私が恋したのは

織青 叶

私が恋したのは

私が人生において初めて恋したのは名前も知らないあの人だった。

こんなこというとあれかもだけど、私は昔から異性によくモテていた。

色んな人に告白もされてしラブレターもいっぱいもらった。

でも、男性が得意じゃなかったのと恋という気持ちが分からなかった私はその告白を振り続けていた。

そんな生活が続いたある日、

「お前ちょっと顔がいいからってなめてんじゃねーよ!」

いつも通り ごめんなさい と振った男から手を掴まれてしまった。

すごく怖くて怖くて仕方なかった。

別に好きでもない人と付き合うことなんて出来ない。

いっぱい告白してくる人はいるけどただ自分のステータスのために言い寄ってくる人は正直いって気持ち悪い。

そんなこと思ってるからなんだ。

だから、私に罰が来たんだ。

出来るだけ痛くありませんように。

そんな風に構えていたそのときだった。

「何してんだよ。」

相手の男の手を掴む手とそれに対する声が聞こえる。

「あぁんなんだ?」

「離せ!」

男が威圧的な態度を示す中その人は怒りの顔で、

「いっ!」

その手を強く掴み返す。

痛みに耐えかねたのか相手の男は手を離してくれた。

「なんすんだよ!」

「女の子に手を上げるなんてお前何してんだ?」

睨みには睨み返しで応戦すると

「ちっ!」

そういってどこかに行った

一人の男子に救われた。

恐怖から救いだしてくれた人…。

その時の彼は私にとって王子様のように見えてしまった。

「大丈夫?」

彼が話しかけてきた。

「大丈夫ですありがとうございます。」

「それならよかった。」

太陽のような明るい笑顔

「あっ!もう行かないと。」

そういうと彼はあわててその場を大急ぎに去ってしまった。

いつも下心が見える男の人ばかりで正直電話番号とかLINEとか聞かれることを危惧していたのに彼は聞かなかった。

他の人と彼は違かった。

多分その時私は彼に恋してしまった。

周りと違う彼に私は心引かれてしまった。

「お礼しないと。」

いつもなら言葉だけだったのに彼にだけは手作りのお菓子を作った。

「喜んでくれるかな?」

考えるだけで暖かくなる心があることに私は嬉しくなった。

でも、そんな恋はすぐに終わった。

「紹介する 私の彼氏の日向太陽ひなた たいよう君です!」

いつも仲の良い友達の篠野向日葵ささの ひまわりの彼氏として紹介されたのが私が恋していたあの人だった。

「あれ?君は。」

「太陽君 知り合い?」

「あぁー、昨日絡まれた女の子助けたって話したろ それが彼女なんだ。」

あの時慌てて去っていったのは彼女と待ち合わせしてたから。

下心がなかったのも彼女がいたからだったんだ。

「えぇー!ゆっき大丈夫だった?」

「えぇ、彼が助けてくれたから大丈夫だったわ。」

心が揺れ動いてる。感じたことのない感情が私のことを襲っていた。

「あのときのお礼に クッキーですが。」

私は最低限やろうとしたことはやろうと作ったクッキーを彼に差し出した。

「ありがとう!僕クッキー大好きなんだ。」

また名前と同じ太陽が差すような笑顔を私に向けてくれる。

「いいなぁー ゆっきのお菓子美味しいんだよ!」

「そうなんだ。」

彼は笑顔で彼女と話す。

あぁー。と私は思ってしまった。

同じような笑顔でも私と彼女に向ける笑顔は違う。

「では私はこれで。」

「うん! ゆっき今度は三人で遊ぼう。」

「えぇ。」

私は足早に去っていき誰もいないトイレに向かう。

「……っ!」

危なかった。もう少し一緒にいたら泣いてる顔を見せてしまうところだった。

初めての恋であり初めての失恋だった。

あぁーきっと今まで私が振ってきた相手はこんな気持ちになっていたんだと思った。

「あの娘には叶わないなぁー。」

彼女は良い子だからとっても二人はお似合いだから。

多分十分はその場で泣いたと思う。

これからは私達は友達でいよう。彼を好きだったことは忘れよう。そう思いながら過ごしていた。

でも一緒に遊んでいくうちに彼の魅力が見えてきてしまう。

あの日だってそうだ。

三人でテストに向けて勉強会を開いた。

「ここ教えてもらってもいい?」

「分かったわ。」

彼が指差す所を私が教える。

「ここはねこうして。」

「どれ?」

わざとではない。単純に見辛かったからだろう。私のすぐそばに近づいてくる。

私の心臓はドキドキしてしまう。

静まって欲しい。あの日泣いた私は忘れることに決めたはずなのに…。

「太陽君 近すぎです!」

「わぁ!ご ごめんね。」

向日葵に言われて彼はすぐに離れていった。

何故だかとても悲しい気持ちになった。

「えぇ 大丈夫よ。ここはねこうして。」

何事もなかったかのように進めていく。

しかし、ドキドキが簡単に収まることもなくこの悲しみが埋まることもない。

そんなことがたくさん経過して一年がたった。

その間にも彼の魅力が私の中で忘れようとしている好きという気持ちを呼び起こしてくる。

でも、同時に彼が彼女のことが一番に好きだと言うことを分からされることにも…。

でも諦められない!

今日は君と出会い助けてもらったあの日、私は彼を呼び出した。

放課後の屋上

夕日が辺りを照らす。

みんなは帰ったあとの静かな場所。

ガチャリと扉が開く音がする。

「話ってなに?」

「来てくれてありがとう。」

私が彼を呼んだのは思いを伝えるためである。

今も二人は仲が良くてお似合いなのは分かっていた。

でも、一年過ごしていてこの気持ちが溢れそうになっていた。

だからしっかりと伝えて振ってもらおう。

彼に振られることで私は諦めきれる。

そう考えたのである。

「今日は言いたいことがあって呼んだの。」

「……なに?」

次に来る私の言葉を彼は待っていた。

「あのね 私ね…。」

す の言葉が出なかった。

好き の二文字が出なかった。

考えてしまったんだ。

私が告白して振られることは分かっているはずなのに拒絶されるのが怖い。

私は彼が大好きだから拒絶されるのが怖い。

私は彼女が好きだから告白して疎遠になってしまうのが怖い。

「向日葵が友達として ううん親友として大好きなの。だから、絶対に幸せにして!」

あぁーバカな私だ。

言えなかった。

臆病になって言えなかった。

「うん。絶対に笑顔で幸せにしてみせる。」

彼の真剣な顔をみてまた私は…。

「その言葉 忘れないから。今日は呼び出しに応じてくれてありがとう。向日葵が待ってるんでしょ。行ってきなさい。」

「うん。」

彼が屋上から去っていく。

「私って本当にダメだなぁー。」

言えないことで後悔するなんて分かりきってたはずなのに結局言えなかった。

「まぁ 私と彼は結ばれることはないんだ。」

私と彼は正反対 彼は太陽 私は雨だから。

私の名前は雨乃雪あめのゆき雨と太陽が交わらず雲に遮れるように私と彼は結ばれない。

いや、ただ言い訳が欲しいだけなんだ。

無理だった言い訳を。臆病なだけの私のために。

「……っ!」

悔しいなぁー なんでなんだろうなぁー。

こんなこといつもの私は言わないけど言ってしまおう。

なんで好きでもない男ばかりに好かれて好きになった男の子には振り向いてもらうことすら叶わないんだろう。

向日葵が羨ましい。彼の好きを一番に受けられて悔しい。

でも、どうしてだろう。恨めない 怨めない うらめない。

恨めたらどんなに楽だろう。

地団駄を踏みたくなるくらい悔しいのに。

涙が溢れるのに…。

それはきっと私は彼と同じくらい彼女のことが好きだからだ。

言えなかった言葉からでた本当の言葉。

「あぁーもう。私ってバカ!」

私は屋上で叫ぶ。

「私のばかやろうーー!」

叫んだらすっきりした気がする。

今頃二人は仲良く帰ってるはずだ。

もしかしたらどこかに遊びに言ってるかも。

「さぁて 私も帰ろうっと。」

これからは仲良しな友達として彼らといよう。

これは私の言えなかった初恋の話。



嘘のような真の話。












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私が恋したのは 織青 叶 @AMANOSUI

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