喫茶・馬頭琴
その日、馬頭琴ではいつもと同じようなゆったりとした時間が過ぎていました。
時間は陽の和らぐ午後。
店内ではスプーン頭のウエイトレスと、フォーク頭のウエイターが給仕をし、その隙間を古い古いレコードの音楽が流れていきます。
いつもと違うことがあったとしたら、普段は夜に顔を出すガスランプ頭の紳士が、カウンターにいたことです。
彼は
それについているパイプの先を、首の根本についている差込口に繋げると、彼の頭がぼんやりと光るのでした。
カウンターの中ではシェイカー頭の店主が、丁寧に硝子のコップを拭いていました。
ごく少人数ですが、一般頭──彼らは普通の頭がついている人たちのことをこう呼びます──のお客様が来るからです。
異型頭と一般頭は似てるようでいて、違う生き物です。
例えばガスランプ頭の紳士にとって天然ガスが食事なように、一般頭の人たちにも専用の食事が必要です。
店主はそれをよくわかっていました。
キラキラと輝く硝子のコップは、そうした人たちのために用意しているものです。
カランカラララン。
ドアベルがいくつかの金属音を響かせて、来客を告げました。|
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