第139話 島に潜む者
ガブリエルが去った後、ニーア達がアリア達の元へやってきた。
「でかい気配が消えたが、何があったんだ」
「さあ。四大天使の1人で、カイツの様子を見に来たらしいけど、何が目的かは分からなかった。何をしたいのかも分かんなかったし」
「はああ!? 四大天使の1人ってどういうことよ!」
「どういうこよもなにも、言葉通りの意味だよ。ミカエルと同じ、四大天使の1人が来た。それだけのこと」
それを聞くと、ウルはあまりの情報に頭がパンクしたのか、口から煙を吐いており、メリナは悩ましそうに頭を抱える。
「今日だけで色々ありすぎよ……わけわからない」
「六神王のことだけでも頭が痛いのに、四大天使の問題もか。流石にしんどいな」
「まあそのことは後で良いだろう。それより兄様のことだが」
「体は私の妖精が治してる。けど肉体が破壊され続けてるから現状維持がやっと」
「やはりそうなってるか。なら、一刻も早くこの地にいる奴を引っ張り出すとするか」
「あの。何を引っ張り出すというのかしら? 話が見えてこないのだけど」
「ああ。それは」
クロノスが話そうとすると、彼女たちの前に白い魔法陣が現れ、そこから短い茶髪に青い瞳の女性、ミルナが現れた。
「にゃっほー。リゾート生活は楽しんでるかにゃーん?」
「ミルナ! これのどこが楽しんでるように見えるのよ!」
ウルが怒り狂ってミルナの胸ぐらを掴む。
「いきなり無人島に飛ばされるわ六神王が襲撃してくるわで大変だったのよ! そもそもロキ支部長は何を考えてここに私たちを飛ばしたの! あいつもしかして敵のスパイなのかしら?」
「ごめんにゃ。計画のために仕方なかったのにゃ。後、ロキ支部長は敵のスパイじゃないにゃんよ。それより、とんでもない事態が起きたのにゃ」
「私たちに起きてること以上にとんでもないことでもあるの?」
「ウェスト支部が何者かに襲撃され、壊滅状態にゃ」
「な!? 嘘でしょ!」
「ちょっと待て! それはどういうことだ!」
今度はメリナがミルナの胸ぐらを掴んで来た。
「ウェスト支部が壊滅だと!? ていうかどうやって侵入された! あそこは特定の手順を踏まないと入ることは不可能なはずだ!」
「侵入方法は不明にゃ。侵入者は1名。そいつはウェスト支部のメンバーを蹂躙し、ウェスト支部メンバー187名の内、少なくとも150名以上の死亡が確認されてるにゃ」
「……冗談だろ? そんなふざけたことがありえてたまるかよ」
「マジにゃ。こんな冗談みたいなことがマジに起きたのにゃ」
メリナは彼女の言葉が信じられなかった。自分の知らない間にウェスト支部が壊滅し、大量の死傷者が出ていたなど、理解することが出来なかった。そんな中、ニーアが質問する。
「侵入者は誰なんだ?」
「現時点では不明にゃ。ただ魔力の痕跡から
「ということは」
「十中八九、六神王の誰かでしょうね。心当たりないんですか?」
「さあな。思い当たる奴は何人かいるが、カーリーに命令されて動いただけという可能性もある。推測するための材料が少なすぎて今は分からん」
「そうですか。それで? 猫女はここに何をしに来たんですか? 報告しに来ただけですか?」
「んなわけないにゃん。ウェスト支部が殲滅されたことを受け、残りの支部が戦力を固めようとしてるにゃん。もちろんノース支部も例外ではないにゃん。ウル、ニーア、ダレス、ラルカ、クロノスの5人は今すぐノース支部に戻って欲しいにゃん。敵の襲撃に備えて防衛策を作らないといけないにゃん」
「おい。私はどうすればいい? ウェスト支部に行った方が良いのか?」
「メリナは、とりあえずノース支部まで来てほしいにゃん。今は少しでも戦力が欲しいにゃんし、情報も集めたいのにゃ。ウェスト支部に行ってもすることはないだろうにゃんしね」
「了解だ」
そんな中、アリアが気になったことを質問をする。
「待ってよ。私は何をすれば? ノース支部に戻らなくていいの?」
「アリアにはここにいる奴を起こすための手伝いをしてほしいにゃん。あんたはクロノスやニーア以上に連携取れにゃさそうだし、ここにいる奴を起こすのにも役立ちそうにゃん」
「……なるほど。でもなんであんたがそれを知ってるの? そもそも私たちをここに連れて来た理由は? ここにいる奴に関して何か関係あるの?」
「にゃーもそこまで詳しくは知らないにゃんけど、カイツを強くするために必要らしいにゃん。あの人の計画のためにも。ヴァルキュリア家を倒すためにも」
「ちょっと待ってよ。ここにいる奴ってなんの話? ここには何がいるというの?」
「あれ、ウルは気づかなかったにゃんか? まあ気配を完全に消してるし、それも無理ないにゃんね」
「だから。それは誰のことなのよ!」
ウルがそう聞くと、ミルナはやけに芝居がかった口調で言う。
「聞いて驚け見て笑えにゃん。カイツの中にある存在、ミカエルの本体とでも呼ぶべき存在にゃ」
島の地下深くにある巨大な石の神殿。そこに1人の女性が立っていた。巫女を思わせる様な服装、主張するような大きな膨らみ、3対6枚の天使の翼。真っ赤な瞳に大人っぽくも、少女の面影を感じる美しい顔立ちをしていた。その目は大地で覆われて見えない空を見つめている。
「……ふう。妙な気配を感じて起きてみれば、ずいぶん面白いことになっとるのお。まさか我が半身を宿す器が現れるとは。それほどまでに魅力的な人間だということなのか。気になるのお。せっかくじゃし、会ってみたいものじゃ。でも外に出るのは面倒じゃし、人の気配が漂う空気を吸いとうない」
どうすべきか考えていると、彼女は何かを思いついたようにポンと手を叩く。
「そうじゃ。器がここまで来ることが出来たらたら顔ぐらいは見るとするかのお。半身も妾のことに気づいとるじゃろうし、間違いなくここに来るじゃろう。楽しみじゃなあ。器がここにこれるほどの力を持ってるか、あるいは来るまでに力尽きて倒れるか。賭けてみるのもわるうない」
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