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 考えてから、長閑はまず自分の左側にあるドアに入ることにした。(まずは近い場所から探して行くことにしたのだ)

 そのドアを開けようとするときに、長閑は一瞬、とても嫌な予感を感じた。

 長閑はとても嫌な想像をした。

 それは、その部屋の中に『誰かの死体』でも転がっているのではないか、という突拍子もない想像だった。(そんな想像をし始めると、なんだかこの場所が急に『本当なら絶対に近づいてはいけない、本当の本当にとても怖い場所』のように思えてきてすごく怖くなった)

 その誰かとは、……ううん。そんなこと考えたくもない。

 小さく頭を振って、長閑は自分の嫌な想像をかき消した。

 ……でも、その嫌な予感は長閑の中から消えて無くなってしまうことはなかった。

(ドアノブに触れようとする長閑の手はずっと小さく震えていた)

 どうしよう?

 ……怖い。怖いよ、素直くん。

 長閑は思う。

 そのまま少しの間、廊下のところに座り込んで、一人で震えていた長閑はやがて諦めて、そのドアを開けることをやめてしまった。

 それから歩き始めた長閑はさっきと同じように自分の正面に見えていたドアを開けることもしないままで、そのまま小さな家の一階の通路をぐるりと一周して玄関の前まで戻ってきた。(途中、反対側の通路にもドアがあったけど、そのドアも開けないまま通り過ぎてしまった)

 ドアの前で聞き耳を立てて、中から誰かの話し声がしないか、物音がしないかだけを長閑は(勇気を振り絞って)確かめたのだけど、どこからも、なんの音も聞こえてこなかった。

 玄関のところに戻ってきた長閑はそこからもう一度、正面にある階段を見つめた。

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