第50話 圧倒的な存在
イシスがレッドに襲い掛かると、ブラックとイエローが両側から彼女の首を蹴り、その首をちぎろうとする。しかし。
「……!? これは」
「! なんて硬さだべ」
彼女の首はあまりにも硬く、ダメージを入れることすら出来ない。それどころか、逆に自分たちがダメージを負ってしまったのだ。
「脆いな。お前たちは」
イシスが彼女たちに腕を伸ばそうとすると、前からレッドが、後ろからブルーが蹴りを入れるが、それも防がれてしまった。その直後にブラックとイエローが両側から殴りかかろうとするが。
「煩わしい」
イシスから衝撃波のようなものが放たれ、スーパーマンズはふっ飛ばされてしまった。
「くそ。シングルフォーメーションK!」
レッドの腕が輝き、発煙筒えと姿を変える。
「スモッグショット!」
発煙筒から赤い煙が放たれ、イシスの視界を完全に封じた。
「ほお。面白い魔術だな。何も見えなくなってしまったよ」
赤い煙の中。ブルーが彼女の首を、イエローが彼女の背中を、ブラックが彼女の両足に静かに近づき、レッドによって剣に変わった足で切り裂こうとする。
「無駄だ」
彼女はブラックの攻撃を跳んで避け、ブルーとイエローの剣をつまんで受けとめた。
「!?」
「嘘だべ!?」
「……ありえない」
「この程度の攻撃など、目を瞑っても防げる」
彼女はブルーとイエローを投げ飛ばし、ブラックを踏みつけようとする。
「させるか! シングルフォーメーションC!」
レッドのその言葉が聞こえると、煙の中から鎖が飛び出し、イシスに襲い掛かる。彼女は簡単に躱したが、ブラックが彼女の攻撃から逃げ出す暇を作ることは出来た。煙が収まると、スーパーマンズはイシスを取り囲んだ陣形になっていた。
「ふん。数の暴力ではどうにもならんぞ」
「なら、この暴力はどうだ!」
彼女たちが一斉に腕を引くと、地面からワイヤーが飛び出し、イシスの体を縛る。このワイヤーはブルーたちが攻撃してる間に、レッドが自身の靴を素材にして作ったものである。
「ワイヤーか。また面白いものを」
「終わりだ。引きちぎれろ!」
ワイヤーがイシスの肉に食い込もうとした瞬間、なぜか縛っていたはずのワイヤーが煙のように忽然と消えてしまった。
「! なぜ。なぜワイヤーが」
「惜しかったな。策は悪くなかったが、私の魔術が上手だった」
彼女は何も無かったかのように、立っている。
「くそ。これはまずいな」
「……うん。まずい」
彼女たちは今の攻防で理解した。いや、本当はずっと前に理解していた。目の前に立っている女は、自分たちよりもはるかに格上の存在。勝てる可能性など万に一つもない。
「勝てる可能性はほとんどゼロ。だからと言って、このまま逃げるわけには行かない! 皆行くぞ!」
『了解!』
「合体フォーメーションDP」
彼女たちが両腕を横に伸ばすと、その姿が輝く。両腕が鋼鉄の棒になってイシスを囲み、そこから鋼鉄の棒が網のように分裂して広がっていき、円錐型の檻を作っていく。その速度はあまりにも速く、イシスはその速度に感心していた。ほんの数秒経った頃には、イシスは巨大な円錐型の鋼鉄の檻に閉じ込められた。
「大したものだ。これだけ巨大なものをここまで速く完成させるとは。こんなに優秀な奴がいるとは思わなかったよ」
「褒めてくれてありがたいな。お礼に、とっておきの攻撃を食らわせてやる! ライトニング・ヘルプリズン!」
檻から青い電撃が放たれ、彼女に襲いかかった。その電撃は余波だけで地面を焼く程に強力であり、常人が食らえば数秒も経たずに炭になってしまうだろう。だが、それ程強力な攻撃でさえ。
「ほんと、面白い魔術だ。それにこれほどの威力を出せるとは」
彼女には効いていなかった。そもそも、電撃が届いていないのだ。襲いかかる電撃は彼女に触れる直前で消えてしまい、彼女は無傷である。スーパーマンズはこの光景を見て、驚きを隠さずにはいられなかった。
「馬鹿な……なんで攻撃が」
「さあ。何でだろうな。ゆっくり考えるといい。
彼女が右手を突き出すと、右手が緑色に光り輝いた。光とともに強大な衝撃波が放たれ、スーパーマンズを吹っ飛ばし、壁に激突させた。
「馬鹿な」
「私達が」
「負けるだべ?」
「……くそ」
彼女たちはその言葉を最後に倒れた。
「お前たちは弱くはなかった。私がはるかに格上だった。それだけのことだ。さて。あとはこうするだけだな」
彼女の手に緑色の光が集まると、突然天井が破壊され、そこからダレスが飛び出してきた。
(そこだ!)
ダレスが不意打ちで殴ろうとするも、イシスがそこから一瞬で姿を消し、離れたところに現れた。
「やるね。さすがはピエロ女。この不意打ちを躱すとは大したものだ」
「またお前か」
「おっと。スーパーマンズがやられてるね。てことはめちゃくちゃ強いってことだ! 良いねえ! 速く私と戦おう!」
「悪いが、これ以上暇つぶしをする時間はないんだ。あいつに悟られるのも面倒だし、見たいものも終わったからな」
彼女の手から緑色のレーザーがいくつも放たれたが、それはダレスを避け、後ろの壁を消滅させた。
「? 何を」
「忠告だ。足元に気をつけろ」
ダレスがその言葉の意味を問おうとすると、建物が煙のように消え、尻もちをついてしまった。
「うわ。何これ。今までの幻覚だったってこと? あんなでかい建物を造れるなんて。凄い魔術師だね」
「では、私はこれで失礼する」
「待て! このまま逃がすと」
ダレスが追いかけようとするも、イシスの姿が一瞬で消え、どこかに行ってしまった。
「参ったなあ。スーパーマンズと妖精族を運ぶのはしんどいんだけど……やるしかないか。にしても、あの女はなんでこんなことを。モルペウスとかいう奴の仲間じゃないの?」
彼女はどういうわけか考えようとしたが、何度考えようとしても思い浮かぶのはピエロ女が強そうとかモルペウスとも戦ってみたいとかの戦いに関することばかりだった。
「どうでもいいや。さっさとこいつらを運ぶとしよう」
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