パーティーを追放されたギルド最強の少年は騎士団で無双し、英雄になる

第52話 イシスVS神獣

　アリアは姿勢を低くしたままジャンプし、そこから縦横無尽にあちこちを飛び回る。

「ほお。ずいぶんと面白い見世物だ。次はどんなものを見せてくれる」

　イシスが感心したようにそう言うと、アリアは飛び回りながら攻撃を仕掛けていく。イシスはその攻撃を躱し、感心するように見ていた。

「ふむ。獣のような動きだな。身体能力はかなり高いようだが、動きに無駄が多すぎる」

　イシスがそう言ってると、アリアが後ろから彼女に襲い掛かる。しかし、彼女はその攻撃が来る前に、回し蹴りで顔を蹴とばそうとする。アリアはその攻撃を腕で防御し、ダメージを抑えた。

「グルルル。ガアアアアアアア！」

　アリアは獣のような雄たけびを上げ、イシスに襲い掛かる。爪の切り裂き、蹴りや殴打などの打撃、様々な攻撃を繰り出すも、イシスは涼しい顔でそのすべてを躱すか受けとめるかでいなしていく。

「手数が増えてきたな。そんな状態でも学習出来るとは。やはり神獣というのは面白いな」

「ガアアア！」

　アリアは毛を逆立て、さらに攻撃速度や威力を高めていく。しかし、イシスに攻撃は届かず、全ていなされていった。アリアが爪で切り裂こうとすると、イシスが後ろにのけぞって躱し、お腹に蹴りを入れる。

「グウウ……ウルアアアアア！」

　蹴りを入れられるも、アリアは足に力を入れて踏みとどまり、イシスの顔を殴り飛ばした。しかし、彼女は即座に姿勢を立て直し、仮面についた泥や汚れをはらう。ダメージは全くないようで、彼女はピンピンしている。

「私とここまで長く戦える者は初めて見たよ。流石は神獣。恐ろしいものだ」

「ガウルル。グアアアアア！」

　アリアは足を強く踏み、土煙を発生させた。アリアはその土煙の中で様々な方向から攻撃していくも、その攻撃さえ届かない。

「暴走してる割には、意外と頭を使うじゃないか。少し驚いたよ」

「ウルアアアアア！」

　アリアは全体重を乗せて殴りかかるが、イシスはその攻撃を片手で受けとめる。

「グルル。ウガアアアアアアア！」

　アリアはほぼ零距離で咆哮し、イシスに攻撃する。大地に亀裂が走るほどに凄まじいものだが、彼女は涼しい顔をしており、ダメージを受けているようには見えない。

「ガウウウ」

「魔力を込めれば、この程度の攻撃は簡単に防げる」

「グルアアアアアアア！」

　アリアは諦めることなく攻撃を続けていくも、その攻撃は届かなかった。彼女は一旦後ろに下がり、再び木々の上を縦横無尽に飛び回る。その際、石や木の枝を投げて攻撃するも、それらはイシスに触れる直前で消滅していく。

「そんなものじゃ、私にダメージは与えられないぞ」

　アリアは後ろから静かに襲い掛かるも、イシスはその攻撃を片手で受け止めて投げ飛ばした。

「グルルル。ガアアアアア！」

　彼女は再び距離を詰め、イシスに殴りかかって来る。

「はあ。いい加減猪突猛進なのも飽きてきたな」

　イシスがその攻撃を受けとめた瞬間、見えない衝撃波がイシスを吹き飛ばした。

「ぐっ！　これは」

「ガウウウウウウウ！」

　彼女は何度も殴りかかり、イシスがその攻撃を防ぐたび、見えない衝撃波が受けとめた腕や手に襲い掛かる。ダメージは無いものの、この事態に彼女は驚いていた。

「面白いな。無意識だろうが、力の使い方が洗練されている。神獣とは本当に面白いものだな」

　イシスが彼女に蹴りを繰り出すと、アリアはその攻撃を跳んで躱し、そのままかかと落としを仕掛け、イシスがその攻撃を後ろに下がって躱す。アリアは間髪入れずに攻撃を仕掛け、彼女の防御を崩そうとする。

「本当に面白い。戦い方も変わり始めている。ふざけてる余裕が無くなってきたよ」

　彼女が顔めがけて蹴りを繰り出すと、アリアはしゃがんで躱し、そこから手を地面につけて逆立ちのような姿勢になり、顔めがけて蹴りを繰り出し、顎を蹴り飛ばした。少しだけ後ろに下がったが、彼女は全くダメージを受けてるように見えない。

「はははは。殴り合いのやり方もちゃんと学んでるじゃないか。流石流石」

「グルアアアアア！」

　アリアは今までにないスピードで後ろに詰め寄り、彼女に殴りかかる。彼女がそれに対処しようとすると、アリアは瞬時に動き、再び後ろに回った。そのまま攻撃が当たりそうになったが、イシスは後ろを見ることなく、その拳を受けとめた。

「ガウ！？」

「中々に面白いが、これ以上時間を無駄にしたくない。そろそろ終わらせよう」

　彼女はそのままアリアを投げ飛ばし、緑色のレーザーを放つ。

「ガウウウ！」

　アリアは空中で姿勢を変え、そのレーザーを避けてイシスに飛びかかる。

「空中で姿勢を変えるとは大したものだ。だが」

　アリアの爪が切り裂こうとした瞬間、地面から何本もの緑色のレーザーが放たれ、彼女の体を貫いた。

「これで終わりだ」

「ウウ。ガウ」

　アリアは意識を失い、その場に倒れてしまった。彼女の体は穴が開いておらず、レーザーが当たった場所が少し焦げている程度だった。

「さて。ようやく終わったことだし、早いことルサルカを――！　……この気配は」

　彼女がルサルカの元へ行こうとすると、空から刀が降ってきた。彼女は後ろに下がってそれを躱すと、刀は地面に突き刺さる。

「あの刀。間違いない。やっと会えた」

「ずいぶんと俺の仲間が世話になったな」

　刀の傍に、白髪の少年カイツが降り立つ。彼女を鋭く睨んでおり、その表情は怒りに満ちていた。イシスはそんなカイツを見て、うっとりとしている。仮面を着けていても喜んでいることが分かり、カイツと会えたことがよほど嬉しいらしい。

「ほお。これは素晴らしいな。久しぶりの再会じゃないか」

「生憎、お前みたいな不気味仮面は知らないんだ。仲間を世話してくれた礼。たっぷりと受けてもらうぞ」