第140話 ミカエルの半身を取り戻せ!
「ミカエルの本体!? それってどういうことよ!」
「どういうことも何も、そのままの意味にゃん。ここにはミカエルの本体、より正確には、ミカエルの力の残りの部分があるのにゃ」
「そう……そうなのね」
ウルの頭は既にパンク寸前になっており、頭から煙が出ていた。
「ていうか、なんでミルナはそんなことを知ってるのかしら?」
「うちのノース支部は情報力が凄いにゃんからね。色んな情報が集まるのにゃん」
「凄い情報網ね。私もノース支部がそこまで情報力あるとは知らなかったけど、どんな手段を使ったのかしら?」
「さあ。どうやって収集したかはにゃーも分からないにゃん。そこは支部長が色々してるみたいにゃんから」
「……そう。まあいくつか気になることはあるけど、今は良いわ。とにかく、私たちは支部に戻れば良いのね? ミカエルの件はアリア1人で大丈夫なの?」
「大丈夫にゃん。アリア結構強くなってるみたいにゃんし。それに、連携の取れないあいつが支部に来ても邪魔になるだけにゃんし。さて。そうと決まったら早く帰る準備してほしいにゃん。今すぐにでも戻る必要があるにゃん」
その後は全員が急いで準備を終わらせ、寝ているダレスとラルカもたたき起こした。クロノスとニーアは特に準備するものも無かったため、皆を待っている。アリアはカイツの治療に専念したかったため、家の中に戻っている。
「クロノス。あのミルナという女は何なんだ?」
「ロキ支部長の懐刀で、胡散臭いことを考えてる女ですよ。私たちの前にもほとんど姿を現すことはなく、常に暗躍してます。それぐらいしか知りませんが」
「……そうか」
ニーアは騎士団のことは全く信用していなかったが、少なくとも今は手を出すべきではないと結論付ける。ヴァルキュリア家のこともあるし、下手に敵を増やすようなことはする必要はないと考えたからだ。
準備が終わり、全員が集合する。ラルカは気絶してる間に得た情報を処理しきれず、頭から煙を噴き出している。
「我が気絶してる色々ありすぎだろ……一体何がどうなってるんだ」
「分かるわ。色々起きすぎよね。私も正直ついていけないわ」
「おまけに、知らない間にウェスト支部がぶっ壊されるというな。リナーテの奴、無事だと良いんだが」
「あっはっはっは! 私が気絶してる間にずいぶんと状況が動いたんだね。ウェスト支部をぶっ壊した奴、会うのがとても楽しみだよ!」
「ダレスは相変わらずにゃんね。さてと。それじゃ行くにゃんよ!」
ミルナが白い玉を地面に投げると、魔法陣が浮かびあがる。魔法陣の光は徐々に強くなっていき、ミルナたちを飲みこんで消えた。
ウルたちが帰った頃、アリアはカイツの治療に集中していた。隣でミカエルも見守っている。
「だめ。やっぱり傷を治すのは不可能だ」
「となると、妾の本体を取り戻すしかないのお」
「取り戻すとして、あんたの本体は素直に言うこと聞いてくれるの?」
「無理じゃろうな。やるなら力づくで連れてくるか、カイツ並に面白いことを言うかのどっちかじゃ」
「力づくで連れ戻す方が簡単そうだね。あいつの強さはどれくらいなの?」
「全盛期の6割くらいじゃからのお。結構な強さじゃぞ。最低でも六神王クラスはあると思っといた方が良い」
「その程度なら余裕だね。じゃあ行ってくるよ」
アリアが行こうとすると、その腕が掴まれた。
「待て……俺も行く」
彼女の腕を掴んだのはカイツであり、アリアとミカエルは彼が起きるとは思っておらず、驚いている。
「カイツ、動いちゃダメだよ。あんたはまだ」
「ミカエルの力取り戻すのに……契約者の俺がいないのは笑い話にもならないだろ。足手まといにはならない……連れてけ!」
「お主、ずいぶんと無茶するのお。動くことも儘ならんはずじゃが」
「この程度ならどうとてもなる……嫌だといっても無理矢理ついていくつもりだ」
「……分かった。連れて行くよ」
「アリア!」
「このまま置いて行っても危険なことしそうだしね。なら連れて行く方が良いよ。大丈夫。四大天使といえど、6割程度の力なら私がぶっ飛ばしてあげるよ」
「それは頼もしいな。期待してるよ」
3人はミカエルの半身がいると思われる洞窟の前にたどり着いた。カイツは大きくなったミカエルの肩を借りながら歩いている。
「ミカエル。やけに大きくなってるけど大丈夫なのか?」
「今のお主よりは大丈夫じゃよ。なんならこのまま戦うことも可能じゃぞ。お主は」
「そうか。それなら良いんだ。ここに……ミカエルの半身が」
「ああ。妾の半身の気配がぷんぷんするわい」
「匂いもかなり強くなってるね。それより、カイツは大丈夫なの? 辛そうだけど」
「問題ない。足手まといにはならないといっただろ」
「そんな状態で言っても説得力ないけど……まあいいや。行こうか」
3人が洞窟に入った瞬間、別世界へ連れて行かれたかのような感覚に包まれた。そして彼らが見た光景は。
「おい……なんだこれ」
「この世界」
彼らより2回りも大きな植物が並ぶ世界。巨大な滝に天高くそびえたつ森、空は何体もの龍が飛び交うというとんでもない世界だった。
「これは驚いたのお。ここはかつて妾が住んでた世界、アースガルズじゃ」
「ここがアースガルズ!? けど、なんでそんな所に」
「おそらく、妾の半身が門を作って開けたのじゃろう。しかもうまいこと気配を完璧に隠しておった。大した奴じゃよ。気を付けろよ。この世界は色々と大変なことだらけじゃぞ」
「見れば分かるよ。参ったな。入って早々、ミカエルまでたどり着く未来が見えなくなってきたかもしれない」
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