第44話 変人の援軍 作戦開始!
ウルは部屋の真ん中で、白い粉を播いていた。
「ウル。その粉は何だ? 何をしてるんだ?」
「これはスーパーマン達を呼ぶための粉。スーパーマン達から貰った物よ。そして、これはスーパーマンたちを呼ぶための準備。あいつらを呼ぶには、色々と準備が必要なの」
彼女が粉を播き終わると、そこから少し離れ、手をかざした。
「我、ここに汝を呼ぶ。正義の名のもとに集い、平和の礎のためにその身を捧げ給え!」
彼女がそう言うと、白い粉は輝きだし、強い光を生み出す。そして、その光の中から現れたのは。
「赤き炎は正義の印。スーパーレッド!」
赤いリボンを付けた活発そうな女性。いかにも元気はつらつといった印象だ。赤い髪をなびかせている。
「青き水は正義の印。スーパーブルー」
青いリボンを付けたほんわかした女性。おっとりめであり、物静かな印象。青い髪をなびかせている。
「黄色い土は正義の印だべ。スーパーイエローだべ!」
黄色いリボンを付けた、ぽっちゃりめの女性。母性のある人という印象だ。黄色い髪をなびかせている。
「黒い風は正義の印。スーパーブラック」
黒いリボンを付けた、恐ろしいほどに無表情の女性。どんなことにも動じない冷静沈着な人という印象。黒い髪をなびかせている。
「4人合わせて、スーパーマンズ! 求めに応じ、ここに参上!!」
4人が一斉にそう言って、決めポーズを決めた。一言言わせてもらうなら、自己紹介が異常に長い。もっとパパッと終わらせてほしいが、今はどうでも良いな。
「ヴァルハラ騎士団ノース支部所属のカイツだ。早速だけど、あんたたちに頼みたいことがある」
俺は彼女たちにそう言うと。
「あんた。それ本気でやってる?」
「? 何の話だ」
「あのさ。私達は超絶かっこいい名乗りをあげたんだよ。なのに、あんたはそんな超絶普通の名乗りで私達にものを頼むつもり? あり得なさすぎて消えろって思うんだけど」
「同感です。あなたもかっこいい名乗りを上げてください。そんなこともできないあなたはカスです」
「はあ。これだから若いもんは。かっこいい名乗りの一つも出来ぬ馬鹿のクズのアホンダラとはな」
「……死ねばいいのに」
なんで頼み事しようとしただけでここまで言われないといけないんだ。
「おいウル。これってどういうことだ?」
「彼女たちにはちょっと問題点があってね。自分たちが納得するような名乗り方をしないと、話を全く聞いてくれず、あんなふうに罵倒の連続になるのよ」
「どういう意味だ。そんなのどうでもいいことだろ」
「いやそれがね。彼女たちにとってはそのどうでもいいことが超重要らしいの。私やダレスも手を焼かされたわ」
なるほど。ダレスが嫌う理由がよくわかる。これは確かにめんどくさい。とりあえず、彼女たちを真似てやってみるか。
「えっと……白い羽は正義の証。カイツ・ケラウノス?」
めちゃくちゃ棒読みになってしまった。いきなりわけわからんことをしたのもあるが、これめちゃくちゃ恥ずかしい。
「……だっさ! ダサすぎるからあんた死ねよ。もう生きてる価値ないから死んでー。私達にもそのダッサイウイルス感染しそうだから死んでー」
なんでそこまで言われないといけないんだよ。俺は怒りで殴りそうになったが、かろうじてそれをこらえる。ここで暴力沙汰を起こすわけには行かない。それに、俺は彼女達に頼む立場だ。殴るなど論外だ。もう一度頑張ろうと思うと。
「跪け」
クロノスがそう言った瞬間、スーパーマン達はいきなり膝を付き、頭を下げた。
「ぐ!? クロノス。なんであなたが」
「虫けらがギャーギャーうるさいんですよ。日向様が頼み事してるのです。なら、黙ってそれに従ってください」
「ふざけるな。私達にもプライドがある。そのプライドのためにも」
「地に倒れろ」
クロノスがそう言うと、スーパーマン達がなにかに押しつぶされるかのように倒れた。これ以上はまずいな。
「クロノス。やめろ」
「カイツ様。しかし」
「俺たちは彼女にお願いする立場だ。暴力を振るうのは良くない。俺がこいつらを納得させれば済む話だ。今すぐ元に戻してくれ」
「ふふふ。カイツ様は本当にお優しいですね。私、ちょっとだけ濡れちゃいましたよ」
「わけわからんこと言ってないで、戻せ」
「はーい」
彼女は言うとおりに解除したようで、スーパーマン達が立ち上がる。
「行くぞ。純白に輝く白き羽は、世界を守る正義の証! エンジェルマン! カイツ・ケラウノス!」
俺は羞恥心も何もかも捨て、名乗りを上げた。これで納得してくれると嬉しいんだが。
「……65点だな。もう少しかっこよさが欲しかったが、まあ良いだろう。ちょっとダサいお前に力を貸してやる! なんでも申すが良い!」
とんでもなく偉そうなのが苛つくが、そこは我慢しよう。これでようやく作戦を立てる事が出来る。
俺は彼女達に今までの出来事や現状を説明した。
「ふむ。人体実験をする外道共を倒せば良いのだな! それは確かに、私達の出番だ!」
「腕がなります」
「んだ! 私の力を見せてやるべ!」
「……私は任務を遂行するだけ」
「そう言ってくれるとありがたい。んで、建物に向かうチーム分けだが」
「そのチーム分けでしたら、私とカイツ様が東の建物。後は適当に分ける感じで良いと思います」
「クロノス。けど、たった2人で攻めるのは」
「大丈夫ですよ。私はとっても強いですから、カイツ様も守りながら、建物を破壊することが出来ます」
嘘やはったりで言ってる感じじゃない。本気で俺と2人で出来ると思っている。それに、彼女は他の騎士団員とは次元が違うことは理解できる。さっきの攻撃もそうだが、それ以外にも色々と異質だからな。
「分かった。なら、俺とクロノスで東の建物。ダレスとスーパーマン達で西の建物を頼む」
「え!? こいつらと一緒に行くの? すっごく嫌なんだけど」
「我慢してくれ。これも作戦だ。ウルとアリアは、ここでルサルカを守っててくれ。彼女を連れて行くわけには行かないし、安全そうな所はここしかないからな」
「……分かったです。全力で守るです!」
アリアの奴。ほんの一瞬だけど、暗い顔だったな。俺と一緒にいれないのが不安なのかもしれない。けど、連れて行くわけにもいかないし、こうするしか方法は無い。言葉にこそ出してないが、クロノスは俺以外と行動するのを嫌がりそうだし、だからといって1人にするのも論外だ。
「私はそれで構わないけど、もう1つの建物は無視して良いのか? 私たちの攻撃がばれたら、残った建物の守備が固くなりそうだけど」
「3つ同時に攻めるのは流石に数が足りない。それに、俺たちの侵入はとっくにばれてるだろうし、攻撃してくることも既に予測してるだろう。無視してもそこまで問題は無い」
「なるほど」
「他に質問がある奴はいるか?」
そう聞いてみたが、質問のある奴は1人もいなかった。
「よし。なら作戦開始だ! 俺たちで建物を破壊し、アルフヘイムを救う!」
『了解!』
俺たちは建物を破壊するため、各々が行くべき場所へと向かった。
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