第2話セレクションチルドレン2
人間の第一印象とはかなり大切なもので、その状況によって受け取り方が変わって来るものではあるが、俺の場合は電話越し、しかも音声での接触でその印象はアニメ声の若干艶っぽい、思春期の自分には想像を掻き立てるには十分な魅力的な相手との接触であった。
電話に出た俺は集まる予定だった皆に悪いけど用事が出来たと伝えてくれと伝言をゴリさんに託し、電話の相手がいる区役所に足を運びながら自分の住む町へと思いを馳せる。
俺が住むのは大阪で、その数ある市の中でもパッとしないが印象の大東市だ。
住んでいる人からすれば何も思わないが隣接する市以外の所の人からすれば大東市? それって何処? 東大阪の隣? 門真も隣? 四条畷との間? あ~あそこか! と説明するまでに苦労をする時もあるそんな町だ。
何かを目印にするとしたら生駒山と言った方が早く、電車の駅名で住道駅と答えた方が早い時もある。
そんな大東市にある自身が通う府立N高校からチャリで移動し、町の事を考えている間に年季の入った建物である区役所へとたどり着いた俺が受付の案内により通されたのは少し豪華な椅子が配置されている一室だった。
こういった椅子を見ると小学校のころ校長と生徒が給食を食べるというイベントで自分の番が来た時に食べていたカレーを白いカバーに掛けてしまい、焦りながらもばれない様に振舞っていたあの頃を思い出してしまう。
「はじめまして、私は政府から派遣された【セレクションチルドレン】、通称Sチルの担当をしています咲田 美香です、本日はご足労いただきありがとうございます」
当時のやらかしを脳内で思い浮かべる俺にその女性が声を掛ける事で自分の今の状況を思いだす。
学校での帰り際にかかって来た電話は予想してしまった通りにSチル関係であったのだ。この件に関しては確か情報がかなり制限される為ゴリさん達には詳細を話さず断りだけを伝えて来たのは正解だっただろう。
「はじめまして」
人見知りかとも思われかねないそんな一言でのあいさつを済ませた俺は対面する女性である咲田さんを見る。
その容姿は柔らかい雰囲気を内包し、黒髪を後ろで束ねてスーツを着こなす町で見かけたらあ、あの人仕事できそうだなと学生の自分ですらそう感じさせる女性だった。
「失礼ですがここからの話は規則としてご本人だという確認の為、まずはお名前と生年月日を教えてください。」
そう言われた俺は自分の名前及び生年月日を口にすると確認しましたと言う言葉と共に咲田さんがいる対面への椅子を進められ、そこに座る。
「おそらくもう解ってはいらっしゃるとは思いますが、貴方がこの度ここに呼ばれた理由はSチル関係、その中でも彼女達に選ばれた事が判明したからです。」
言葉を発しながら自身の座る椅子の脇に置いたカバンからタブレットを取り出し、指でなにやら操作をする。
「そして早速ですが…貴方にはすぐにでも彼女と面会していただく必要があります、ペアに関しての詳しい話などはお二人が顔合わせをした後にペアの確認が彼女の口から取れた後でお話ししましょう。」
呆気にとられる俺を他所に話はポンポンと進んで行き、今から移動するので付いて来て下さいという声に従い車に乗せられて来たばかりの市役所から更に移動する羽目になった。
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移動中の車内では何を話していいのわからず口を閉ざす俺と、頻繁にタブレットを操作する咲田さんが後部座席でなんとも言えない居心地の悪い空気を醸し出し、そんな事とは関係が無いかのように車は進んで行き、たどり着いた場所は市内のホテルの一室で今現在俺は案内された部屋の前に二人で立っている。
「この部屋に貴方のペア、いえ貴方を選んだ彼女がいます。」
言葉少なく案内され、その彼女の事も何一つ聞かされないままたどり着いたその扉の前で流されるままここまで来た俺の心臓は又もや早鐘を打っていた。
この部屋の中にいる少女と俺は今後生死を共にし、生きていくことになるのだ、普通に知り合いの年下の女の子に会うのとは訳が違う、緊張するなと言う方が無理だろう。
「それではどうぞ」
そんな言葉と共に扉に掛けられていたカギを開け、部屋の中に入る咲田さんの後を追うように入室し、リビングと思われる部屋の扉をあけ放った先には一人の少女が右腕を天に高らかに掲げ、某漫画のわが生涯に一片の悔いなし!の姿勢でこちらを見ていた。
「あ、あの…これはその!…暇だったので……」
年頃の女の子としては見られたくないであろう一面を一人は女性とはいえ年上の政府関係者に、そしてもう一人は初対面の男で自分のペアになるかもしれない人物に見られた事でその顔はすぐに真っ赤になり、そんな彼女に対してとりあえず自分は何か声を掛けないとと思い何も考えずにこう言った。
「剛掌波より岩山両斬波の方が俺は好きかな」
間違えていたらどうしよう…。
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