお互いに行動が手に取る様に解ると感じ、道の中央付近から外側の白線へと移動をすると琴音が全く同じ行動を反対側する。
「うらぁ!」
「はああぁ!」
そこから再び中央に向けて二人同時に横に移動しながら敵を一刀で塵にして更に迫り来る敵を数を減らす。
「ジャンティ!」
「わかってらぁ!」
返事をした彼女が空いた場所に進み出て槍を足元で横一線に振り立っている敵を地面に転がし、動きの速い琴音が明霞で仕留める。
「もう少しだ!」
後ろから放つ矢が敵を倒して塵に帰し、その結果地面に残る矢を拾って再び番えて野上が応戦してそのフォローで千秋が敵を吹き飛ばす。
戦闘が始まって既に数十分が経過していて地面には数えきれない程無数の魔石が転がり進んで来た道を彩っていて周囲には敵を吹き飛ばした結果である瓦礫や形を歪めた車などが残る。
しかしもう少しだと言われてもこれだけの戦闘を続ければ全員に疲労が出て来る、多少無理をしてでもけりを付けないと。
「琴音、行けるか?」
「はい、司さん合わせて下さい!」
途端に自身の足に力を蓄えアスファルトの地面がそれに伴い靴の形に沈み込んで亀裂を生み出す。
「お先に行かせて頂きます!」
断りを入れてその力を解放する事で地面が窪みを作り逃がしきれなかった衝撃によって硬いアスファルトが捲れ上がる。
それを生み出した琴音は明霞が放つ一筋の光だけを残して道路に面している壁に足を着地をし、そこで初めて彼女が跳躍する事で移動をしながら敵を倒したのだと理解出来た。
その姿を目にして言われた内容である合わせろの言葉の意味を理解し、自身も瞬時に跳躍をしながら敵を倒して同じく外の壁に着地をし、対面に向けて飛んで琴音と途中で交差しながら同じ事を繰り返して行き高速の移動によって敵を魔石へと変えて行く。
「「はあああぁぁ!」」
地面に足を付ける事の無い跳躍によってのみの移動を繰り返し足場の無い所ではお互いにタイミングを合わせて中央で足の裏をくっつけて相手の力を利用して外に向けて飛ぶ。
一度の跳躍で複数の個体を倒す為自身と琴音が交差する回数が10を超えた頃にはそれ以上の魔石が地面に転がり着地の余波によって塀は破壊され壁には亀裂と凹みが残り、高速で動く視界の中残り少ない敵を捉えて戦闘を終わりへと導いて行く。
「これで終わりです!」
先行する琴音が最後の一閃で敵を屠ると二人して跳躍により生み出された速度を地面に着地して摩擦音を発しながら徐々に減速されて停止する。
「…残りは…」
「大丈夫です、全て倒しきりました」
地に手と膝を付き荒くなった呼吸と溢れ出る汗が額から首筋へと流れる。
「なら一気に行こう、また同じぐらいの数に囲まれたら流石にしんどいしな」
身体が重くなり関節が無理をした反動でズキズキとした痛みを訴えるが無理にでも進まなければと敵の居なくなった国道を進んでマンションのある場所へと辿り着くと暗唱番号を入力して自分達の居住区である三階に移動して部屋の中へと入る。
「咲田さんいますか!?」
大きめに声を出して自分達の帰宅を告げるが静まり返った室内には反応は一切ない。
「まぁこの状況じゃいなくても不思議はねぇな、しっかし二人が住んでる所はこうなってんのか、うちと間取りは同じなのに中が違うだけで雰囲気ってやっぱり変わるもんだな~」
「いえ、確かに私達の家で間違い無いのですが…」
肯定はするが何かが違うと自分と同じ気持ちの琴音が周囲を見渡して行く。
「とりあえず此処で一旦休憩を取ろう、今後の行動も考える必要がある」
「そうだな、正直その方が助かるわ~流石にさっきのは疲れた」
リビングのソファーに座り背もたれに身体を預ける野上に続きその横にジャンティが座り、対面に琴音と千秋が座る。
「咲田さんが居ないとなるとうちらのとこも恐らく居ないだろうな、中野さんも同じかな…」
「そうね、多分居ないと思うわ」
此処にいる全員の保護者となっている女性達だが元は政府関係者だ、大阪がこの状態になっているならそっち方面で動いているだろう。
「そうなって来ると近隣の住民が何処に避難したかだな、そこに行けば自衛隊がいる可能性もあるし何か情報が得られるんじゃねぇか?」
「そうだな」
基本的に災害時は近くの学校などが避難場所として選ばれている、それを踏まえて考えると一番人の居そうな場所がすぐ近くにある小学校だ。
「その前に少しいいかしら?休息ついでにお風呂に入りたいの」
「あ~それはあたしもだな~」
「そうですね、私も同じです」
ダンジョンでの夜営に戦闘した事で身体に付いた汚れや汗などから確かにべた付きが不快だ、それ故に自分も同じ気持ちだと挙手をした。
「ならいっその事今日は全員此処で寝よう、疲れもあるし明日の朝から近隣の避難所に行って見るでいいだろう」
少なくとも今この部屋は安全だ、次外に出た時にいつゆっくりと休めるのか解らない以上ゆっくり出来るならして行こう。
「では準備をしてきます」
そそくさと席を立ち洗面所に向かった琴音が湯を沸かしに行き全員が順番に済ませると疲れていたからか少女達が欠伸をしだしたので早めに寝る事になり、翌朝準備を済ませて近隣の小学校に向かう。
候補は複数あるが一番近い四条畷を選んで進んで行く、だが気になるのは静かすぎる事だ昨日あれだけの敵が居て戦闘音が聞こえない。
四条畷の小学校は道を間に挟んむ形で対面に中学校があり避難場所となっていればかなり広い面積なる事から静かすぎる状態がまさかと全員に嫌な予感を感じさせて、結果それは現実の物となっていた。
「……」
学校の門に続く道路、そこに大量の赤い黒い液体がぶちまけられ離れていても確認出来る肉片や四肢がその場所で起こった惨劇を表している。
「どうするよ、確認するか…?」
「いや、その必要は無い」
いくら戦闘する事で相手を殺して来ているとしても人が無残に死んでいる場面など、この子達には見せたくはない。
「でもこうなって来るとどうなるんだ…」
パッと見では有るが俺達の目指していた学校に自衛隊の何かが有る様には見えない、ならどこか違う場所で陣取っている可能性もある、そうなると次に可能性の高い場所は多くの避難民を集める事が出来て見通しが良く守りやすい場所。
「恐竜公園、深北緑地なら面積も広いし防衛するには適してるかも知れない、無駄になるかもしれないがそっちに行ってみよう」
幸い現在地であるここから公園までの距離は戦いながらでも二時間もあれば着く距離だ。
「…なら今度はそっちに行くか」
しかしこのまま何もせずに去るのも何となく躊躇われた為その場で両手を合わせて黙祷をする事にして次なる目的地へと移動を再開した。
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