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……神様。
……神様、どうか私を、そして素直くんをお守りください。
私たちを救ってください。
ぎゅっと長閑はそのいつも身に付けている『翼のある猫』のアクセサリーをその両手の中に握り締めながら、玄関の前の廊下のところにきちんと正座をして座り込んで、(目を閉じて)そんなお祈りを神様に捧げた。
それだけで、長閑の心はとても落ち着くことができた。(怖い気持ちも、だいぶ治った)
それから長閑は、(そっと目を開けて)自分の目の前にある階段をもう一度、見つめた。
そこには『階段が二つ』あった。
一つは上に上がるための階段。(どこにでもある普通の階段だった)
もう一つは、……下に続いている階段だった。
下に向かって伸びている、その先が真っ暗な闇に包まれている、なんだかとても不気味な雰囲気のする階段。(だから、長閑はその階段の存在を一度、無視していた)
そんな地下に向かって続いている階段がこの小さな家にはあった。
地下室。
それは絶対にない、とは言わないけれど、普通ならあまりどこの家にもある、とはいえない存在だった。(地下室がある家は珍しいと思った)
どこから見ても普通のこの家に、この地下に続く階段は、なんだかとても場違いな(あとから工事をして付け加えたような)ものとして、長閑の目には写っていた。
……やっぱり、この下に素直くんはいるのかな?
そんなことを二つの階段を交互に見ながら長閑は思った。
これは長閑の勝手な推理だったけど、上に行ってもやっぱり普通の(誰もいない、物音もしない)二階があるだけで、そこに素直くんはいないように思えた。
素直くんは、この家の地下にいる。
そこに誘拐され、監禁されているのだ、と長閑は思った。
……神様。
長閑は心の中でいう。
それから長閑は立ち上がると、震える足を必死に動かして、その深い闇に続いている地下に続く階段をたった一人で下りて行った。(やがてその闇の中に溶けこむようにして、長閑の姿は見えなくなった)
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