第43話 騎士団合流 作戦会議
アルフヘイムにある小さな丘。そこにある切り株の上に、フードを被った小さな人が座っていた。
「あらら。僕の
「おや。もう人形がやられたのか」
声がした方を振り返ると、そこにはピエロの仮面を着けた女性が立っていた。
「イシス。なんでここに来たのだ?」
「お前の様子を見に来た。捕獲は失敗したようだな。にしても、こうも速くお前の人形が壊されるとは思わなかった」
「変なツインテールの女に邪魔されたのだあ。あれさえなければ何とかなったのだ」
「変なツインテール?」
「のだあ。前に話した、僕の特注実験体よりもはるかに強そうな奴なのだ」
「……ほお。それは面白い」
「面白くないのだ。せっかくカイツをものに出来ると思ったのに」
「まあ悔やんでも仕方ない。それより、メデューサがお前のことを呼んでいた。お前は研究所に戻れ。私は、カイツにちょっかいだしてから帰ることにする」
「ぶー。メデューサの命令もめんどいけど、従わないとうるさそうだしなあ。行ってくるのだ」
その者はそう言って研究所の方へと向かっていった。
「さて。これから私はどうするべきか。カイツの元に行くのも悪くないが――!」
彼女は何かに気付いたようで、顔を横に動かす。
「新しい気配が2つ。カイツの仲間か。だとすると、カイツの元に行くのは良くないな。色々と面倒になりそうだ。カイツと遊ぶのは、また今度にするとしよう」
彼女はそう言った後、その場から姿を消した。
side カイツ
俺は部屋の中で、今まで起きた事やこの世界の現状について話していた。
「なるほど。ずいぶんと面倒なことになってるんですね。そして、そこのちび妖精は、実験体であり、実験の失敗で生まれたのが、
「そういうことだ」
「なるほどなるほど。やたら白くて変なのが襲ってくると思ったら、そういうことだったんですね。なら、私たちがやるべきことは」
「一刻も早く、
「ですね。なら、とっととそこに行くとしましょう」
「だな。ルサルカ。その建物の場所がどこにあるか分かるか?」
「奴らの使ってる建物は、でっかい塔のような建物が1つ」
「あのめちゃくちゃ浮いた建物か」
「そう。そして、ここから西に数キロ行った先の緑色の湖にある建物。最後にここから東に数キロ行った先にある大きな穴の中に1つ建物がある」
合計で3つの建物か。2人で壊すには戦力が足りなすぎる。
「もう少し戦力が欲しいな。じゃないととても」
「あ、カイツ様。戦力ならもう少しありますよ。今回、私以外に2人の団員が同行してましたので」
「本当か!? だったらなんではぐれてるんだ」
「蛇人間と戦ってましたから。その間に私がこっちに行ってたらはぐれちゃいました。あ、彼女たちの居場所は分かるので安心してください」
突っ込みどころが山のようにある気がするが、今はそれについて言ってる暇はないな。
「分かった。じゃあ、そいつらのいるところに連れて行ってくれ」
「了解しました!」
「それで、彼女たちが来たのですね」
「いやー。まさかアリアやライバルも来ているとは思わなかったよ。びっくりしちゃった」
「こっちからしたら、お前たちが来てることに驚きだけどな」
クロノスに連れられて出会ったのは、ダレスとウルの2人だった。2人と合流した後、作戦会議のため、アリアたちのいる部屋に戻った。にしても。
「ウルはどうしたんだ? さっきから魂抜けたみたいになってるけど」
白目向いてるし、なんだか怖い。
「あー。蛇に結婚申し込んで失恋してね。ライバル、なんとかして起こしてくれないかい?」
「え。蛇に結婚申し込んだってどういうこと? あとどうやって起こせば良いんだ」
「簡単だ。結婚してやるって言えば簡単に目を覚ますだろう」
そんな簡単に目を覚ますのか。そもそもなんであんなことになってるか自体よくわからないが。
「ウル。俺が結婚してやる」
「はい! します! 貴方と結婚しまーーーす!」
突然覚醒し、こっちに襲いかかってきたので、頭を手で受け止め、距離を離す。
「結婚! 結婚! 結婚! 結婚! 結婚!」
「おいウル。一回落ち着け」
「結婚! 結婚! 結婚! 結婚!」
「落ち着けって言ってんだろ!」
俺は彼女の頭にチョップした。彼女はふにゃっと変な声を出したあと、頭を抑えながら周りを見る。
「いてて。急になに……ってカイツじゃない。それにアリアもいるし。なんでこんなところにいるの? ていうか、アリアの横にいる人は誰かしら? 見たところ、妖精族みたいだけど」
「……とりあえず、1から説明する」
俺はアルフヘイムの現状と、俺とアリアが来た理由について説明した。といっても、ミカエルのことを話すわけにはいかないので、その部分は適当にごまかしながら話した。
「なるほど。妖精族を実験に使ってるふざけた建物が3つあって、そのすべてを壊せば良いのね。けどカイツ」
「分かってる。正直戦力に不安がある。もう少し戦力が多いと助かるんだが」
「心配いりませんよ。私とカイツ様がいれば、どんな敵も簡単に殺せます」
「そういうわけには行かないだろ。ここを護衛する人もいるし……って、どうした?」
ウルとダレスの方を見ると、クロノスを驚くような目で見ていた。
「え。クロノス。カイツのこと、カイツ様と言ったの?」
「だったらなんですか? エロ女には関係のないことですよ」
「エロ女って。相変わらず口悪いわね。てか、カイツはクロノスと何があったのよ! 何があったら、あいつに様付けで呼ばれるような事態になるの!」
「私も気になるね。ライバルはどうやって、クロノスとあんなに仲良くなったのさ」
「知らねえよ! いつの間にかあっちから距離詰めてきたんだ」
「うっそ!? あのクロノスが!? びっくり仰天ね。人類見下し下劣女と言われたあいつが距離を詰めてくるなんて」
とんでもない呼び方されてたんだな。めちゃくちゃ嫌われてるんだなということがよくわかる。まあ、俺も初対面では良い印象はなかったし、口が悪いのはいつものことらしいから、嫌う人がいてもおかしくないか。てか。
「そんなことより作戦だ。どうやってこの戦力で建物を攻める?」
「おっとそうね。とりあえずクロノスの件は後で追求するとして。私に良い方法があるわ」
「良い方法?」
「おいウル。まさかとは思うけど、あれを呼ばないよね。私あいつら好きじゃないんだけど」
「なんでよ。あいつら強いから、ダレスは好きだと思ってたんだけど」
「たしかに強いけど、だるいしめんどいし楽しくないしで大嫌いだよ。それに波長も合わないし」
ダレスがここまで嫌がるって珍しいな。一体どんな奴らなんだ。
「ウル。何をするつもりなんだ?」
「戦力が足りなくて困ってる。なーんて時は、強くてめんどくさいスーパーマン達に助けを呼ぶのよ。正直、あんまり呼びたくないけどね」
多分だけど、ウルもスーパーマン達のこと嫌いだな。めんどくさいとか言ってるし。しかも、クロノスも露骨に嫌そうな顔をしてる。ここまで嫌われるって、どんな変人集団なのやら。
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