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 それから少しして、かちゃ、という(金属の)音が確かに聞こえた。

 その音を聞いて長閑は、今の音は『どこかの鍵がしまった』音だと思った。

 そのどこか、とはどこだろう?

 決まっている。

 階段を隠したふたに鍵をかけた音だと思った。

 長閑はその意識をずっと上に、上に向けていた。

 するとそれから少しして、その上のほうから、ぎい、ぎいというとても小さな音が聞こえてきた。

 その音を聞いて長閑は、自分の心臓が激しく高鳴っているのを感じた。

 ……誰かがこの階段を下りてくる。

 私と同じように。

 この地下に、地下に向かって……。

 長閑は全身に汗をかいている。(それは長い階段を下りた疲れだけではなかった)

 長閑はさっきよりもさらに慎重に、ゆっくりと足を動かして、なるべく(自分は)階段を下りる音を立てないようにしながら、その上から下りてくる足音から逃げるようにて、さっきまでと同じように地下に続いている階段を下に向かって、下りて行った。

 ぎい、ぎい、という足音は続いている。

 その足音を聞きながら、長閑は、……いったい誰がこの階段を今、下りているのだろう? とそんなことを考えた。

 いったい誰が、なんのために?

 ……偶然、あの奇妙な教団の人たちの誰かがこの小さな家に帰ってきて、(地下の階段にふたをすることを忘れていたことを自分の目で見て思い出して、ふたをして鍵をきちんと閉めてから)地下になにかのようがあって、ただ階段を下りているだけだろうか?

 それともほかになにか目的があって階段を下りているのだろうか?

 たとえば、私がこの小さな家に忍び込んだことは最初からあの奇妙な教団の人たちに気づかれていて、今、地下の階段の中に足を踏み入れた(逃げ場所のなくなった)私を捕まえて誘拐するために、今、ゆっくりとこの地下の階段を下りているのだろうか?

 どっちなのだろう?

(でも、どっちにしても、その誰かに見つかって仕舞えば、私があの奇妙な教団の人たちに誘拐されてしまう、という結果は変わらないだろう)

 長閑は十回目の階段の曲がり角を曲がった。

 すると、世界に変化が訪れた。

 それは本当に久しぶりに見る『光』だった。

 地下に光がある。

 それは今の長閑には本当に『奇跡の光』のように思えた。

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